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【ワンポイントキュレーション】からだをひらくと口から火花が出た話
クヮン・アイ・ユウさん 「リュウセンケイ」 https://www.breview.org/keijiban/?id=2334 2018.9.19投稿 言葉遊びばかりしていると、人様の詩を読んだときにも、一瞬にして言葉遊び回路がつながるときがあります。この「リュウセンケイ」は、物の見事に回路がつながって、思わず「これめっちゃ好きなやつだ!」と口から火花が出ました。これから書くのは、もう完全に個人の趣味による読解であり、作者の意図的なものはほぼほぼ無視していることを先にお断りしておきます。 出版や印刷関連の業種では、漢字をひらがなにすることを「ひらく」と言います。たとえば「急遽」と表記する際、「『遽』は常用漢字じゃないからうちではひらくんだよ。共同通信の『記者ハンドブック』に倣っているから」などと言って赤を入れます。私は、この「ひらく」という表現が好きです(急きょという表記は嫌いだけれど)。 本作冒頭の〈沈んでいくからだ。〉という文章を見たとき、私は「あ、身体(体)がひらかれているな」と思いました。前述の「身体をひらく=身体をひらがなにする」という意味と同時に、「身体を開く=身体を開放する、委ねる」という意味をも重ねて見ています。さらには、この「からだ」に「空だ」「殻だ」「〜(だ)からだ」などを当てはめても読めるだろうか、と自動的に考えてしまうのが、言葉遊び脳を持つ者の性です。 次の文の文末〈音を知っているか。〉の〈いるか〉という問いかけは、二段落目の頭で華麗にイルカに変身して海へ潜ろうと試みます。けれども最終段落に〈浮き上がるからだ。〉とあるように、どんなに沈みたくても沈めません。なぜならば、空だからだ。 はい、ここで突然ですがクイズです。 逆立ちすると軽くなる生き物ってな〜んだ? イルカは、逆から読むとカルイになるから、軽さとは切っても切れない生き物です。本作の表面上の軽さ(表面上のに傍点)とイルカはとても相性がよいと思われます。けれども、三段落目に〈俺は死にに来たのにな。俺は死にに来たのにな。〉とあるように語り手には、死にたくなるほどの重い何かがあるらしい。見えている軽さと見えない重さ。私はこの落差にポエジーを感じるし、その落差に眩暈を覚えるとき「これ好き!」と騒ぎ出すのです。 そんなわけで、久しぶりに見た瞬間にこれ好きと思える作品に出合えたことに感謝します。
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作品データ
P V 数 : 1049.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2018-10-15
コメント日時 2018-10-15
音を文字で表すときに漢字を使うかひらがなを使うかカタカナを使うかEnglishを使うかroma-jiを使うかエトセトラエトセトラと選択肢がたくさんあるのは日本語話者の特徴でしょう。「ひらく」こともそういった言語だからこそ行われるのであり、それの効果によく着眼した選評だと思った
0渡辺八畳@祝儀敷さんコメントありがとうございます。 渡辺さんから久しぶりにコメントがついて、しかもお褒めの言葉! うれしい。 前に花緒さんが作品で試みていたと思いますが、表記を変えると印象ってガラリと変わりますよね。そこにハマってしまうと言葉遊びの沼もとい海へダイブすることになるのですが。笑。 詩は小説などに比べると短いことが多いですから、一行目から読んでいくというたのしみ方以外にも、見開きページでパッと見てたのしむ、なんていうデザインの要素を取り入れやすいですよね。今だったら最果タヒさんとか、デザインの一部になってもおもしろい詩とかありますし。 デザイン的な作品を書く方法としては、絵文字やアスキーアートなど、それ自体にデザイン性のあるものを援用する方法(足し算的な方法)もありますし、ちょっとした言葉の表記を足がかりにして読者の想像力に頼って全体をデザインすること(引き算、掛け算、割り算的な方法)も可能ではないかと思っています(本作は後者です)。 さて、この読解はあまりにも個人の趣味に偏りすぎているため、先に作品のコメント欄でお披露目し、作者であるクヮンさんによろこんでいただけたのを確認してからこちらへ書きました。 私は、書いたものを読ませる行為って暴力に近い行為だと思っていて。なぜなら読み手は受け取るか拒否するかの二択しかないから。随分と一方的です。 そんなわけで、なるべく読み手のことを考えながら書いてはいるのですが、特に選評を書くときは細心の注意を払っているつもりなのですが! いかんせん思考がバラバラと崩れて寄り道しやすいタイプのため、何か不足等ありましたらご指摘くださいな。
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