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黄金の山羊
その山羊は角を振り 岩山の絶壁に立つ 崖下は奈落の底 灰色の谷は吹きあげて 舞い上がる轟音が 耳朶を打つ無数の灰色の綾 落雷の音は稜線の彼方 見下ろせば断崖 絶壁に蹄をかけ 屈強な筋肉がその崖を 一歩また一歩と 上り詰め その雄々しい山羊は頂上を目指し 昇りつめてゆく 己だけを頼りにして その力、知恵と経験 胆力のすべてを注ぎ 自らに課した試練を克服した 顎髭はなびく 吹きつけるは雨交じりの風 嵐はもうじき 岩ヤギの瞳は彼方を見つめ 風の中にその匂いを嗅ぐ そしてそれは悟るのだ 山の峰その断崖を 降りるのだ 迷いはない 躊躇はせずに崖の淵 たった今登ってきた断崖から 身を投げるように降りてゆく でも墜ちはしない 違う路を見出して迷わない 降りるのだ 落ちはしない山羊の道 わずかな段差が刻む縁(へり) 時に跳び 時に跳ね 危うい道を降りてゆく 崖を下って谷の底 その山羊はいた そして、その崖を見上げることもない 降りしきる雨の中 岩だらけの地面を 風に追われて一匹の山羊は行く だが嵐が去れば帰ってくる 再びこの地に立ち また目指すのだ そそり立つ断崖を臆することもなく 何度でも何度でも 命の続く限り いつかは墜ちるのであろう断崖を 角を振り、息を吐く その一歩を踏みしめるは 「黄金の山羊」 気高き魂はたゆまぬ足取りで 天上を目指す 頂に立つは黄金の山羊よ 黄金色の夕日を浴びて カプリコーン 黄金の毛皮をまとい 孤高の蹄とその双角を誇りに 雄山羊の夢は天を指す
黄金の山羊 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1234.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 44
作成日時 2019-06-06
コメント日時 2019-06-06
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 20 | 20 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 8 | 8 |
音韻 | 3 | 3 |
構成 | 10 | 10 |
総合ポイント | 44 | 44 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 10 | 10 |
エンタメ | 0.5 | 0.5 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 1.5 | 1.5 |
構成 | 5 | 5 |
総合 | 22 | 22 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
圧巻、でございました。まるで一篇の短編小説を拝読させて戴いた様な。 強靭な筆致に思わず、畏敬の念を懐く事、頻りでございます。 喩えて 黄金に燃え立つ雄雄しきミモザ、熟麦の様な顎髭、総身 聳え立つ山嶺を踏破する、四肢――その偶蹄、嵯峨の膚を削るかのごとくに―― 嵐――そして復も嵐、而して難攻を物とも為さず、孰れより到り、孰れへ去るのか 轟々たる濫海の如く、嵐そのものかの如く貴き その名 カプリコーン 思わず、便乗を致して仕舞いまして、申訳もなく。 質実剛健、且つ気品有る、確かな描写力に感服致しました。
0鷹枕可様、過分なお褒めの言葉ありがとうございます。私は基本的に”物語”詩の形をとっており、エンタメ志向の強い作風を自認しております。だから、表現はわかりやすい文章を心掛けているのですが、オリジナルの拙文を大幅にグレードアップした鷹枕可さまの格調高い文体はこれも”いい”!と、感心至極なのです。わたしも日本語っていいよね、という文章を書いてゆきたいものです。
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