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I am not what you would think what I am
[ うつつ ] 朝の紅茶はダージリンと決まっている。夜の網膜に色を乗せた絵筆を洗うとちょうどこんな色になるのだろう、ミルクを垂らすと渦を巻いて濁ってゆくその錆びた鉄の色は、ひと欠片の躊躇いも示さずに透明を手放し、トクンと音をたててから、ささやかなつぶやき声さえもその乳白に埋め込んで、ただ微細な振動だけを残してここで静かに。 私は窓を開けて空を眺めていて、そして私は扉を開けて隣の部屋を覗き込んでそこに佇む。その先の白い部屋で丁寧に本の頁をめくってから頰をついているのもまた。微かに震える薬指をマグカップに添えた温もりで朝の手触りを確かめながら、決して破けないようにひどく丁寧な、それでいて初めて桃の皮を剥くときのあのたどたどしさで、薄い表面の皮膜を一枚ずつ。 鶺鴒。強いもの。美しいもの。私の小さな掌でそっと包むことができたとしても、その鼓動の素早い高まりさえ、決して手に入れることはできないのだろう、その身体がどれだけ伸びやかに糸を空に引き伸ばしても、その小さな羽根が孕んだ慎ましい酸素の渦のたった一つでさえ私には。 唇にふれた陶器の表面の控えめな曲率は確かに、このように硬質であったなら、私の瞳は、瑞々しく磨かれた大理石の冷淡さで液体を冷やしながら、毅然と線を引くことができるのだろうか。 ここに一人、そこに一人、また埋葬が始まる。腐敗した養分を枯葉に吸わせ、煙は揺れて炎は共鳴する倍音、景色はそこで始まっていた。 ・ [ 閉じて ] 鏡の蒼に映して咲いた裏庭を 鈍く影に宿して音はしたへ 沈めば「すでに置き去りにして並んだ(笑)」と云い ひとつひとつへ温もりは慕って 吐息で灯した面影を、ひそかに孕み、意味をたがい 唇へ向かって遠くへ透かしてみたような雫 筆先で線を引いた瞼の先の膨らみをはぐらかし ひとつとして指は指を逃さず 掬い、拾い、それでも朝は 閉じたまま、同じ色ばかりが消えて そして 扉は大きく斜めに立て掛けなくてはいけなくて、間違いは許されない 櫛で梳かし、頬へ薄紅色は少し憚られる、と そんなふうに率直に何かが咎めて壊してしまった鏡とは きちんと直角になるように ・ [ うたたね ] インクが撫でた光の乾きの 震えた手つきを、密かに分断して直線の 幾何学性を拒んで、横たわる音階を 戻して唇を開き、浮かべた張力は 眠った雀、そことここで それ(ら)は私(たち) 半径で空を測り、渦巻いた耳殻は 染み込む隙間さえも風に去らせて ひとり波に閉じられて砂になれば、棄てて それぞれ別々の戯れに、まだ仕草は白く 柔らかく包み込んで、ぱた、ぱた、ぱた と、裏返して、鼓動を乾かす 水の鼓膜はとても薄いから コップは硝子でなければいけない、あるいは 部屋一杯に広げた真っ白な便箋を ところどころ切り裂けば そこから立ち所に花が咲くような そんな振動を知っているか、たとえば 灰を等間隔に整列させた その浮力で空を飛べるのか、それぞれ 目を閉じて眠る雀は、皿の上で、それぞれ 薄い夢の皮なのだ ・ [ ソナチネ ] レースのカーテンで境界を滲ませて、揺らぐ呼吸のふくらみを陰影の濃淡に柔らかく包み込んでひかりは、些細な神経の震えさえも逃さずに、すべやかな肌に感傷を縫い付けてひとつ、またひとつ、ひそやかな。 波に喩えてみたとして果たして。 憂いなど、なおさら。 時間の裂け目はそれぞれ頭をもたげて滑らかな砂のようにするりと線を越え、いよいよ淡く襟足をとかして少しずつ位置をずらしながら語り合う。 静か。 その音は風に抱擁されて籾殻になってしまった、パチンと弾けたのはとても遠くのことで、その上澄みだけを濾過して風はまた色調を変えながらしたたかに。 それは激しい混濁のような弦の響き。なのか。 桐の木目は息の長さで旋律を手繰り寄せながら、同時に哀願を突き放して結び目は固く、固く。絞るように。 深く群青色に沈んで、記憶は黒い髪を水に浸して夜を窒息させた。小舟。結んで安らかに。揺らいで安らかにさめざめと遠くへ手放してソナチネは耳元にそっと。 また逢えたならば、歌えるように。 ・
I am not what you would think what I am ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1505.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2019-08-02
コメント日時 2019-08-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 5 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 5 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 10 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 10 | 10 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
I am not what you would think I am
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