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不明
ひとりぼっちの幸福を 噛みしめたら甘味料の味がした。 アステルパームの味がした。 今僕はとおくF市の郊外で暮らしています。元気ですか? 声なんて帰ってこないのです。 電話番号を消したのは一瞬のことでした。 安易に消したのではないのですけど 今ではとても安易に消したと思い心が冷えてしまいます。 忘れたことが沢山あり過ぎて、反対言葉を尽くすことに懸命になりました。 日記の束を見て下さい。 視線なんて帰ってこないのです。 只悪夢障害で眠ることが憚れる夜に、友達も一人、二人と消えていき あなたがついにこの世の草陰に紛れ込んだ、 いいえ、ほんとうは、あなたは、しあわせにしているかも知れないから 今更こんなことを書き語ろうともおかしいけれど 声が帰ってこない。 視線が帰ってこない。 一人の寝室で介抱されないことのさびしさも アステルパームの味がした。 ひゅるひゅると赤いテープを振って猫と遊んでも 一人生き残ってしまったような感慨が拭えないでいます、 あたらしいパートナーで、twitterで、仕事で、ガムで 円形に穴開いたこころを埋め合わせが終わったら することなんて何もなかったような錯覚で 川辺で石切りをすれば一段も飛ばなかったかったあなたを想います。 あたらしいパートナーはとてもいいひとで 僕の詩に登場したい様子だから書くがよく食べるひとで 将来食費で家計が圧迫されないかな、なんてジョークにしている 週末の土曜日だけなんだ、後はひたすら書いて、仕事するだけで 肉体労働。七月は結構ハードだけれど稼げそうです。 今日、しっかり頭を下げてお願いできました。 ねぇ、やっぱり僕のプライドが高いなんて見せかけだったでしょう? 声が帰ってこない。 声帯がこの世にないのかな。 視線が帰ってこない。 眼球がこの世にないのかな。 妖しく、やさしいきもちになるのはなぜでしょう。 人間の笑いがこわくなるのはなぜでしょう。 僕は汗だくで顔を抑えて座っている。 陽が強くって。陽の滋養とはいえ、骨太になって痩せすぎてしまった。 今、体は緑色で翳が多い。 嗚呼、 フラッシュ・バック、ではない。 何もしていないから、こんなに失っていくんだね。 何もしていないから、こんなに失っていくんだね。 陽は落ちた。充分路傍を温めながら。 家にある薪の数を数えるのにも飽きてしまって ここにいることにすら (実存)にすら飽きてしまって。 やっぱりガムは噛んでいて。 ねぇ、きみはしあわせでもふこうでもさいわいしていますか。 今日一日のわざを終えられましたか。無事な五体ですか。 なんて、やっぱり僕の言葉はおかしいねって 笑いあった夏がやってきますよ。 父親が白い軽トラで帰ってきました。 あなたは歩きますか? あなたは夜歩きますか? 路傍を肌にして冷やすのは楽しいよ、ってまた。 となりのピアノのお稽古がはじまりました。 僕は嗚咽をはじめたら長いです。 スーパーマーケットで迷子になっていたような きみの困った顔を思い出して、 手の中に収めてまた不幸遊びに明け暮れるくらい、しあわせで しあわせで、しあわせで、しあわせで、合掌。 新聞の勧誘のエピソード、応対の合間 きみはずっと部屋の奥で怖れていた。 僕はおまけで缶ビールを貰って そのあと缶ビールの蓋を開けて夏の町なかを歩いた。 部屋にかえると 部屋も、きみもいなかった。 ほんとうだよ。 ほんとうだよ。
不明 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 889.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-06-07
コメント日時 2017-06-19
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
アステルバームと言う言葉が出て来ましたが、アスパルテームの間違いではないでしょうか、それとも詩的な造語でしょうか。 ひとりぼっちの幸福を 噛みしめたら甘味料の味がした。 アステルパームの味がした。 と、冒頭の三行にありました。アスパルテームも人工甘味料なので、ちょっと違う言い方にしたのかなあと思いました。
0色々な呼称があるようですが、詩作品内ではアステルパームです。
0「甘味料の味がした。 アステルパームの味がした。」 「安易に消したのではないのですけど 今ではとても安易に消したと思い心が冷えてしまいます。」 少しずつ重ねながら行を進めていく、その緩慢さが、心の進み方、想いの進み方の緩慢さを表現しているようにも思うのですが、もう少し言葉の分量を絞ってもよいように思いました。 新しい恋人を得ても捨てきれない、未練を断ち切れない「あなた」への想い。 「ひゅるひゅると赤いテープを振って猫と遊んでも 一人生き残ってしまったような感慨が拭えないでいます、 あたらしいパートナーで、twitterで、仕事で、ガムで 円形に穴開いたこころを埋め合わせが終わったら することなんて何もなかったような錯覚で 川辺で石切りをすれば一段も飛ばなかったかったあなたを想います。」 この連にとても惹かれました。 その後、すこし饒舌すぎるくらいに語られる「新しいパートナー」との日常は、その語り方によって、相変わらず「あなた」を想い続ける、切なさ、どうしようもなさ、堂々巡りし続ける心情を示しているようにも思うのですが・・・もっと抑制した方が(寡黙さによって)かえって切なさが伝わるような気もします。
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