別枠表示
夢のはなし
朝に目を覚ますときみがいなくなっていた。かわりに、一編の詩がとなりにいた。僕は、きみより早く起きたときに、いつもするように、髪を撫ぜて、どんな夢を見ているのか確かめる。たとえば、それは初めて象がこの街にやってきたときのこと。たとえば、それは蝶を信仰する部族の礼拝のこと。たとえば、それは僕と、君の家族と、僕のおばあちゃんと、まだ生まれていない子どもたちといっしょに、バスに乗って、すべてが黄緑に染まった田舎に行くこと。 それは燃え盛る塔のこと。それは髪の毛が抜けつづけ川になってしまうこと。それはウルルが宝石になること。それはまた小学校にいくこと。十万人の観衆の前で歌を歌うこと。ホタルイカの吊るされた縁日で羊を売ること。 空から色付きの消しゴムが降ること。知らない誰かに怒鳴られること。宇宙の星がミニチュアであることに気づくこと。 世界のすべてのなにかがなくなってしまうこと。 それは朝に目を覚ますこと。そして、となりで寝相の悪いきみが、ほとんどベッドから落ちそうになっているのを、抱き寄せて、髪を一度だけ撫ぜて、今日も一日が始まること。
夢のはなし ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1655.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 11
作成日時 2019-06-22
コメント日時 2019-06-25
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 2 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 11 | 10 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0.6 | 1 |
前衛性 | 0.4 | 0 |
可読性 | 0.4 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.4 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.4 | 0 |
総合 | 2.2 | 1 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
共感出来てとても好きです。 切なさと温かさの混じった素敵な詩ですね。
0この詩を一読して感じたのは物足りなさでした。「たとえば、」でつながれるイメージの数々は懐かしさと秘匿性とが混ぜ合わさっていて心地いいですが、単発のイメージがポツンポツンと並んでいて、いまひとつ酔いきれない、もっと滑らかに飛躍させられるだろうと。 でも少し視点を変えて、例えば曲をつけてみたとすると、ぼくはこの歌詞に感銘を覚えるだろうと思いました。ひとつひとつのイメージが「~こと」と一定のフレーズを踏むことでより印象深くなるし、メロディがつくのであればセンテンスそれぞれのイメージは独立した方が却って心に刺ささる気もします。 あるいは朗読でも効果を発揮するのかもしれません。こういうアプローチも有り得るのだな、と感じ入りました。
0拝見しました。 面白い。とても面白いです。たとえば、それは、 の重なりにより、夢の描写に厚みが生まれている。さらに、その描写がどことなく現実の虚しさとマッチしているため、様々な写真から人物像を探るような面白さがある。 きみが今もいるのか、それともいなくったのか、どうとでも取れるような構成になっているのも良いです。例えば、きみがいなくなった、と思っていたらベッドから落ちそうになっているだけだったともとれますし、ベッドから落ちそうになっている描写も夢であり、または過去の出来事だとすると、最初の髪を撫ぜる描写は自身の髪か、きみの残り香か、と読み解けます。 読み応えのある詩でした。次作も楽しみにしております。
0