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最高気温36度
紅くひりひり痛むぬるい果実のような日焼けがしたいのに、透き通る白は汚されて、浅黒くなっていく。日焼けは嫌いだけど、日焼け止めを塗ったあとの肌はもっと嫌いだ。滑らかさを失ったそこに、汗が混じって化学反応が起こりそう、とふと思う。 緑と青は透明感を失って、ぎらぎらと目を刺すような濃さを見せつけ始める。鮮やかすぎる極彩色を見た時に似た不気味な嫌悪が、目から全身へ伝わっていく気がした。 自堕落な私が流す醜い汗と、部活に打ちこむあなたが流す美しい汗の、いったい何が違うっていうの 夏が嫌いだ 風にはらむ夏服のシャツも、汗ばんだ肌も青春に酔う笑顔も、あなたがどこかで流した涙の痕も、ぬるくなった水道水みたいな感情を昇華させられなかった書きかけのノートも全部、嫌いだ 激情は虚しく夏に呑み込まれて、口にふくんだ氷が溶けていくのを、顔を顰めながら他人事のように感じでいる
最高気温36度 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 828.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-06-08
コメント日時 2017-06-24
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
透き通る白が汚される、醜い美しいと区別した(された)汗の違いを問う、この感じ好きだなと思いました。熱が体に纏わりつくべとべとした夏とそんな夏みたいな感情は夏に呑み込まれる。夏ってこういうことだよなと思います。夏に発生した全ては夏によって吸収され夏のうちに消滅する。最後の一行の温度感をもっとぐんと下げたらもう少しインパクトがつくのかなあという感じもしました。
0赤く火照るような日焼け・・・感情の燃え上がりを味わいたいのに、黒くじりじりと焦げていくような、くすぶるような燃え上がりに、気持ちが引き留められてしまう・・・そんな2重の意味を感じながら読みました。 「~起こりそう、とふと思う。」ここは、あえてこのような形にしたのかな・・・起こる、と断定してしまってもいいかもしれないなと思いました。
0語り手が望むのはじわじわと感じる日焼けですが、その欲望とは裏腹に、日差しは白さを浅黒さへと変えます。日焼け止めを塗ったあとの肌が嫌いなのは、あの独特な匂いがもたらす謎の成分への不信感ではなく、じわじわ痛むような肌感覚を伴わない日焼けを人にもたらすからなのでしょう。 二連目は書いてあるとおりそのままで、あなたの汗と私の汗が同じ汗でありながらも、何か違うと感じてしまうネガティブな自意識の表れでしょう。それをきっかけとして、「夏が嫌いだ」という一つの結論が導き出されています。そして、そのことを元に、夏から派生する様々な物象も嫌いに見えてしまいます。 最終連は身体感覚の乖離を表しているのでしょう。痛い、熱い、冷たいといった身体感覚はダイレクトに人が感じるものですが、その感覚を「他人事のように感じている」のは、まさに心ここにあらずと言えます。では、一体何に想いを寄せているのでしょうか。 語り手は激情を孕んでいます。その激情は、夏が嫌いだ、という想いであったり、目から全身へ伝わった嫌悪などです。化学反応が起こりそう、とはぐらかした表現によって、実は語り手が見ている世界に化学反応がもたらされています。透明感を失った緑と青が何を指しているのか具体的にはわかりませんが、そういった綺麗な風景が語り手にとって嫌悪をもたらすものになったという変化が化学反応です。そして、そのことで夏が嫌いになっています。 実はこの緑と青がとても重要で、グラウンドの芝生と空の色だと想像しました。部活に打ち込むあなたを教室から眺めている私。その両者が流す汗は同じ汗だけれど、でも、語り手にとっては何か違うと思わされている。自堕落という自意識によって隔たりを感じたこと、それがこの作品の核なのではないかと捉えました。
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