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トワイライトアテンダント
がっちりと握りしめた飛行機で、 オトモダチをひっぱたきまくってたユーくんが、 来月、ケーちゃんと結婚するらしい。 塩化ビニル製の窓の塗装は いつごろかすれたのか、 誰一人として 顔を覗かせることなんて なかったんだけれど、 ぜったいに、 墜落しなかった。 当時、 等しくやわらかだった はずのてのひらを、 こうして目の前の陽にかざしてみると、 都合よく飛行機曇が、 まあ、走っているわけもなく どこだかわからん方向で、 クソみたいなヘリが、 バリバリとそらを引き裂いていた。 ケーちゃんと俺は、 学生のころの一時期付き合ってたんたけど。 だからなんだってのか 「あのころ」がキリなく、 坂を転がっていく。 のを、 目で追っている。 そして、 バイトで乗りまわしていたジャイロエックスが、 めのまえを都合よく、 なんて、 やっぱ走り抜けてはいかないんだけれど、 こんど同窓会で会うとき、 人妻にアップデートされたケーちゃんと、 わんちゃんあったりしないかな。 仕事帰りに、 むかし好きだった ナイススティックとかいう ふざけた名前の菓子パンを買った。 すげー長くて、 すげー甘くて、 相応にカロリーがやばい バカみたいなパンだ。 そういやユーくん こいつを袋のまま構えて、 野球のマネごとをしていたな。 あいつバカだったから。 フルスイングして、 袋んなかでクリームぶっちゃかして コンドームみたいじゃねっつて めっちゃ笑ってた。 すげーバカ。 でも、 俺もバカだったし、 それ見て笑ってた。 つか俺、 ケーちゃんとするとき コンドーム一回もつけなかったな。 理由とかないけど、 そもそも、 いまさらなにを。 ほんと、 なにを、覚えてるってんだ。 まぶたを閉じると、 それなりに都合いい思い出ばっか、 駆けてくんだけど てかやっぱ、 こんなもんの都合がよくても、 どーなるわけでもないし。 夕暮れの空の、 すげー遠いところに ぽっかりと雲が浮かんでて 子供のころ、 あれ見るともう 泣きそうになっちゃって だってなんか、 その雲の下の知らん街まで 瞬間移動させられるような気がして、 したら俺きっと、 なにもかもわからないもんだから ただただそこにつっ立ってるしかないのに、 その街の人たちはその街の人たちで、 なんも知らんもんだから、 かわらず普通にうごき続けてて、 それがどうしても怖くて、 仕方がなかった。 てか、いまはもう大人になってんだし、 どうだって、 帰ってこれるはずなんだけど、 かわらず不安で、 かわらず悲しくて、 あんなもん、 見つけなきゃよかった。
トワイライトアテンダント ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2420.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 200
作成日時 2019-04-13
コメント日時 2019-04-30
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 161 | 19 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 12 | 8 |
エンタメ | 7 | 3 |
技巧 | 14 | 11 |
音韻 | 1 | 0 |
構成 | 5 | 4 |
総合ポイント | 200 | 45 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 17.9 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1.3 | 1 |
エンタメ | 0.8 | 1 |
技巧 | 1.6 | 1 |
音韻 | 0.1 | 0 |
構成 | 0.6 | 0 |
総合 | 22.2 | 10 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
拝見しました。 これは記憶に残る良作と感じました。 まず最高なのは、トワイライトアテンダントというタイトルのかっこよさ。 そこそこ長い作品ながら、それを思わせないのは文章能力の素晴らしさにあります。 アテンダントというタイトルの通り、飛行機を中心に据えながら作品を展開しています。軸がしっかりしているため作品がまとまっていると思いました。 ナイススティックのくだりがめちゃくちゃ面白いです。 比較的ありふれた内容ながら、情景がくっきり浮かぶように考えて作られていることや一つ一つの場面にしっかり魅力を与えていることで、本作を記憶に残る良作まで押し上げていると考えます。 後半はトワイライトの色を出していくことで、切なく後味よく終わらせることにも成功しています。作品の構成力が流石です。とても楽しく読ませて頂きました。
