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触れ合う *
右の頬を叩かれ 左の頬も叩かれ まったく叩かれてばかりだ 女に叩かれ振られ 男に目つきが悪いと叩かれ ふらふらして肩がぶつかり叩かれ まったく叩かれてばかりの人生だが ぼくだって毎日地球を叩いている 歩いて、走り、たまに密やかに 人知れず踊ってみたりする そうすると地球が叩き返してきて 鼓動は高鳴り、どこまでも飛べそう しかし雨だ、雨が降ってきて 百万回は叩かれて ふらふら 肩がぶつかり叩かれる あぁ、まったく上手く出来ている ひとは大地を耕し、牛馬が草を食む 工場地帯の黒雲はいつか嵐を孕むだろう 生命は叩き叩かれ、どんどんと草木の芽は 息吹いてゆき、密かに交わされる密談が マンホールの蓋を揺らして、ひとが落ちる まったく上手く出来ている ふらふらしてたら だれかにそっ、と抱擁されて鼓動が 打ちあい、心臓の歌が聴こえた 下水道やそこに生きるどぶネズミの糞 街かどでだれかが無造作に咀嚼するパン 死にゆくひとの吐息から 指さきにふっ、と止まる 秋茜のように ちろちろ、萌えて掠れて ひゅるりら、ひゅるりら、流れ 流れ、流れて、雪崩れ、泣かれて 心臓はなる、歌え心臓、耳を地に落とし あまり無造作に地球を 抉らないでくれ、奪わないでくれ 垂直に地球を見下している ぼくらが言うことなのか あぁ、わかっている同罪なんだ なんもしてねぇ、からさ だから、せめて優しく叩いて 叩き返されよう、それは抱擁になるのか? 昔の偉い方が 右の頬を叩かれたら、左の頬を 差し出しなさい、などと言われたので 叩かれてばかりなのである そんなわけでぼくはちぃ、と ばかし馬鹿になってしまい 馬鹿だから、とりあえず悪賢い考えも 浮かばない、人畜無害なやつに なってしまえたら、どんなに幸せだろうか 優しく頬を叩きたい、叩かれたい いつだってそっ、と差し出すのだ
触れ合う * ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1013.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-11-07
コメント日時 2018-11-08
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
叩く、にもいろいろな意味がありますよね。ハグして背中を叩きあったり、赤ん坊をあやす際にも柔らかなタッチをする。また詩の前半のように拒絶としての叩く。触れ合うときに肌で感じる鼓動とか。叩く、は触れ合うことにもつながっていくのだろう、と考えながら描きました。若干、とっ散らかったかもしれませんが楽しんで頂けて嬉しく思います。
0人間同士の関係にとどまらず、物質宇宙はなべて「やって-やられる」「行って-来い」「作用-反作用」の連鎖にはまっておりますな。目には目、歯には歯のこの地上世界こそまさに無間地獄。なればこそ「右の頬はたかれたら、左の頬差し出したったらええやんか」というのはキリストの天才的な飛躍だったわけです。 悲しき人間の性をしっかりと自覚しつつ、それを超越する力を(神か仏か分りませんが何者かから)与えられている人間の良識への信頼が、ユーモアただよう実直な語り口から自ずとにじみ出してきます。薄っぺらなヒューマニズムでもなく苛立たしく傲慢な社会批判でもない、人間性への平明な視線と愛情が静かな感動を呼ぶ作品でした。
0ishimuratoshi58 さま コメントありがとうございます。作用、反作用の連鎖。読みながら、なるほど!と書いた本人が勉強させてもらいました。そうですね。ぼく自身がヒューマニズムなどの言葉を安易に使うべきでなく、あるがままを見つめたいという思いが常にあります。そういう眼差しで詩を描きたいと思っています。
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