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小銃射撃
引き金を引く 小銃は暴れ叫び出し 連射でありったけの弾丸を 反り返りながら吐き出そうとして 力の限り押さえつけ この時 熱が 命が通う 赤い 所々に 真っ赤に錆 雨 雪 手から背からの汗が 血のように残った 油垂らし 滴り 磨きあげ 鈍く てかる 銃口から刹那に咲き散る火花から 数発混ぜた曳光弾の軌跡が走る 撃ち尽くした内の三発だけが 人の形をした標的に向かう 棒 上下に上下に上下に 銃口に入れ動かす 煤が錆が 棒先の布にこびり付く 黒く赤く 布に 布を変えて また 油垂らして 銃口に 人に当たり 人に刺さり 人に 殻のような薬莢は 雪の中へ沈みゆく 熱い 枯れ落ちた火花の痕跡は 身を焦がす 種ごとき弾丸も熱く 人のような標的に 決して芽吹くことなく 傷跡だけを新たに残した 上下に上下に上下に 棒をなおも動かす 油に濡らした布はぬめり 黒く汚れる 分解した小銃の腔 指を入れ黒い汚れをこそげ取る 油 こそかしこに 汚れ取る まだ落ちない 全弾撃ち尽くし 得点15点 わずかにそれだけで終わる 火傷するような小銃を抱え 何物にもならない熱を持て余し 雪の中立ち去って行く 今はもう冷え 静かだ 起動点検の音だけがする 引き金引いて 正常な空撃ちの音がした 花は咲かない 小銃はきれいだ 鍵をかけ 封印した この手はもう 命を 花を 咲かさない もう目にする事のない 輝く小銃を 後ろに 命通ったかつての体を 後ろに 扉を閉めた
小銃射撃 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2018.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 8
作成日時 2018-11-13
コメント日時 2018-11-14
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 8 | 8 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合 | 8 | 8 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
吹き出す汗の感覚と、〈人の形をした標的〉を狙わねばならない緊張感。 生き物のように暴れる小銃を〈力の限り押さえつけ〉という感覚がリアルです。 火を噴く竜を腕に抱えているような印象。 〈赤い〉という一語で切ったときに広がる、鮮血の幻視。 〈棒〉という一語から、畳みかけていく、無機的な作業の緊迫感。 有事であれば、人の形、人のような、標的ではなく、人を、実際に狙わなければならない。 それも、相手からも銃口を突き付けられながら。 無駄のない文体の進行もよかったです。
0まりもさん、こんにちは。 実は自衛隊時代は対戦車ミサイルを扱っていたので、小銃での連射はほとんど経験がなかったりします。 一発ずつなら普通にやっていたんですが。 ですが昨年、予備自衛官としての訓練で連射での射撃をする機会があり、その経験から書いてみました。 赤い、は小銃も真っ赤に錆びる事があるのと、自分の体の一部のように射撃の一瞬錯覚したのと、感想通り幻視ですね。 棒、は詩にある通り汚れ落とす整備なのですが、汚れが落ちない時は全然落ちないんですよね。延々とやることになります。 そんな事が背景にあります。 無駄をなくして緊迫感を出せたようで、よかったです。
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