0あ、ごめんなさい。レス反映されてなかった。ビーレビはたまにこれが起こるので、いつもバックアップ取ってから投稿してたんですが、今回はさっぱり忘れちゃってました。 >沙一 さん ありがとうございます! ゼンメツとかいうやつは空っぽ人間なので、作品毎に自分の代わりに創作上の作中話者を立てるわけなんですね。それで書きはじめるとイタコモードみたいな状態になって、自然とそいつ(作中話者)の呼吸が文体になる。みたいな感じで書いてます。いや、もしかしたら他のみなさんもそうやって書いているのかもしれませんが僕はよく知らないのです。実際どうなんですかねみなさんは。もしかして、詩を書いてるやつらが一堂に会すると「無言の恐山」的な雰囲気や「圧」とかが、一帯に漂いはじめるのですかね。怖い。 >ふじりゅう さん ありがとうございます! 僕って褒められるのが下手くそなので、とてもとても嬉しいんですけどそれだけは上手く言葉にできないんですよね。きっと生涯思春期なんです。だからこういうのばっか書いちゃうのかもしれません。 構成といえば、ここだけの話、実は、飛行機とナイススティックって形が似てるんですよ…… ええ。いいこと知っちゃいましたね。僕が子供の頃なんかは「JALが口に吸い込まれていくぜ」とか、一旦開いて「今日のクリームの乗客率は70パーセントくらいか」とか考えてました。そのへん更にピックして、対比で主人公は「空っぽの手」をキュッと握る(なにも掴めない)的なこととかも考えたんですけど、いろんな意味で鬱陶しかったのでやめました。
0面白かったです。 ナイススティックよく食べていました。 日常の心の動きが縦横無尽に空から街まで飛んでいくのを言葉にできるのは、この世に詩人だけじゃないかなと思いました。
0はじめまして。 「ケーちゃんとするとき」のあたりで、どきっとするような、同時に何か涙が出てくるような感じがしました。 何故でしょう? それまでのナイススティックのくだりなども、生きたんでしょうか。 ユーモアとか切なさとか、自然に織り込まれてていいなぁと思いました。
0こういう作品を読むと、切ない、ではなくて、むなしい、になってしまう自分が少し悲しいです。きっとそれ相応の経験を経た人は、心地いい切なさを楽しむんだろうな、と思いました。
0>鹿又 夏実 さん ありがとうございます! あ、あなたもあのナイススティックフリークでしたか! そう、あの、昔は88円とかいう究極無限末広がりで永劫未来まで約束されしオーラを発してたくせにけっきょく価格崩壊したあのナイススティックを! >日常の心の動きが縦横無尽に空から街まで飛んでいくのを言葉にできるのは、この世に詩人だけじゃないかなと思いました。 わかる気がします。僕は詩人のことを「視点の翻訳者」だと思っていて、その人にしかうつせない世界を言語化しようとすれば、それがその人にしか紡げない言葉になるのだと思っています。 >tOiLeT さん ありがとうございます! いやーまったくその通りです。僕は技巧派なので。と言うのも、いや嘘ではないのですが、どうしたってやはり、詩はテキストだけでは成立せず、読み手と交わってそこではじめて完成するものなのでした。ですのでなにかを見出すことができたのは、tOiLeTさんの積み重ねてきた時間と、そうして育まれた感受性に依るものなのだと思います。きっとそいつがめちゃくちゃ素敵な層を形成しているのでしょう。メサの大地みたいな。 >IHクッキングヒーター(2.5kW) ありがとうございます! 僕はどういうわけだか「もやもや」した作品ばかり書きまくってしまうのですが、詩作の際のこだわりどころというのが「どういう気分になってほしい」ではなくて、「ただただ純粋に表現し切りたい」なので、それこそ「なんか読んでイヤな気持ちになりました……」とか言われても「やーへへへ成功しちゃったなー」と思っちゃうんですよね。ですので個人的に「むなしい」はとても嬉しい感想です。文字にするとなんか嫌なやつですね。人間の負の感情を集める妖怪みたいな。
0>IHクッキングヒーター(2.5kW) さん 申し訳ありません。名前をコピペしたあと「さん」を付けるのを忘れてしまいました。僕というやつはまったくもって「デコ助野郎」です。
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