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一人合点
マンション五階分 下を走る車のブレーキ音が 私の脳味噌まで届いたものだから、 いや… あの一瞬、名前というものが それ自体は薄い一枚のものらしいと気づいた 私はブレーキが発動する実感を得た ここに置こう ”ブレーキ” 新品のよく切れる刃物で破けば そいつがそいつであったことの緊張を解いて 中身を俺に譲ってくれるのだと 信仰しているから 縦書きのブレーキを 刃の白いカッターで半分に切った あれが超音波というやつか 眉間を割いて脳内の映像へ届くブレーキ音 正体は絶対強固な一本分の繊維なのかもしれない 音の先端がフラッシュ。閃いて 脳味噌に包まれていた私の核 黒い宝玉、オリーブを引っ掛けた 糸くずみたいなブレーキを 尻尾のように引きずって 薄水色の車が停止線を踏んだのを見た。
一人合点 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1019.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-10-06
コメント日時 2018-11-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
実に不思議な展開の作品。 急激なブレーキ音・・・ただ事ではない、事故か?・・・という方向には思考は向かわず、自分の脳内に突き刺さったブレーキの音、さらには、それをブレーキと呼ぶ行為、文字として呼び出す行為、その文字を物理的に切り裂くことによって、脳内に刺さり続けるブレーキ音、その音が喚起するイメージを、どうにか脳内から消し去ろうとする意識の働きを凝視する。 ブレーキ音にトラウマを持つ(過去に大きな事故に遭った。目の前で事故を目撃した)俺、という主人公を設定しているのか。 あるいは、俺が突き進んでいる事態に、ブレーキをかけねばならない(道ならぬ恋とか、叶うはずのない夢の追求とか)と意識していて、それゆえにブレーキ音が脳内から抜けないのか・・・ これほど心を掻き乱すものが、実際には繊維1本分程度の、しかし、絶対強固、な強度を持つものなのか・・・という流れはスッと入ってきましたが、オリーブが核だという、ある種の秘薬は、うまく受け止められませんでした。 ここが気になっています。
0まりもさん、コメントありがとうございます。 本当は思想もストーリーもない、全部感覚の話です。 真実は書いた本人しか分かんないもんですよね。 備忘録的な詩です。 頭の中は物理法則が無い言葉だけの世界、不思議空間じゃないですか。 詩の内容と全く関係ないですが、脳の中にある全ては、名前と、その使い方や特徴だけです。だから例えば、ハサミで送電線を切断出来るし、U字磁石で車を止めることも出来るんです。 話を戻します。 あそこで置かれたブレーキは、現実に変換したらブレーキという文字ではなくて、ドライバーに踏まれたペダルが油で力伝えてパッドがロータを挟んで、音と熱を出してタイヤが止まるっていう事象です。 それが頭の中ではブレーキって名前に変わります。今までそう認識してたから、さっき書いたような流れを実感したとき、なぜかその事に感動して。(感動というと大仰なのですが、知識と現実が繋がったときのあれは極微の興奮がありますよね…)ブレーキの正体を自分の中に変換したら、一本の糸みたいなのかもな、という話です。 オリーブに関しては、その、なんじゃそりゃという話なんですが、あれは私の勘違いです。 昔、脳内にはオリーブって名前のついた場所があるというのをテレビか何かで知ったんですね。で、そのまんまオリーブみたいな部分が脳の中心部分に埋もれてると思ってまして。 調べたら、位置はあってましたけど形は違ってました。 ブレーキ音とか仏壇のお鈴の音聞くとどうもその辺に響いているような感覚があるんですよ。 それだけなんです。 なんじゃそりゃ。
0ブレーキの音が届いたことから、筆者様独特の思索世界へと入っていくのですが、これがなかなかに興味をそそる。こういう角度で物事を見るのか、と発見もあったりします。そういうある種の脱線へと物事が移ったのち、ラストに現実へと帰る。「薄水色の車が停止線を踏んだのを見た」で筆者様独特の思考から抜け出し、読み手も我へと帰る。実に面白いアプローチの詩だと感じました。
0こんばんは。これ、ちょっとわかるような気がします。言葉がボディをもつ瞬間というか、その感覚というか(違ったらすいません)。だから、改めて置く 《“ブレーキ”》のとこ、とても好きです。
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