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背高泡立草の色彩と古郷の影
背高泡立草の群生が原っぱを黄色に染め上げている。原っぱは黄色で充満している。 ここ十年、秋でも初冬でも生温い風が吹いている。生温い風に飛散する黄色は、涼風に吹かれていた頃とは印象がかけ離れている。 それは黄色い悪夢だ むせ返る程の悪夢だ 肌に張り付く悪夢だ 小さな私が慎重に呼吸をしてくぐりぬけた、あの、輝く原っぱとは別のものだ。 なんと暴力的な黄色 なんて品性なき黄色 なんの情もない黄色 かつては秋風に美しく波打っていたというのに。なぜ背高泡立草の群は演出を変えてしまったのだろう。それとも観客の感性が鈍ったのか。観客を喪った年月が長すぎたのか。 ただひたすらと黄色 べったりとした黄色 知性を持たない黄色 ガサツが過ぎる黄色 乱雑で粗暴な生命力の誇示 つと、太陽が山際に向かい、黄色の群れを西から照らした。 影になった黄色 朱をのせた黄色 金を纏った黄色 淡光を放つ黄色 輝く黄金色のグラデーション 日差しはじきに消えるだろう。風も少しだけ温度を下げた。 陽が落ちて、山の端が夕暮れの余韻を残す、僅かな刻。背高泡立草の群れは、かつてとはまた違った叙情を体現するだろうか。 無邪気な私の影を見つけるために、あと少し。私はお前たちの美しい刻を待とう。
背高泡立草の色彩と古郷の影 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1293.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2019-05-20
コメント日時 2019-05-21
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 10 | 10 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.3 | 1 |
前衛性 | 0.3 | 0 |
可読性 | 0.7 | 0 |
エンタメ | 0.3 | 0 |
技巧 | 0.3 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.3 | 0 |
総合 | 3.3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
美しい景色のようにも思えるのですが、作中話者の中では暴力的なものにもなったりするのが面白いです。 『ここ十年』とあるので、環境的にも変わってしまったのかな?とも思いましたが、 それよりも見る側の心情や変化?により色々な見えかたになる、ということのほうがポイントなのかもしれませんね。 詩も、そういうものかもしれませんしこの詩もまた、見る人によって色んな景色に見えるのでしょうか? 詩や美をどこに見出すのでしょうか?そんなことも考えたりしました。
0tOiLeTさん、 早々のコメントありがとうございます。とっても嬉しいです! おっしゃる通り、見る側の心情として、故郷の変化を受け入れがたい、そんな気持ちで書きました。 ただ、読み手のことを考えて、具体的にしないことにしました。 作品は、公開したら、読んでいただいた人のもので、どんな読み方もアリだと思っています。 とはいえ、私のイメージとかけ離れた場合、それは私の力不足なわけで・・・。 >詩や美をどこに見出すのでしょうか? 詩や美について知識も学んだこともなく、深く考えられた試しがないので、 私の場合は感じるままに書いたり読んだりするだけで、いわゆるボンクラでございます。 が、ここには美しい心象風景や言葉を書く人が沢山いらっしゃって、ため息をついてばかりです。 初めての投稿でドキドキしていました。 コメントをつけていただけたこと、再度深く感謝します。ありがとうございました。
0黄色の華やかさと暴力的という対比みたいなものがなにか読者が興味をそそられるような ものになっていてうまいなって思いました! 自分に正直になれないみたいな感じが 表されているのかなって思いました(違ってたらスイマセン、、
0ひのさん、ありがとうございます。 お褒めの言葉をおかずに、ご飯が三杯食べられそうです。 正直になれないというか、受け入れ難いというか・・・。はい、違ってません。 震災詩だったのですが、普遍的なものにしようとして、分かりにくくなってしまったかしら、 いやいや、出したら読み手のものだし・・・などと迷っているところです。 何より、コメントをいただけたことは、最上の喜びです。ありがとうございます。
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