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幸せという名の家
旅人が アベリアの咲く丘を通りすぎた 夏色の空にそのまま続いているような一本道 その道の傍らに 石造りの古民家があった 庭もアベリアでいっぱいだ 「こんにちは」 戸を叩いてみるが返事はない また道に戻ろうとした旅人は 目を惹かれて立ち止まる 菩提樹だった 青々と茂った葉 咲き乱れる花 それらが夏の陽射しを反射して輝いていた 美しかった 「よく育ったろ」 横で老人の声がして驚いて振り向く いつのまにか側におじいさんが立っていた 「えぇ。ほんとに見事ですね」というと 老人は優しく微笑んだ 家に招き入れられ お茶を出してくれた 優しい香りのハーブティーだった 静かにお茶の時間が過ぎていった 旅人はこの旅でであった たくさんの発見を話していった 心地よい夏風にふかれて ふと聞いてみたくなった 「奥さんは?」 老人は少し目を細めて 「離れ離れになってしまったんだ」 と呟いた 見せてくれた写真には 小柄な体で暖かく微笑む奥さんがいた 「でも、もうじき会える。 だから、アベリアを植えたんだ。 大好きだったから。」 「そうですか。きっと奥さんも喜んでくれるでしょうね。こんなに綺麗に咲いているから。」 老人は小さくうなずくだけだった 「長居をしてしまったようです。道の先に行かなくては。」 「あぁ、気をつけてな」 「あ!最後に一つだけ。」 「なんだい?」 「あなたは幸せでしたか。」 少し驚いた顔をしたあと 「…………あぁ、世界一の幸福者だった。」 そう言って遠い目をして夏の陽射しに眩しそうに目を細める老人の顔がしあわせそうにほころんでいた 旅人は後にする 「幸せという名の家」を 僕の旅はまだ始まったばかりだ
幸せという名の家 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1372.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 4
作成日時 2019-09-19
コメント日時 2019-10-06
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
良い情景描写に読めました。時間のある空間を時間の表現をされずになされているところがいいなあと思います。
0ありがとうございます
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