別枠表示
少年
その少年は優しかった。 権力から弱いものを守った。困ってる人々を助けた。悲しんでいる人たちに踊りを披露し笑顔にしたりもした。少年には怖いものは無かった。 少年の周りには、たくさんの仲間がいた。いたというより少年の優しさをみて次第に増えていった。少年は毎日が楽しかった。それは幸せな毎日だった。 少年には好きな子がいた。大好きな子だ。 その子は明るくて元気で見ているだけで心が温まった。まるで太陽のようだった。 ある日少年は、その子に告白しようとした。 だけど、勇気が出なくて言葉に出来なかった。 周りのみんなには優しかった少年は、自分のこととなると臆病だった。 少年は気を病んでしまった。少年に心の闇が出来てしまった。少年は仲間から距離を置くようになってしまった。 それから時がたった。少年は青年になっていた。 その青年は優しかったが、孤独だった。 あの頃いた仲間や皆それぞれの道を歩み、幸せに暮らしていた。 青年はあの日を思い出しては後悔していた。青年は勇気が無かった。 胸の中に何かわからないつっかえを抱き、過去を思い出しては後悔し、現実をみてはため息をついた。 青年は孤独な日々を過ごしていた。 ある日青年は、大人になったあの子に再会した。 あの子は泣いていた。綺麗な顔に涙を流し、ずっと泣いていた。まるで雨雲のようだった。 青年はその子に声をかけようとした。 だけど、勇気が出なくて言葉に出来なかった。 青年は自分のこととなると臆病だった。 臆病だったが、青年は。青年は踊りが得意でその場で披露した。 ずっと泣いてるあの子と、ずっと踊ってる青年。 泣いている、踊ってる、泣く、踊る。 ぐすん、ぐすん。たんたかたん、たんたかたん。 あの子が気づいた。こっちを見た。 ぽかんとしたその表情は少女みたいで可愛かった。 その子はもう泣き止んでいた。クスッと笑った。 青年もクスッと笑った。 「どうしたんだい?」 「それはこっちのセリフ」 「いやあ、あまりに悲しそうなんでつい踊り出してしまったよ」 「クスッ。変わってないね君は。あの頃となんにも」 「そうかなあ。大丈夫?」 「うん。もう大丈夫だよ。心配いらないよ」 「よかった」 「元気でたよ、ありがとね」 いつもより太陽の光が眩しく見えた。 またねといったあとその子は、いつもの日常の中に消えていった。 青年は歩きだした。その子とは違う方向へ。歩き出した。 堂々と歩く後ろ姿は、いつもより大きく見えた。 大きく見えたその青年の後ろ姿は、少年に見えた。 その少年は優しかった。
少年 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1035.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-12-04
コメント日時 2018-12-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
うーむ、綺麗すぎるというか文部省的道徳教材という感想が先に来る。もっと悪くなっていいよ。 まぁただ私は詩壇でも有数の倫理観欠如者を自称しているので私の感覚に合わせたら業界での評価は得られないだろうし、むしろ私と正反対にプラスの評価を下す人の方が多い業界だろうよ。イマラチオ氏(ユーザー名検索で読んでみて)を最初に評価したのもたしか私だし。
0「少年」作者様には書きたい事が有る。読んでてそう思います。書いてある内容は物語詩だなと。そして読み手の中には自分を見失い、見失った事で疲弊しているが人がいます。その方々にとって「少年」がどう映るか考えると、二極化されてしまう。良い悪いが分かれる。私としては、生々しさが無い。の一言で済ませますが、書いときます。作者様は少年(青年)に自分の一部が入ってますか?私の物語詩の作品の登場人物は、主人公は主人公の性格がありますが、私が投影されています。作品として短く纏められないなら、長く書けば良いのです。短く纏めた凝った物語詩は難しいです。そして最後です。子供でも読めます。理想の形成には適しています。ですが、現実を知る私、ないし、同じ境遇の方からすれば、この作品から何を感じるでしょうね?
0