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現況
掘り出された本は、沈黙に応じて光を発していた。 石灰化した表面をていねいに剥がし磨き、封じら れていた声を空に放っていく。 薄くれないの煙状になるときもあれば、黄ばんだ 液体が水中に揺らめき出るように、帯状に立ちの ぼり消えていくときもあった。 空の底にたどりついたら、反響してもどってくる はず、そう言い差したままあの人は消えてしまっ た。受け継いだ水晶のナイフがてのひらにはりつ き、根を張り、からだの一部となって行く。 てのひらを空にかざす。もっと自在に、私の指そ のもののようにナイフをあつかえるようになるま で、幾千回、あの地平から陽が昇るのだろう。 剥がされた切片が、雲母のように煌めいてこぼれ 落ちる。私の周りに広がる、ただ茫漠とつづく白 い砂漠は、私が生み出したものに相違なかった。
現況 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 872.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-05-04
コメント日時 2017-05-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
磨き抜かれた大理石を思わせる詩です。言葉の選び方も丁寧で、表現の細部がこまやかです。題名ですけれども、このくらい抽象的な方が、この詩に相応しいのかどうでしょうか。後。最後の「相違なかった」は、「違いなかった」と言うような口語体だと、やっぱりまずいでしょうか…。 重箱の隅をつつくようなことを申し上げましたが、これは散文詩のお手本のようです。
0コメントありがとうございます。 様々な書き方があると思いますので、手本とか見本と言われるとむしろ恐縮してしまいますが(私なりに目指している方向性、ということで言えば) パッと全体を見渡せる分量、非現実的な設定であっても、つじつまというか、ロジックが連なっていて、意味や情景を負っていける可読性があること、幻想性や神秘性を感じる領域に踏み込みたい、そこで現実の影になっているもの、重なりあっているものを、その重層性のままで表せたら・・・というような、欲望は抱いています(笑)
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