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縦糸、の発音
おれはからだに麻薬みたいな誰かの心を充填してこの夜から朝へと移り変わる時間をしのごうとしている。さらば愉快なことどもよ!餞別におれの流れ出さなかった涙を形而上の約束に則っておまえにやろう。古い家に乗り込んでその年月の不可思議を肺にしたためたい、そびえ立つ群島の間を航行する無人の艀、潮の流れを脳漿に替えて。葉書きに書いてあった中米かどこかの料理には、赤ん坊の三日三晩泣き徹したあとにはじめて出す、えっえっという笑い声が隠し味に入ってるらしい。ほんとかな。嘘だろうねとおまえは断じる、テレビの天気予報の奥の壁紙の色と匂いを見つめながら。はいどうぞと言われたからって、信じる必要はないのだということをまるで春熟れの猫のようにおかしくなって、しかも無言のうちに主張しているかのようだった。シーツの上で跳ねる無調の階、空間のふところへ無限に落っこちながら空間そのものから遠のいていくそんな音をしてる。秘密を作られるのは我慢できないくせして作る秘密は蜜柑のように指の腹でめでた、おれこそが早いとこ移り変わってしまうべき放慢。情けない話だけど、と切り出したおまえはそれから一切口を開かなかった。あのときもう雲間から覗く梯子になっていたのだな。電車の車両を数える遊びをよくしたね。小さな雑草だらけの踏切は心臓に傷をつけて根刮ぎの過去を持ち去ってしまった。嚥下の練習。永性はとっちらかった部屋のなかに密かに宿る、引出にしまわれたままの不随意筋、ビデオテープはあと陸秒で爆発するとさ。返事がない。だから愁嘆場には居合わせたくなかったんだ、体の皮膚が爪先から手指の先から裏返ってくような気にさせられるから。興味が出たならもう行けよ、あと一ケースもあれば充分か?遷移することの幸せを知って欲しい、クリスマスと全宇宙、不埒な目配せで食卓を彫刻しあってくれ。ひとつだけ質問ができるときには、なぜ、だけは止めておくんだね。答えがあるということがないということを担保してること、かばの背中で忘れてしまったのか?懸命に体を伸ばした、でも届かない、意味の隙に落ち込んで安らかだと、庭先で傾ぐ河花に似てる総称
縦糸、の発音 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1886.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2019-10-16
コメント日時 2019-10-21
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
悪い作品ではないと思いましたが、良いとも言えない、何か、惜しいというような感じがしました。豊饒な想像力を持っていて、かつそれが産出するところのものを言語化する才能も持っていると感じましたが、たぶん他の誰かがすでに書けているもののように感じたのです。でも、この作品のようなものを書けるということは、成長というか飛躍というか、そういうものの芽があるということでもあり、次の作品を読みたいと思いました。
0お読みくださり、ありがとうございました。悪くもなく、良くもない。振り返るにつれ、おっしゃる通りだと思わされています。個人的な切実さ、みたいなものがうまく書き込めなかったように思います。それが「他の誰かがすでに書けているもの」という南雲さんが言われる印象に繋がったのかもしれません。 次の作品をより良く書きたいと思えます。ありがとうございました。
0改行しない作品で人に読んでもらうというのは難しいですよね。その意味で、挑戦的な作品だと思いました。イメージの羅列、という観点からポストモダン風に意味を解体して再構築する、という方法で読んでみました。が、私には何かしらの意味を見出すことは出来ませんでした。著者がコメ欄で「切実さ」という言葉を出していますが、かろうじてその芳香が匂ってくる程度です。 あふれ出るイメージ、「切実さ」を作品に落とし込めた時に、詩が情動を煽ってくるんだろうなと思いました。抽象的で申し訳ありませんが、簡単な感想でした。
