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きみのこと
ときに、きみを思い出す。今も。 ハンディな怪獣の全集が宝物だったね。 ウルトラマンに登場する怪獣たち。 四十をきみは過ぎたかな? こっちはアラフォーを下り中だけれど。 宝物は手にすると重くてなんだかテカっていて、そこそこ年季が入っていたね。 売ればお金になるよとふれば、苦笑いしながら小さく首をふった。 大事なものなんだ、ダイヤモンドだった、目覚める街角に立っていた、 降るような冬陽のなかの冷気だったかな。 肌身離さず持ち歩いていた。そのためだったのかな。 ピアポートがお気に入りで、それはお茶や水が自由だったね。 自由に誰でも利用できたね。きみの話していたとおり。 ギャンブルにさほど興味はなかった。行ってみれば緑茶が熱々でおいしかった。 きみは計算が苦手だからとその裏側に握りしめた鉛筆の先を遅々と運んで。 そんな感じで正しい数を求めるため。 そのための舟券がたんまりと束で置かれていた。 弾き出した数の正誤を求めてぼくたちに尋ね。 そしてそれが正しいのだとわかればいつもの照らいの表情になる。 どこでも大変で臨時の職ばかり。だからだったのか、役人たちに内緒だった。 すっかりとご無沙汰しているけれども。 仲間がいると言っていたし悪さもないと言った。元気にしているだろうか? 家にいては電気を食うと、ボストンバッグとともに身を縮めて。 通行人を眺めているのだろか。 ケータイが鳴ったかと思えば公衆電話からでじきに途切れてしまった。 日々寒さが堪えてきた。そんな時節だったね。 どうしているんだろうか、どこにいるんだろうか。 吉野屋で牛丼をおごったとき店員が水をこぼして。 困った顔でパンツ濡らしたまま食べ終えて。ぼくはおかしくてずっと笑った。 笑っていた。見れば中々にイケメンな男。そんな感じに見えたきみだった。 渋い横顔。刈り上げた、てるてる坊主頭にとさか。 年中部屋にわくっていう害虫とやらを、今も退治しているか。
きみのこと ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 850.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2017-06-07
コメント日時 2017-06-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 2 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
花緒さんありがとうございます。不思議ちゃんというわけではなかったですが、ライティングのまずさといいいますか、情報量とのバランスがまだまだとれないままに上げてしまったためかと。しかしまた、どこかで不思議ちゃんを志向した部分もあったかなという。 内容については、怪獣の本を愛読するウルトラマンに似たきみという一人の男とのある日々について、のエピソード全集ですね。といってもわかりませんね ^^; きわどいものもあったりするのですが。社会的属性については一部触れていたりしますけれども、このあたりはなかなか難しかったりします。
0語りかける温かさ、今、そこに居ない人を想う、離れた場所で、静かに思う・・・そんな抒情を感じました。 幼馴染かと思ったのですが、30代半ばを過ぎても、子供のような純粋さで「子供のおもちゃ」である、怪獣の図鑑を、繰り返し繰り返し眺めている・・・ダイアモンドのように慈しむことのできる、そんな「きみ」を連想しました。 本当の豊かさって、なんだろう。私たちの心は、いつも飢えていないか。「きみ」のように、日々「目覚める街角に立っていた、」そんな、世界との新鮮な出会い方を、いつもすることができるか。山下清のような、純朴な人がそこに居るように感じます。
0まりもさんありがとうございます。不在に対する情感からさまざまに汲んでくださったようで恐縮です。そうですね。一応子供向けのものなんですが、いい年をした大の男もけっこう楽しんでいたりしますし、そのあたり興味深いですね。山下清は裸の大将でしたか。施設を飛び出して張り絵をしながら全国をめぐったという、花王日曜劇場でよく視聴しましたね。野に咲く花のように風に吹かれておにぎりほおばりながら。beatにbumにlumpenを思い起こさせる人のようです。現実にはよくぶた箱に入れられたりしていたようですが、鉄道での移動についても昔とは無銭乗車のありかたはどう変わってきているかなど。そのあたりもいろいろ興味深いですが。
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