ペンギンキッズ - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

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ペンギンキッズ    

私が生まれながらに記号として与えられた性別が何であろうが、どこの誰の元に生まれていようが、それは私の人生に何の影響も与えなかったと思いたい。子どもが、きゃあきゃあと静かに騒ぐ水族館で、手を繋ぐ一対になることも、もはや知らないもの同士としてすべて投げ出すこともできずに私達は途方にくれている。 夜、と水族館はよく似ていて、それは誰も所詮はどこかに閉じ込められていなければならない存在であるということをよく示している。そして朝は茫漠たる海に似ていて、心象風景として現れるその海としての朝に、日々入水していくしかないのだろう。結局私とあなたの間にあるものがそのような人生観の連帯であり、それを愛と呼ぶのなら、私は胸がとても苦しくなるのだ。 あなたがみずうみに投げた石、その日あなたはついに家を飛び出してきた。私は羨ましかった。あなたが家を抜け出せたことでもなく、自由になれたことでもなく、あなたのその行動に心底傷つけられたであろう、あなたのたった一人の身内が、見ているだけで寄る辺ない気持ちになるほど一人で立っている、南極のペンギンみたいなあなたをこの世に産み落とすことが出来たこと。あなたを産むこと、それは私があなたに出来ない唯一のことだったから。


ペンギンキッズ ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 1144.7
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 4

作成日時 2019-03-11
コメント日時 2019-03-13
項目全期間(2025/04/24現在)投稿後10日間
叙情性33
前衛性00
可読性11
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント44
 平均値  中央値 
叙情性1.51.5
前衛性00
可読性0.50.5
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合22
閲覧指数:1144.7
2025/04/24 05時39分38秒現在
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※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

ペンギンキッズ コメントセクション

コメント数(2)
三浦果実
(2019-03-11)

「さびしい」という主題を持ち出せば前作の幽霊の方が明らかに表現されていて、読後に残る感触が強くありましたが、なぜかその感想を書くことがためらわれました。本作ペンギンキッズでは、他者の喪失ではなくて、他者との差異、断絶を示しながらも止められない愛おしい心情がさびしさとして伝わって来る。さびしいというのは誤用かもしれません。孤高というのかもしれません。いや、孤高と表すると省かれてしまう邪悪なものがあります。それは、とても難解でありながら、惹かれるところです。 >あなたがみずうみに投げた石、その日あな >たはついに家を飛び出してきた。私は羨ま >しかった。あなたが家を抜け出せたことで >もなく、自由になれたことでもなく、あな >たのその行動に心底傷つけられたであろ >う、あなたのたった一人の身内が、見てい >るだけで寄る辺ない気持ちになるほど一人 >で立っている、南極のペンギンみたいなあ >なたをこの世に産み落とすことが出来たこ >と。あなたを産むこと、それは私があなた >に出来ない唯一のことだったから。 「私」と「あなた」と「たった一人の身内」の関係性が混乱していながらも、「私」である話者が語り残す感触が明らかで強くもある。それは綺麗でもないし汚い憎悪でもない。でも綺麗で邪悪さを孕む語りにも思えるのです。まったく頓珍漢な言ですが、この情愛の念が私はわかります。いや、なんというか、これを読んで、これだ!って思いました。

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鬱海
(2019-03-13)

みうらさま コメントありがとうございます。 >それは綺麗でもないし汚い憎悪でもない。でも綺麗で邪悪さを孕む語りにも思えるのです。 これを書いたときは、どこまで自分たちの存在以外を排除した関係に迫れるかということを考えていました。(結局はいつものかんじになってしまいましたが。)ですので邪悪さは大いに孕んでいると思います。 「幽霊」にも触れてくださって感謝です。いつも丁寧なコメントをありがとうございます。みうらさんがくださる わかる の言葉、いつも嬉しく思っています。

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投稿作品数: 1