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生活の刃
いのちを削る音 その響き そのうつくしき音 それだけを聴くための いのち ちらつかせる あやつは すぐに ちらつかせる 深夜に上階から にぶく重い物音の連続 首を吊るものの 両足がかなでる 緊迫のユニゾン連打 そう思えたとき 雑木林のただなかにいた 加齢は 電話を 生活の刃に変えた いのちを削る風切り音 そればかりが到来し ほかのなにも聞こえない 旧友が死んだ 首を吊ったんだ 弟から 軋むような電話 熟達した高校教師 野球部監督 教え子と結ばれ 十も離れた妻 がんぜない三人の男児に 最期の詩を 書き置き残して 雑木林に立ち尽くしていた つい せんだっての盆休みも これまでの旧交の時間にも うたげの明るい酔声には いのちが削れる音など ついぞ聞こえてこなかった 弟はいぶかしむ 独り身をかこつ 我が耳に 円満の家族の内にハウリングする いのちが削れる音は 聞き取れなかった 聞き取るべきだった 弟は自責する 弟は自問した 深く心は沈潜した 深い意味はないとしながら 己の契約する生命保険会社と 契約番号十一ケタを 電話で静かにつぶやいた ちらつかせる 死は すぐに ちらつかせる
生活の刃 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1263.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 28
作成日時 2019-10-03
コメント日時 2019-10-03
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 11 | 8 |
前衛性 | 5 | 5 |
可読性 | 6 | 6 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 5 | 5 |
総合ポイント | 28 | 25 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2.8 | 2.5 |
前衛性 | 1.3 | 1 |
可読性 | 1.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.3 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1.3 | 0 |
総合 | 7 | 4.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文