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歓喜の歌
馬鹿な歌手が歌う。戦争を知らない子供たち。悲惨さを知らない若い世代。痛みを知らないゆとり共。テメェこそが世間知らずなんじゃねぇかと、顔面をぶん殴りたくなる。 なぁ、クソアーティスト様よ、そんな能天気で偽善的な拝金主義的なクソ極まりない曲を歌う前に、便器に顔を突っ込まれ、窒息寸前の俺を助けてくれ。 腕力。群れて暴力を振るうことしか能の無いゴキブリ共。これが捕虜に対する拷問とどう違うって言うんだ?まぁ決定的な違いがあるっちゃあるか。間抜けな捕虜どもは情報を吐く価値のあるが有る為に生かされてるが、俺が吐くのは胃液だけだって訳だ。最高に笑えるだろう。 クソアーティスト様よ。てめぇのゲロが詰まった便器の中に顔をぶち込まれ、リンチされるこの俺に、痛みを知らないなんてよく言えたもんだな! 何故俺がこうなったか知りてぇか?クソ笑えるぜ。もったいぶらず答えを教えてやる。俺にも分からねぇんだ。ハハッ、笑えるだろ。 正しく生きてきたつもりだぜ、親の言うことを聞き、真面目に勉強した。教室で苛められてるやつがいたら率先して止めに入ったさ。俺は間違っていたのか?勉強する奴は馬鹿で、人助けは悪か?おいクソアーティスト様よ、ご高説を垂れる前に、音楽で世界を変える前によ、頼むから俺一人助けてくれ。 教室。体操着に着替えた俺をクソどもが嘲笑する。クラスメイトは見て見ぬふりの偽善者共で、俺が虐めから救った奴ですら、俯きこっちを見ようともしない。教師が入って来る。俺を一瞥し何事もなっか様に、スムーズに授業を始める。 定理、命題、証明。公式に暴かれる事実。定理の中、解は唯一だ。美しき世界。雑多に見える数字の羅列は、確かな理論の下、それぞれの枝葉が集約し、やがて一つの確かな絶対となる。セオリーのハーモニー。まるでそれはシンフォニーだ。 黒板を見つめる俺に投げつけられるゴミ。低能なやつら。概念を理解できないゴミ。衝動のみに生きるカス共は、この世の何に役に立つ?思考しない動物は調教が必要だ。なぁおいそう思うだろ? クソアーティスト様よ、俺はあんたの曲で毎日のように聞いてるのがあるんだ。インディーズで出した、ルートヴィヒの超有名曲を引用したあれだよ。 クラシック好きの少年は数学の天才で、だがそれ故に苛めれてるんだ。だれにも理解されず、ただ数学の問題を解く。彼にとってはそれが至福の時間なんだ。凡人共はそんな彼を変人と笑い、徹底的に虐め、彼は不登校になる。家は貧しく、彼は仕方がなく働きに出る。 町工場のブルーカラー。全うな環境ならば学者になっていただろう彼は、彼を苛めた奴らを憎む。そして復讐を誓い、何時でもそのそれを果たせるよう、毎日ポケットにナイフを忍ばせ生きるんだ。 大晦日の夜、彼は街で偶然に虐めの主犯格に出会う。卒業してから何年経っていたかは語られていないが、主犯格は子供を抱き歩いている。そして彼に気付く。彼はポケットをまさぐる。主犯格が小走りで近づいてくる。 そして、そして主犯格は彼に謝るんだ。彼はナイフを握りしめながらも呆然とし、主犯格の後悔の言葉を聞き続ける。どこからともなくルートヴィヒ流れる。彼が苛められていた時に毎日聞いていた曲。主犯格は涙を浮かべ、彼に許しを請う。彼は何も出来なかった。復讐は果たされなかったのだ。 彼は無言でその場を立ち去り、町工場へと向かう。ルートヴィヒはまだ聞こえていた。ナイフを排水溝に投げ捨て、油臭い工場へと向かう。目的を失い、自分が間違っていたのかと自問自答しながら、彼は死に向かうんだ。 なぁクソアーティスト様よ。これはあんた自身のことを歌った曲なんだろ?インタビューで言ってたもんな、好きなものは数学とクラシックで学生時代は苛めれてたってさ。それじゃあなんで、この曲で彼に復讐を果たさせてやらなかったんだ。これじゃまるで、チープなスタンリーじゃねぇか。メジャーにいき、ラブアンドピースを歌う、商業主義者になっちまったあんたに聞いても無駄かもしれないが。この曲はあんたの、そして俺自身の人生に違いないんだ。だが、あんたと俺の決定的な違いは、俺は正義を成すってことだ。 見てくれよこの日本刀、すげぇだろ?くそジジイの実家からパクってきたんだ。なんでこんなもんがあるか知らねぇし知りたくもねぇが、本物だぜ昨日五月蠅く吠える犬をぶった切ってやったからな。俺はこれで正義を成す。低能なやつらを黙らせてやるんだ。皆だってその方が良いはずだぜ?これからは静かに授業を受けられるんだからな。あぁ今日はいい夢を見られそうだ。 通学路。混乱した馬鹿な学生共。俺が貴様らに学生の本分を思い出させてやる。俺たちは学ぶ為に学校に通っているんだ。決して誰かを傷つけ馬鹿にし、未来を潰すなんてことがあってはならない。行くぜルートヴィヒ、導かれる解は一つだ! 気が付くと目の前に真っ赤なカーペットが敷かれていた。俺は革新的なただ一つの解に辿り着いたんだ。赤いライトを点滅させた車がこちらへ向かってくる。フラッシュとマイクを向ける記者たち。権威者となった俺は彼らに取り囲まれる。 あぁクソアーティストー様よ、ついに俺も有名人の仲間入りってわけだ。いつか共演することがあるかもな。その時は歌ってくれよ、俺の大好きなあの曲をさ。
