エトウ ユキオ - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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エトウ ユキオ    

週末、昼ご飯と夕ご飯は父が担当してくれている。父は私たちに何が食べたいかと聞いたことがない。それはいい、別に。実際出されたものは全部食べていた。しかし問題なのはそこではない。 私はこの頃少し体重が増えていたのを受けてダイエットをしていた。その為、父には昼ご飯を食べ終わった後、「夕飯は要らない」と確かに伝えた。私は昼ご飯の後二階にある自室で過ごしていた。 日が暮れて、20時くらいだろうか、喉が渇いたのでリビングへ行くと、父と妹が夕飯を食べ終わった所だった。今日は餃子だったらしい。皿の上にはまだ20個ほど余っていた。父は私に「食べな」と促したが私は先ほど夕飯は食べないと伝えていたし申し訳ない気もしたが、断った。まだ母も仕事から帰ってきていなかったし、夕飯があれば食べるだろうと思ったのだ。 父が食卓を片付けるのを横目にしばらく私はリビングでテレビを見ていた。鼻歌を歌いながらホットプレートやら、皿やらを片付ける父は次の瞬間、何のためらいもなく余った餃子をスーパーのビニール袋に入れて捨てた。私は驚いたが、直ぐに私には父の意図が見えてしまった。 普通なら餃子などレンチンすればいつでも食べられるのだから、ラップをかけて冷蔵庫に入れておげはいいものを、夕飯を断った私に罪悪感を背負わせようとわざと目の前で餃子を捨てたのだ。私は怖かった。人が嫌がる顔を、怯えた顔を進んで見たがる父が。 父は昔私が茶碗に米一粒でも残そうものなら食卓をひっくり返して激怒するような人だった。しかし私はその叱り方に違和感を覚えていた。ご飯が勿体無いと指摘しながら、自分はお味噌や、自分の茶碗やら全部ひっくり返していた。こぼれてしまったお味噌は当然食べられない。小さい頃はその違和感をうまく言語化出来ずにモヤモヤしていたが最近ようやく父は少しおかしいのだと気づいた。今も私の後ろで食卓で晩酌している、爪をテーブルに立ててカタカタ、機嫌良さげだ。自分で作った餃子20個をゴミ箱に捨てた直後の人間とは思えないが。 うちの父は少しおかしいのかもしれない。


エトウ ユキオ ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 1733.5
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 47

作成日時 2019-09-02
コメント日時 2019-09-07
#テキスト #アドバイス募集
項目全期間(2025/04/13現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性1010
可読性1010
エンタメ55
技巧1010
音韻00
構成1212
総合ポイント4747
 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性3.30
可読性3.30
 エンタメ1.70
技巧3.30
音韻00
構成42
総合15.75
閲覧指数:1733.5
2025/04/13 13時19分17秒現在
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    作品に書かれた推薦文

エトウ ユキオ コメントセクション

コメント数(2)
三浦果実
(2019-09-03)

この作品大好きです。どこがどうとかは述べません。たくさんの人に読むことを薦めたい作品です。前衛性可読性技巧構成に10点入れました。

0
ふじりゅう
(2019-09-07)

着眼点に優れた作品だと感じた。父の考える正当性と、私の感じる違和感の間に生じる摩擦が読んでいてとても胸に響く。 私が感じるに、主人公が父に対して考えることをそのまま説明せず、実像をもって暗に伝える工夫があってもいいのかもしれないと考えた。その方が、更に読者に対して「説明できる不快感」と「筆舌に尽くしがたい不快感」を同時に伝えられる気がした。

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投稿作品数: 2