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夕暮れ
遥か遠く山の端に あかい光が溶けてゆく 蒼に染まる町並みの 影にそっと身を潜めて 街灯が揺らぎ滲む夜に 僕は独り歩を緩ませ 深く深く沈んでゆくよ
夕暮れ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1550.6
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 48
作成日時 2019-07-28
コメント日時 2019-07-30
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 38 | 38 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 5 | 5 |
総合ポイント | 48 | 48 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 12.7 | 5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1.7 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1.7 | 0 |
総合 | 16 | 15 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
意識に深く沈潜するモダニズムも ケレン味過多なポストモダンも暮れきったような この、ごくごく平明な詩から、とある詩を想いました。 明治生まれの象徴派の詩人、梶浦正之の作です。 ※ ( )は原文ルビ、[ ]は私的なルビ 汝は詩人か夜盗か 梶浦正之 さわがしきは人波 はなやかな街の光 そを脱れて、われは 代々木原なる松林の窪地に ただ独り腰を下ろしてありき。 とほき街の雑音(どよめき)…… 松葉をすぐる風音…… うすき銀もうる色の天の川…… すべてはやさしくわれをとりまきぬ。 折あしく巡査(おまはり)の見つけるところとなり 厳しき詰問(なじり)を放たれぬ ──かゝる夜陰を 人影なき叢[くさむら]にうづくまるは 詩人か、はた夜盗か──と。 われは黙して答へざりき。 かくて交番につれゆかれ かなしき侮辱を浴びてかへりぬ。 その夜 独り床に眠らむとし、 ──われは、さびしく自らに問ひたりき。 ──汝(なれ)は詩人か、はた夜盗か──と。 (『春鶯』1931年 昭和6) この職務質問を受けた男は、独り寝床でくやしさに身悶えたことでしょう。 何より、わからずやで頑迷なあの巡査(おまわり)に こんな詩趣豊かな言葉で打擲されたことの衝撃にです。 前掲しました作品は、いささか大時代的な情景ですが 今でもまったく共感できうる孤独・孤絶な心情ではあります。 しかし、孤立をあらわすための、巡査のもってまわったような 芝居がかった詰問が、引き立ち過ぎるほどにポイントがしぼられ そこに他の様々な要素を配置した、この詩の構図は 現代の孤独を示すのにはそぐわないのかもしれません。 当作『夕暮れ』における 目立って美しくも、陰惨でも、哀切さも無い ポイントになるような言葉を構図に入れず 強い孤独の象徴すら去勢し、切り取ってしまったこの「欠落」こそが 人間はどこまでも「単独」でしか生きられないという習性を 浮かび上がらせることの証明なのではないだろうか。
0抒情性があると思いましたが、上田敏の海潮音の「山のあなた カアル・ブッセ」をふと思い出しました。それと夜に深く深く沈んでゆく境地はどんなものだろうかと推測を逞しくすることができました。
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