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不可逆
さわやかに流れる時を 致死性の水深で聴くとき わたしは可視化された風である 髪は靡く 発狂した 森のざわめき 視線は痛みを伴い 人間は邪悪そのもの 犬の精神だけが 逃走する夜に 朝日という罠を仕掛ける 牢獄のなか わたしは死んでいる 呼吸をする必要はなく 生きているという 思い込みにより 存在を許される 死者の語りに時は黙り 多くの罪人たちを想う 皆首がない 火刑に処されるとき わたしはなんと叫ぼうか 決して生存に共鳴したくはない 水などいらぬ 光などいらぬ 闇に開かれた口を閉ざす手首は 傷だらけであるべきだ 黒く燃えろ髪 鈍く唸れ喉 生に縋る手がある 死を語る戯言がある わたしは両者の区別がつかない 生に縋る手を掴むとき 掌に開かれた口は死を語る 吹き抜ける風が わたしを撫ぜ 低く囁く 忌まわしき風により 縄が眩暈を起こしたのなら 草臥れた己の影を吊るしたまえ つま先から燃え上がり 孤独を訴える焼身は 群衆のなかにまじえ 嘲る太陽の光を浴びせよ 暗闇に眼光を認めるとき 敵は水のなかにいる 砂浜に溺死体が上がった 溺死体は誰のものか 風または潮流の所有物 岩肌を削る掌を見よ あなたの眼は瞼に閉ざされ 迫り来る危機の足音に ゆっくりと開かれる 風が運ぶもの 死滅した犬の遺灰か 狂い咲く花の種子か すべて狂っている 犬も風も森も 正気だったためしがない みどりいろの黄昏へ 歩んでゆく旅人は 遠方に兆す 月の満ち欠けに 病んでいる わたしは 生きているのか 死んでいるのか わからない 時が流れていることはわかる 窓へ吹き抜ける風が 深海を冷まし ある時点を境に世界は時を遡る
不可逆 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2299.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 4
作成日時 2019-08-05
コメント日時 2019-08-11
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
沙一さん、コメントありがとうございます。 確かに観念的ではあります。 ですが、このように書かざるを得ない何かが自分にはあると思っています。自分に生きているという自覚がない、そんな奴が書く詩はすべて戯言だと明言する人がいたかもしれない。ぼくはわからない。この先、詩を書き続けているのかも、どこで何をしているのかもわからない。過去に何があったという訳でもないですが、どうしてか牢獄や火刑といった言葉が出てきてしまうのです。原罪を背負っているような詩に惹かれる自分がいます。 経験とは? ぼくは詩を書く為に何をすべきかわかりません。 せめて、できることといったら詩集をノートに書き写すことくらいです。
0こんにちは。かっこいいな、と思いました。かっこいいです。私がもっともっと若かったら、すごい詩の書き手発見!と小躍りしたかもしれません。「そんなふうなかっこよさ」です。なので、ずいぶんオッサンになった身としては、既にコメントにもでていますが、観念的のように感じるし、強い言葉や勢いに頼り過ぎているように感じます。それが持続されて、かえって単調に終わっているように感じました。
0ずらっと読んだときになんか独特の格好よさがある。うねうねしないですぱっすぱっと線を引いていくような直線的なこのリズムの独特の格好よさはどこからくるんだろうと思って、それぞれの行が何音で終わっているか調べてみました。一番最初の三行の連と6連目以外の連にはかならず、終わりの音に同じ音の連続がある。たとえば2連目 >森のざわめき >視線は痛みを伴い はどちらもイ音で終わっています。 そして6連目ですが、最後の音は同じ音の連続ではないものの >忌まわしき風により(イ音) >縄が眩暈を起こしたのなら(ア音) >草臥れた己の影を吊るしたまえ(エ音) >つま先から燃え上がり(イ音) >孤独を訴える焼身は(ア音) >群衆のなかにまじえ(エ音) >嘲る太陽の光を浴びせよ(オ音) と(イ音、ア音、エ音)のセットが2回繰り返されています。 こんな感じでみていくと 1 ... o, i, u (リズムに乗る前の助走という感じでとてものびのびしている。) 2 ... u, a, i, i, o, a, i, u (行も短く音数が3つで引き締まった感じ) 3 ... a, u, u, u, i, u, i, u, i (u音の3連続、u,iの組み合わせの3連続でかなり引き締まった感じ) 4 ... i, a, i, u, u, a, a, i, o (uの連続とaに連続だが、ここは「〜ぬ」が2回きてぐっと結び目ができたあとのア音の2連続に開放感があって、そのコントラストが連全体を引き締めてる感じ) 5 ... u, u, i, i, u, a, e, u (前半が特に引き締まっている感じ、だが後半からすこし解放される感触) 6 ... i, a, e, i, a, e, o (i a e の連続が間隔の広いちょっと深呼吸するようなリズム感を作っている感じ) 7 ... i, u, a, a, u, o, e, i, u (aからoまでのすべての音を含んでいて自由な感じ) 8 ... o, a, a, u, o, i, e, a, u, i, u (行も長く、前の連と同じくaからoまでのすべての音を含んでいてさらに自由な感じ) 9 ... a, a, a, i, u, a, i, u (a音の連続で畳み掛けてかつ「〜る」と言い切る行が二つあって作品全体を引き締めている感じ) 個人的には上に書いたみたいな感触でした。ずらずらっと思いついたままに言葉が並べられているようで、実はきちんと言葉のリズムの起承転結があるように感じられました。決して全体は短い訳ではないし、言葉の意味を拾っていくと迷子になってしまいそうにもなりますが、音として読んでいけば一気に最後まで読まされてしまう、そんな疾走感がありました。 こういう音韻設計ってあまり意識しすぎると全体がガチガチになって言葉からしなやかさが失われてしまったりしがちですが、それもあまり感じさせないので、もしかしたら感覚的にされたのかもしれませんが、試しに分析してみてとても興味深かったです。
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