距離 - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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距離    

今日は 君が三十分寝坊をした  悲しいことが なにもない  苦しいことも ほんの  今日の割り当ての分だけしかない   あの日から今日までの間に   空がほんの 一メートルだけ遠くなったので   僕は僕より ほんの少し遠くにいる   僕は君の隣にいる僕より 一メートル遠くにいる  誰かの硬いゴムボールが  山と山の間で下手くそに投げられあい  君が投げそこね 子供の僕はとりそこねる  僕は投げそこね 子供の君がとりそこねる 僕は三年前の僕より 二キログラムだけ 体重を減らした その分だけ 目が悪くなり 服には少し シワが寄った  だけど病は僕を冒さない  母の死さえも  僕の心は  病気のように晴れやかだ 空では雲が偶然を装う 僕は一人でいるとき詩人だから そのとき雲の考えも手に取るようにわかる   雲は悪童のようにふるまっている   雲は人と同じくらい清らかである 最近 おもうことがある 僕の死さえも きっと僕の生を冒さないだろうと 僕の前から生活が消え失せたときにもまだ 僕はきっと今のように 生きているように死んでいる筈だろう  僕は僕自身の問いかけに  うまく応えることができなかった  僕は僕自身と  あまり親しくなかったから  でも親しい君に問われたら  うまく応えられたとおもう  君が僕に尋ねたならば  「僕らは生きてきてよかった」と  偽りなしに言えたと思う 生きてきてよかったと言えたと思う 生きていればいつかかならず 港町をながれる 透明な風に合流できるから いつかかならず風になって 世界にさわる優しさを知る


距離 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 3
P V 数 : 872.8
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 4

作成日時 2017-05-09
コメント日時 2017-05-11
項目全期間(2025/04/16現在)投稿後10日間
叙情性10
前衛性00
可読性00
エンタメ10
技巧00
音韻10
構成10
総合ポイント40
 平均値  中央値 
叙情性11
前衛性00
可読性00
 エンタメ11
技巧00
音韻11
構成11
総合44
閲覧指数:872.8
2025/04/16 08時55分00秒現在
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    作品に書かれた推薦文

距離 コメントセクション

コメント数(3)
朝顔
(2017-05-11)

私は霜田詩のファンでして。それは、自分には絶対書けない世界=哲学を書かれているからだと思います。 ・・・若い方(推定、)の詩はいずれもみずみずしい。言葉の使い方もあたらしい。 で、もうコメントすることないなぁと諦観してしまうこともあるのですが、 この詩における作者は、もうかなり人生の曲がり角を越えていらっしゃる(失礼、)のではないでしょうか。 しかしながら、 迷いつつ、「生きているように死んでいる」と書かれながらも、 「君が僕に尋ねたならば/ 「僕らは生きてきてよかった」と/ 偽りなしに言えたと思う」 この連にすべてが集約されている気がします。 いくつになっても、詩人は悩み怯えながら希望を持ち、書きながら生きているのだということを、 教えて頂いている気がします。

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まりも
(2017-05-11)

あの日って、いつだろう・・・震災とか、親しい人を失った日とか・・・魂が死んでしまうような、そんな衝撃を受けた日。 君、とは誰なのか、僕自身、なのか・・・僕という肉体はまだ寝ていて、幽体離脱のように僕の意識だけが抜け出していて、世界を見つめている感覚でした。君、という存在の稀薄感のゆえかもしれません。 「苦しいことも ほんの/今日の割り当ての分だけしかない」とか 「僕は僕より ほんの少し遠くにいる/僕は君の隣にいる僕より 一メートル遠くにいる」 「君が投げそこね 子供の僕はとりそこねる/僕は投げそこね 子供の君がとりそこねる」 というような言い換えが、散文では絶対に言えない部分だなあ、と思います。 君、は、普通の読み方をすれば恋人なんだろうな、と思いつつ・・・詩なのかもしれないな、と思ったり・・・。 矛盾や葛藤を、そのまま併存させてしまう、そんな言葉の力を感じるのが詩の楽しみの一つで・・・この詩は、そんな「ありえないけどありえる」情景を、静かに歌っているところが素敵だと思いました。

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霜田明
(2017-05-11)

おふたかたのコメントがほんとうにうれしいです。 この詩は詩というよりポエムじゃないかなと思っていたから もう一生コメントがつかないかなと思っていた… そろそろ人生の半分をすごしたなあということを 誕生日を迎えるたびに思います 多分八十歳の誕生日でも そろそろ人生の半分を過ごしたなあと思う気がします 過去は鮮やかに僕から切り離されていて 現在が目の前にたしかに存在することの鮮やかさと 違う意味あいでの確かさを持っていると思うんです 過去と現在とがどちらも同じくらい重大なものだという意識が 振り返らずに未来へ進んでいっていいことの根拠だと感じます

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