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夜景にて
夜の大気が肺の中で暴れている 大昔、心臓が始まりを告げたことを思い出し、そうやって見上げた宇宙 星を飛行機と疑った私の心は 上滑りし、やがて夜に衝突する 夜の大気が、やはり肺の中で暴れて しかし力尽き、息絶えようとする、いまこのとき 人を一人殺してしまったと 泣きたくなった為に、私はまた一人と、人を殺し 何故私は、溶けることができない そう嘆きたくなった為に、心臓はまた一人と 人を殺して、夜は力尽き過ぎ去ってゆく 血の匂いを呼び覚ませば生命が左胸にあるような気がしていた 本当に私が求めていた物は、現実には存在しない死だと知ったときに 赤ん坊は産まれ落ちる 人を殺すたび私は快感を覚え 血を飲み込み我が物とし、我が物とし、 そして心臓がそれを押し流し、 それを暗闇で自我と錯視する両眼 そんな そんな夜に 夜の大気が肺で暴れているのだ 死の香りが体内で反逆を起こし 生きろと 生きろと叫ぶ 死は私を両腕で抱き上げ、そうして突き落とす 何故ならば私は死の暖かさを! 死の暖かさを右腕に欲して、欲望は体を殺す 筋肉がはち切れん勢いで膨み おまえを握り潰し私はまた人を殺した おまえの心臓は破裂し私が血だけを飲み込んだ そのたび私はおまえに 生きろと 叫ばれ 失っていくのだ、寂しさを、寂しさを、寂しさを けれども夜の大気よ! 私を殺せ 全てを凍り付かせて 春など永遠に来なければ、過ぎ去ることもなく 私を殺せ 全てを握り潰し 青い空は二度と訪れず、そして沈む事もなく ああ 孤独な夜の大気よ! 全てを持ち、全てを知ることで 全てを捨て、全てを忘れて 幸せにありふれ、孤独など感じた事もなく、 ただ、今おまえを殺そうとする 私を殺せ
夜景にて ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1901.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 39
作成日時 2019-10-02
コメント日時 2019-10-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 17 | 15 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 6 | 5 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 11 | 10 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 2 | 1 |
総合ポイント | 39 | 34 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3.4 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1.2 | 0 |
エンタメ | 0.4 | 0 |
技巧 | 2.2 | 1 |
音韻 | 0.2 | 0 |
構成 | 0.4 | 0 |
総合 | 7.8 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これはなんやろな。例え話で悪いんだけど、チェスで初心者がまず言われることは、意味のない手を一手も指すなってことなんだよね。つまり戦争に勝つために戦略と戦術を持てってことなんだよね。言葉も似たとこあると思うよ。というか詩か。ポエムは相手の心を動かすための戦争だと思う。
0意味のない一手 今見返すと、確かに推敲が足りなかったかもしれない。というか、もっと大胆に削ってよかったなと気づきました。アドバイスありがとうございます。 相手の心を動かす戦争というのは分からなくは無いのだけれど、自分の言葉でありながら相手の心も動かすのが難しいんだよなあ、技術ない系の日々
0この作品は、まるで楽譜のようです。 言葉によって見事に、リズムとメロディーが書き記されていると感じました。 作者の思考内容は分からなかったのですが、このように最後まで統一感のある言語の連続を提示することができている以上、作者の内部には、或るまとまりのある動機があるのでしょう。 私の方でも、もうちょっと頑張って、読み込もうと思います。今言えるのはこれくらいです。すみません。
0読んで意味を一節一節理解しようと努力しているところに「!」マーク。おお、とちょっと戸惑っているところに「今お前を殺そうとする」「私を殺せ」の締め。おおお、そうかと力技を見せられた印象で何かがあるのだが、あったのかどうか分からない、気づけぬまま読み終わってしまったという。作品を通して描きたい一貫したモチーフとテーマがあるのは伝わりましたが、なかなかそれが読み手に届きにくい詩作品だと思いました。私も読み込みたいと思います。
0夜空の星を飛行機と疑ったとき夜と一体であるという自分と、疑う事で夜とすれ違ってしまった自分に別たれた。眠れない夜の独白。やがて眠りにつく事でそんな自分を殺して次の夜にまた、夜のなかに生まれるもうひとつの自分を殺す。繰り返し繰り返し。そのとき自分の存在を自覚することで、生きている、事を左胸に生命を実感する。 しかし、溶けられない、という詩句や自我と錯視する、という詩句を読むと実はその自分の行為は自然なものでなく、全てを包み込むような夜に身を委ねられない自分への怒りや悲しみ葛藤を感じました。 大仰で饒舌な語りでありながら詩句は統一感を感じますし、しっかり練られた作品だと思います。
0うおお、読んでくださってありがとうございます。「殺す」など物凄い仰々しくなり、中二病が出てしまったかなあとか思っていたんですけど、一貫したテーマが少なくとも「ある」ということが伝わったのはすごく嬉しい。 何をテーマとしているのか分かりづらい。自分では全くそんなこと思っていなかったので(そりゃそうか)、ありがとうございます。 中身が万人に伝わりやすい詩を描くつもりはあまりないのですが、それでも確かに「こんな感じだろうか」と読者に想像させる詩でなければ意味がないとも思っているので、ここは私の課題ですね。ありがとうございます。
0リフレインは容易にできる技法であるゆえに、ただそれを用いただけで作品として成立していると誤解しやすい諸刃の剣です。しかしこの詩(や、前作の秋の詩)においてはリフレインが非常に効果を発揮している。とても上手いなと。
0夜のうちに不確かになってしまったわたし、そしてこの夜を越えた後にあるわたしという不確かさ、というのを「左胸にはないけれどあると信じられている心臓」という言葉で表現している。わたし、という確かであると思いたいものが実は違っていて、それをそうと認めなければならない慟哭が力強い言葉で表現されている作品だと思います。
0ぐおお、確かに私はいつも詩を描くときにリフレインに感けがちになるなあとは思っていて、でもちゃんと効果を発揮してくれていたようで良かったです。 夜寝て、起きた後の私が、寝る前の私と同一であると誰が証明できるのでしょう。そういう意味も多少混じった詩なので、読み取ってもらえて嬉しい……! ありがとうございます!
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