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青々
一人でいる事が私には必要だった。 皮を被っている事が恥ずかしい、何にでもなれるうちは身を守る為の姿にしかなれない。 固くなる為に考える脳は生ける命熱で熔け、体を巡る。 何をもの真似をしないのは、それよりも自分の皮を眺めていないと世界に繋がってしまいそうだから。 いま心を弛せば私の形は役目をなくしてしまうと、戒めるのが私の本質だった。 プライドと同じ、中身に関係ない皮を守るための皮、そのもの、みたいなもの。 丸くて短い手足は可愛いから好きだけど、華奢なはなしべをくすぐって遊ぶ事には適しない。 恋したとき、愛したいとき、私がそうなった事や貴方が居ることを確かめるために、黒くて細長い手足を伸ばそうとするだろう。 私の体を廻る思考は、私の体に詰めこまれている予言を見つけた。 恥の器官が私を鼓動させていた。 自分の模様が誰かの模様とぴったり重なるのが嫌だった。 なんでもよく食べた。 でも食べたものは消化器官ごと消してしまった。 今は全身で晴天の夜を飲む。 今や全身が目で、私は気分が良くて潤っている。 見ることが食べること。 食べた夜は潤いごと私の後ろに零れ流れていく。 模様など些末なことだと。 もったいないと思った。 でもそれは今も続く脱皮。 脱皮。
青々 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 971.8
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-09-30
コメント日時 2018-10-12
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ペルソナ(仮面)という言い方をしますが・・・社会的役割、家族というコミュニティーにおける自身の役割、あるいは友人同士の「コミュニティー」における位置取り・・・そうしたものが定まってくる(固まってくる)と安定、安心が得られるけれども、同時に窮屈さ、うっとうしさ、自分でないものに押し込められているような苦痛、を感じるのが常、であるようで・・・そこから、液体のように流出してみたい、そんな欲望に駆られます。 この作品での語り手は、感覚主体になる、のではなく、むしろ、意思するもの、思考するものとしての主体となり、全身を液体となって巡るようです。 その状態を、幼虫から蛹(蛹の皮の中で、どろどろにとけて変態する蝶のようなイメージ)に託して、「大人」になって〈黒くて細長い手足を伸ばそうとする〉未来を予見している、ということでしょうか。 恥の器官とは、恥ずかしい、と感じ取る心が、こうした変態を駆動させている、ということなのかと思います。感覚的に書いているようでいて、非常に理知的というのか、ロジックに沿って記された作品、という印象を受けました。 変態(さらに一段階上の、自由な思考を生きることのできる存在)への脱皮を促すものは、外界をささいなこだわりを捨てて、どん欲に吸収すること・・・他者と同じ、模様が嫌だ、というような、外形的なことではなく(そんな些末なこと、にこだわるのではなく)もっと根源的なところをとらえたい。 詩を書いていくことになぞらえれば、詩形や文体、よく用いる用語法、といった表層的なことがらではなく、もっと宇宙のダイナミズムのような、根源的なエネルギーを取り込みたい、そんな意欲を描いているように思われました。若干、理が先走っているように思われたのが残念。
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