別枠表示
巡りゆく暦
カレンダーを掛けかえながら、ふと考える。 この宇宙にはいくつぐらい暦があるのだろう。 星の暦。月の暦。マヤの暦。ローマの暦。大陸移動の暦。 宇宙人の暦もあるのだろうか。 火星年代記。太陽系の暦。銀河系の暦。 超新星の誕生や、宇宙の泡を巡る暦。 そうそう、犬の暦も忘れちゃいけない。 漆黒の冬を雪に埋もれて耐える、アイスドッグの暦。 ヒトと一緒に春の訪れを喜ぶ、優しく猛々しい獣の暦。 至るところに暦がある。脳の皺に刻まれた暦。樹木に刻まれた暦。 クジラの歯の暦。鮭の産卵の暦。 腸内細菌たちの暦。素粒子の一生の暦。 そして銀河の暦とDNAの暦を結ぶどこかで、私たちの暦が静かに立ち上がる。 遺伝子と記憶の暗号を潜り抜けて、生まれたての暦がふわふわと東の空に舞い上がる。 大雪の夜から始まった真っ白な暦。港街のスイカみたいな建物、スペイン居酒屋と奏楽堂。 徹夜で書き綴った手紙。一心に見つめた彗星と花火。 時間の迷路とニューロンの摩滅に抗って、暦は絶えず成長する。 未来へ飛ぶ槍のように。天空から還る船のように。 ようこそ。ようこそ、私たちの小さな惑星へようこそ。 巡りくる暦。ひと巡りしてまた生まれ変わる物語。 極夜の雪と氷の中で、春を告げるホルンが鳴り響く。
巡りゆく暦 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1568.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 5
作成日時 2019-07-06
コメント日時 2019-07-13
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 5 | 5 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2.5 | 2.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
暦は循環する。けれど、同じ地点には戻らない。巡りながら前進する。 「暦」という概念を起点に、想像の中で巡礼するような印象を受けました。
0様々な暦が例示されて(第4連まで)、そして第5連でついに私たちの暦が静かに立ち上がる。「生まれたての暦」「大雪の夜から始まった真っ白な暦。」「暦は絶えず成長する。」。「巡りくる暦」。第5連第6連を導くための和歌で言うところの序詞だったのかもしれません、第1連から第4連までは。特に序詞的な連の最終連、第4連では「至るところに暦がある。」見たいな、総括と言うほどではないにせよ、ある種の感慨、汎暦論見たいな感慨が、本格的な第5、6連を導いて居ると思いました。
0トビラさん、エイクピアさん、お読みくださり有り難うございます。 これは詩というより、ある人の還暦の記念に贈った言葉です。少し手直しして、作品風に仕上げたものです。 抒情に流れすぎかなとも思いましたが、忘れがたい文章なのであえて投稿しました。
0