0厚みのある散文調の作品できちんと読者を引き留めておくために何より必要なのは、まずは視覚的な可読性だと思う。 例えば >おれはからだに麻薬みたいな誰かの心を充填してこの夜から朝へと移り変わる時間をしのごうとしている。 の最初の一文だけでもかなり平仮名が用いられているが、これを >俺は体に麻薬みたいな誰かの心を充填してこの夜から朝へと移り変わる時間を凌ごうとしている。 とするだけでも随分と読みやすくなるものだ。 全体としてみれば勿論、あえて平仮名を用いている箇所よりも普通に漢字表記になっている箇所のほうが多いのであるが、片仮名、平仮名、漢字と使い分ける際に ・視覚的な読みやすさ(「肺にしたためたい」など、これだけの密度の中では特に読みにくい) ・あえて平仮名を使う場合の目的や必然性 ・あえて難しい漢字を使う場合の目的や必然性 ・あえて平仮名や漢字を用いることによって視覚的な読みやすさが損なわれるような場合に読点、句読点などを用いて可読性を上げる工夫(場合によってはカッコなどを用いても良いのかもしれない) などを意識するだけで大分読み手の注意を引き留めることができると思う。 もう一つは、ひとつひとつの文の関連性が薄いことが気になる。散文調になっている場合、読者はある文とその次の文の何かしらの「自然な」繋がり(意味での繋がりであったり、言葉のリズムや音韻の繋がりであったりするのだけれども、散文調においては特に意味の繋がり)を自然と求めてしまうもので、それが薄いと非常に読みにくく感じてしまう。 勿論、次々と無関係なイメージを繋いでいくという手法は散文形式であってもうまく行えばかなりの混沌とした迫力を作り出すことができるが、その場合でも隣り合った文の流れはかなり細かく意識すべきで、「ここはわりと滑らかに意味を繋ぐ」「ここは全体のバランスからみて一気に跳躍させても大丈夫」などと細部の丁寧な作り込みが混沌としたイメージの生成に不可欠であったりするのだ。 その意味でこの作品を読んでみると、そういった配慮に少し乏しい気がする。つまりなかなか読むのがしんどいので、闇鍋的切迫感が読者には伝わらない。まずは、読者を引き込んで少なくとも字面だけは一気に読ませてしまうだけの仕掛けがないといけなくて、その結果、内容が闇鍋であればカオスを演出できるし、情景描写や心情描写であれば、その結果読者の心に情景や心情を映し出すことができるのではないかと考えている。
0左部右人さん お読みくださり、ありがとうございます。 改行をしていないことについて、挑戦的との評をいただけたことが唯一と言っていい救いかもしれません。 いつの間にか、悪い意味で独りよがりな書き方に終始してしまっていたようです。 情動を煽れるものを産み出すために、イメージや切実さをどう落とし込むかということ、またどうすれば効果的に落とし込んだことになるのかということ。今私が考えなくてはならない部分だと思います。 私にとっては充分に有益な感想でした。ありがとうございました。
0survofさん まずは、とても丁寧なご指摘を下さりありがとうございます。今の作品に足りない部分はすべてアドバイスを頂いたのではないかと思うほど参考になります。 ご指摘を頂いて、視覚的な読みやすさが確かに欠けているのに気付けました。このような散文の形態で、この密度で提示するとき、ひらがなによる可読性の低下がより許容されにくくなることに気付けました。 普段は散文調はあまり用いないので、その意識のまま書いてしまったこと、またひらがなに開いてはいるものの効果的でないものが多くあること、が今回の失敗の一側面でした。 文の関連性の薄さ、に関しても本当にその通りだと思います。書いて下さっている一つ一つのことが納得できますし、自分がそれをこの作品でできていないことが理解できます。 >まずは、読者を引き込んで少なくとも字面だけは一気に読ませてしまうだけの仕掛け その結果として、内容からの作用、というのは目指す形としてわかりやすく頭に入ってきました。 今回の作品では、読者に読ませようとする意識が圧倒的に足りていなかったと痛感しました。 なんとか次、すべてにおいてクオリティを上げたものを書きたいと思います。ありがとうございました。
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