歓喜の歌 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 932.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-05-14
コメント日時 2017-05-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これは良いなと思いました。 全体に、クラシカルな雰囲気。ゴスロリなムード(ちょっと世界文学全集に出てくるような文体だなぁと、初読したときに感じましたが・・・)でまとめてあるにも関わらず、書かれている内容は、ものすごく現代の日本的でしかも私的な体験なんですね。 だけどじゃあ、そこで作者が出している結論は、けしてやけくそでも耽美的でもなくて、(なんか教養が貧困ですみません、単語がヘンかも知れない。勉強不足です、)すごくなんだろう。古典的なんですね。 正義を成すということは、即ちそれで出世することでもあるけれども人間としては死んでゆくこと。くそアーティストの仲間入りをすることなんだと。(読解、間違っていたらすみません。) なんだか、「白い巨塔」の財前五郎とか、「赤と黒」のジュリアン・ソレルをふと想起しました。
0今回のジョバンニさんは、始まりから爆走してきたなあっと思いました。最後まで息切れしていない。1970年前後の喧騒がなぜだかみえました。ジョバンニさん、毎度投稿有難う御座います。
0勢い、疾走感、言葉をボンボン投げつけて来る感じ、どれも面白いと思うのですが、同時に「まぁ決定的な違いがあるっちゃあるか。」こういったところで、その流れを引き留められてしまうような印象を受ける。そういう(乱暴な言い方をすれば)無駄な内省(自問自答している暇があったら、言葉を投げ出せ!という・・・そこで止まってるんじゃねえよ!!という感じ、かな・・・・)を、もっとカットできるのではないか、そうすると凝縮感を持たせながら、疾走感も維持できるのではないか、と思いました。 後半(最後のオチの部分)、「通学路」の連の、妙な優等生っぽい部分はなんだ?(息切れしたのか、それとも急に周囲の眼が気になったのか)とか、最後の二連の夢オチ的な安易さはなんだ?とか・・・最後の三連、ためしにカットしてみるとどうかな(というより、その前の連を、~低能なやつらを黙らせてやる、ここでぶち切りした方が、怒りのエネルギーが一気に会報されてよかったのではないか、などと思いました。)全体に言葉が多すぎる、印象はあります。
0一線を越えてしまった方のうた、ですね。日々膨大な情報に晒さられている現代人にとって、私などはインプットを少量に絞っていないと生きづらい感、があるのですが、それというのも、情報の不確かさを背景としてあると思うのですね。 何でこういうことを書くかというと、不確かさにどっぷり浸って生きていると、絶対的な事象や存在にタッチした瞬間、人は思考停止に陥ってしまう、というか、一旦思考停止に陥ってから、妄想というか、それは妄想ではないかも知れないけれど、曲解みたいなものが入って、極端な行動に出てしまう。本当は自家薬籠というか、ズブズブ悩みつづけることが正解かも知れないけれど、人ってそんなズブズブ悩み続けるほど、強くないじゃないですか。 その弱さに気づけないと、大変な方向へ舵を切ってしまうよ、というモロに示唆的な、教訓めいた語りだと思うのですけれど、ジョバンニさん、という筆名の通り、どこか宮沢賢治的な作品としてもっていかれた。まる。
0返信遅くなりましたが、皆様コメント有難う御座いました。 見返すと結構誤字等有り申し訳ないです。 ハッキリと影響を受けた作品(曲と映画)があるのですがそれは伏せます。 解釈の正否を作者が書いてしまうのはあまりよく無いと思っているのでコメントは控えますが、本作品以外も然り、私の意図した事と伝わり方・皆様の解釈が大きく異なっている事が面白いですね。これこそ批評の醍醐味だと思います。
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