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蛍火の河
濁った石を 手の中に隠したまま 僕は立ち止まる あまりにお粗末な終奏に 行き止まりを告げられたから 振り帰った先には 無謀な戦と無駄な汗が 足跡を作っていた いまだ乾かない 小さな水溜りを踏んで ぼとぼと歩き 重たい足取りで 交互に踏み出す度に 青春の光と影の欠片たちが 音色を奏でるけれど 感じていたはずの音が 感じられなくて 確かめたくて 走り出す 走り出す 懐かしい遠い空が 近づく 置き去りにしてきた約束の場所 蛍火の河は 見捨てずに待っていてくれた けれど 蛍火の河が 自慢げに見せつけてくる 憧れを詰めた宝箱は 箱の中で 今日も誰かに 愛を歌い 正義を描き 勇気を与えていた 人気者の石は 僕にはもう 冷めた蛍火 色褪せててしまった夢の跡 そんなはず無いのに そう感じてしまって 悔しくて 悔しくて 握ったまま 腕を鞭のようにしならせ 思い切り手放した瞬間 威勢良く 水を切って 蛍火の河を 初恋の感覚が飛び跳ねる
蛍火の河 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 878.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-05-09
コメント日時 2017-05-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
初めまして。 詩を書き始めて間もなく拙い部分も多々あったと思いますが、お読み頂き、コメントくださりありがとうございます。 石と蛍火の交錯という考察、面白いですね。その曲は知りませんでしたが、思い出補正という感じですかね。そういうのは確かにあると思います。 作者としては本作は「原点回帰する創作意欲」をテーマに書いていました。最後の文では『創作の目的が自己承認欲を満たすだけになってしまった者が、その石(意志)を手放すことでもっと純粋に創作を楽しんでいた昔に戻れる』という意味を一応、表現したつもりでした。なのでその考察ほど深くを描けていませんね。 良い勉強になりました! ありがとうございました!
0濁った石を 手の中に隠したまま 僕は立ち止まる あまりにお粗末な終奏に 行き止まりを告げられたから 一行目の立ち上がりがとても新鮮なのですが、二行目で進行が止められてしまう(早々と自省してしまう、からなのかな・・・読者に理由を考えさせる方が、先に進んで行く動力になりますよね・・・)二行目飛ばして、二連目に持って行く、とか・・・最後も、「初恋の感覚が飛び跳ねる」面白いと思いました。「初恋が飛び跳ねていく」みたいにした方が、もっと印象に強く残るかもしれません。初恋の感覚、と説明してしまっている感じがあって、興がそがれるかな、と・・・。 人への恋でも、物や詩や夢への恋でも、両方ありますよね。蛍石のイメージがうつくしいですね。
0「あまりにお粗末な終奏に 行き止まりを告げられたから」と、何かを終わりが最初にあって、そこから詩が展開されていることを前提として読む必要があるのでしょう。そして、その終わりによって、僕は立ち止まっており、その終わりとは一体何であるのか。 そこで、僕は終わり以前の様子を眺めるのですが、終わり以前を眺める時制は終わってしまった今であるので、振り帰り、そこに足跡があるわけです。それでも、僕は「重たい足取りで 交互に踏み出す」のですが、どこに向かって歩き出しているのか、それはきっと終わり以前の過去に向かってです。ただ、「感じていたはずの音が 感じられなくて/確かめたくて」と今は姿を変えてしまった過去の様子が示されています。 そして、辿り着く「置き去りにしてきた約束の場所」が「蛍火の河」なのでしょう。一見、「蛍火の河」の正体が何であるか、読者が辿り着けるかはわかりませんが、きっと、僕にとって過去の大事な場所あるように思えます。 「見捨てずに待っていてくれた」ので、僕は無事に辿り着くのですが、そこにある箱の中の「人気者の石」が「僕にはもう 冷めた蛍火」になってしまっています。 「そんなはず無いのに」と僕の強い欲望が表れていますが、それを否定するだけの力はなく、「そう感じてしまって 悔しくて 悔しくて」というのが僕の思いを非常に強く感じさせられるフレーズです。 そして、そう思った僕が起こした行動は「握ったまま」であった何かを蛍火の河に向かって「思い切り手放し」て、それが「威勢良く 水を切って」いきます。では、この蛍火の河に何を投げ入れたのか、それは冒頭にあった「濁った石」でしょう。その「濁った石」を河に水切りをするように投げ入れたことで、最後の行が生まれるわけです。つまり、「濁った石」とは「初恋の感覚」であるということ。そして、何より大事なのは、その「初恋の感覚」を「思い切り手放した」ということでしょう。それと同時に、それが今や色褪せてしまった「人気者の石」でもあったのでしょうか。 きっと蛍火の河と言うのは、僕が過去に抱いていた大事にしてきた思いの集積場なのでしょう。大事な物であっても、手放さなければならないものはあり、その大事さが僅かな火を灯す蛍火となっていて、いつでも僕を待っている。そして、手放さずに過去から現在まで握ったままでいた「濁った石」は、なかなか手放せなかった本当に大事なものであって、それを終に手放す勇気を持てたこの僕の行為に感銘を受けました。
0心象風景が描かれている、その風景は無論、蛍火の河なのだけれども、初連に立ち止まりと行き止まりとある為、その河の奥行が遮られた一読目。『懐かしい遠い空が 近づく 置き去りにしてきた約束の場所』に僕の触覚が止まった二読目。パースペクティブな風景が現れた。 『~思い切り手放した瞬間 威勢良く 水を切って』 この一節で、断絶感があった風景が一挙に広がった感があり、最後に、初恋の感覚が飛び跳ねる。初恋の感覚とは、息が詰まりそうな自身の内なるものと、叶えられない外界があることを知り、そこで発光する仄暗いもの、なのかもしれない。 平畑さん、投稿有難う御座います。
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