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海のポエジー
三角の海を作り イルカもクジラも締め出そう 古い愛のシンボルも 砂糖水に潤けたポエジーもいらない あの太陽からも独立した 強固な“六つの辺”をもつ海だ そして虐げられし深海のものたちを 錐の上方へと招こう めくらの鮟鱇も スリッパのように踏みつけられていた鱏たちも見晴らしが変わるだろう 蛸さんいらっしゃい 貴女こそは錐の頂点に陣取るにふさわしい 僕は銀の飛び魚となって その白い吸盤に捉えられ いつまでも吸われてうっとりしたい まわりでは小魚どもの花輪がキラキラまわり 太陽光線と小競り合いする 地上では 紫外線が悪魔となって覆いかぶさり 干からびたものたちとの戦争が始まる ばしゃばしゃと流された血は錐の頂点にぽたりと垂れ ぽたりと と 突然眉間がバリバリ剥がれ ホオジロザメの弾丸が空へ吸い込まれる あれはなんて賢い子だろう! ほとばしる心臓はほらあそこに 流された血は推の頂点に ぽたりと ぽたりと 僕の口から血が垂れる それに群がる小魚どもが またしてもキラキラと眩しい ・・・そしてまたその反射を目指しホオジロザメが戻ってくる 延々と 母なる吸盤よ ありがとう そしてさようなら! 偽りだった僕の日々まで吸い尽くしておくれ ああ 呼吸が止まり 水泡の中からやってくるよ 天空の反逆者 血と海の詩人マルドロールが 息も絶え絶えの偽善達よ! 弱肉強食の“美”の前にひれ伏したまえ ー 今 青いピラミッドのように海は自ら輝き 堕ちてゆく太陽と入れ替わる ー 三角の海を作り イルカもクジラも締め出そう 古い愛のシンボルも 砂糖水に潤けたポエジーもいらない あの太陽からも独立した 強固な“六つの辺”をもつ海だ これが僕の創った三角の海というわけさ 当然神など居ない。理由? 『誰だって、馬鹿でなかったら自分の正義の復讐をしなきゃならない』 君が言ったことだろ? 人間? 人間なんて放っておけ 海で溺れ死ぬだけの生き物だ ーーーーーーーーーー ※『誰だって、馬鹿でなかったら自分の正義の復讐をしなきゃならない』 ロートレアモン著『マルドロールの歌』から引用。
海のポエジー ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2533.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 199
作成日時 2019-05-25
コメント日時 2019-06-04
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 24 | 24 |
前衛性 | 15 | 15 |
可読性 | 35 | 35 |
エンタメ | 34 | 34 |
技巧 | 36 | 36 |
音韻 | 20 | 20 |
構成 | 35 | 35 |
総合ポイント | 199 | 199 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 1 |
前衛性 | 2.5 | 0 |
可読性 | 5.8 | 0.5 |
エンタメ | 5.7 | 0.5 |
技巧 | 6 | 1 |
音韻 | 3.3 | 0 |
構成 | 5.8 | 1.5 |
総合 | 33.2 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
沙一さん、コメントありがとうがざいます! >それともマルドロールの歌からの引用のように、単にルサンチマンの発露であるのか、ちょっと気になりました。 もともと『主人公のルサンチマン的なものからマルドロールの引用へ繋ぐ』みたいなものを書こうと思っていたので、ルサンチマン的なムードはあるかと思います。 >この三角に作られた海に、私は「狭さ」を覚え、それが(私的な解釈ですが)〈辛い詩情〉に結実しているようにも思います。 主人公はおそらく、マルドロールを弱冠読み違えてる感もあります。 確信的な思想がある、というよりは逃避や錯乱してるというか。 >最後、人間なんて放っておけという、そのようなシニカルな姿勢は、前作「トビウオ」にも通底していると思いました。(そういえば、海や魚というモチーフもですね) 今回は『トビウオ』の精神的前日譚、みたいな気持ちもあります。 トビウオについては、また書き直せたらなぁとも思ってもいますが。
0>海の生き物が現実から目を逸らしたいが為でもあるのではないかと感じられました。(深読みし過ぎでしょうか) 追加になりますが、今作は「飛び込み自殺した人間が鮫にでもバリバリ食われながら見た錯乱」みたいなイメージもあったり、 「一風変わった魚(飛び魚)の見たファンタジー」のようなものだったり、 「最終的にはどれが現実なのかわからない、海の幻想」みたいなイメージもあったり、自分の中でも広げすぎて収集が付かなくなってる面もあります・・・ もっと終点を絞るべきでは、と反省もありますが、色々な方向で考えて頂けたことに関しては感謝です!
0たこさんいらっしゃい!ではなく鈴木 海飛さんコメントありがとうございます! タコがスペシャルな扱いなのは「マルドロールの歌」で蛸と抱き合うマルドロールが印象的だったからだと思いますが、自分の中で“吸盤=母”みたいなイメージが何故かあったりします。 あと、たぶん自分はイメージの連結により、どんどんイメージを飛躍させ「説明のつかない違う何処か(異世界?)へ連れて行ってしまうようなもの」が書きたかったのではないかと思います。 それが自分の考えるポエジーもしくはシュールレアリスム、あるいは逃避?なのかも知れません。 徐々に文体が正常になっていく、みたいなのは今回得に意識していないかと思いますが、 ようは「左脳で解釈しながら読むより、右脳で感じる」的なものを? >半分、人間目線だなと思うところがあります。 これはその通りだろうと思います。 作中主人公はやや自己中心的に「俺だけの海!」などと妄想してる節はあります。 >ありがとう、さようなら。 >じゃ、食べられちゃったのかな。 肉体的なものなのか精神的なものなのか、ある種の死もしくは懺悔、といったイメージがあったのだと思います。 などと自分の書いたものを「たぶんこんな感じなんだろう」と解釈してるような状態ですが・・・ しかしながら読者を置いてけぼりではしょうがないので、もっと説明的にするべきかとも反省しております。
0●鈴木 海飛さん アポトーシスですか、それもそうかも・・・ 作中主人公がどうのこうの言っても、結局書いている「自分」の中でそんな潜在的なイメージでもあったのか? などと考えるとまた面白いです。 >それはタコは「目」の神様らしいですよ。 >周囲360度近くみれる目は >とても目が良いように感じますね ほんとに神様みたいですね・・・ 出来れば多面的なものを書きたいと思っておりますが、 蛸の詩が書きたくなってくる! >私の右脳に響いた感触を >にゅるにゅるとのべさせてもらいました。 鈴木 海飛さんの右脳を覗き見るような感覚にもなりました。 人の右脳は面白い!ありがとうございました。 ●仲程さん 少しでも良いと思って頂けた部分があってよかったです! この詩は色々削ったり付けたしたりしながらも、最後の三行がずっと残していた部分なので少しほっとしました。 ありがとうございました。
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