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首を選ぶ ※
ぬめるので目が覚めた 首の無い男が部屋の中をうろついている こわきに分厚い本を抱え 探しているのは己の首か 冷えていく血だまりの中で 私は過去を未来に折り返すすべを考えている ベッドにナイフを突き立てれば深淵が開く ヒカリゴケに満たされた濡れそぼった岩壁 宇宙を埋め尽くす星空のように耀きながら しかし宇宙のようには乾いていない暗闇に 降りて行けば全てが終わる だがまだ今、生は尽きていない 男が何かにけつまずいた 首を探してやらねばならない ひな人形のカシラを うっかり引き抜いてしまったことがあった 彼女は明らかにニッと笑った わらを束ねた壁に いくつものカシラが突き刺されて 身体を与えられるのを待っている 夫 父 祖父 息子 恋人 見知らぬ他人(これから既知の者と成る者) 「はい これが今日のあなたの首」 身をかがめた男の白く丸い脊髄めがけて 選んだ首を思い切り突き通す BREVIEW杯不参加
首を選ぶ ※ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1039.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-09-08
コメント日時 2018-09-25
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「ぬめるので目が覚めた」という書き出しが印象的で、思わずTwitterから見に来ました。 寝室をさまよい歩く男に首を選んで与える、という行為が暗示するものを考えると興味深かったです。 ダークですが幻想的で、全体としては恐ろしい感じはしませんでしたが、ひな人形のくだりはぞっとします。個人的な感覚かもしれませんが、男の首よりも、ひな人形の「彼女」のほうが怖い。 この3行を境に、考えていた「私」が主体的に動き出す感じ。最後まで緊張感があって読みごたえがありました。
0ブラッドベリの短篇のような奇想。 ですがきちんと詩としての強度を備えています。 ひな人形のくだりは山岸涼子の「わたしの人形はよい人形」のような和風ならではの怖さを感じました。 書き出しから最終連まで一気に読ませ、世界観の中に無理なく入っていけるところは流石です。 面白さと怖さが同時に味わえる良作、ありがとうございました。
0怪奇と幻想の妖しい匂い。大好物です。もちろん、現実やイメージを暗喩や隠喩で構成されているから芯があるつくりなんだと思いました。別レスでクトゥルー神話に触れておられたので本を小わきに抱えている描写に、全く関係がないであろう想像までしてしまいました。 首の無い男は社会的な役割(父、祖父、夫、息子、恋人)を幾つも抱えた私なのかな、と思っていたら、これから既知との者となる者、あれ?読み方が間違ってた?? 混乱、、自他の区別など主観的な現実では無意味ってこと? 色々と読み返してしまいます。ただただ上手い!美味い!と貪るなかで 五連目のひな人形のカシラ、の部分が夢と現実が明確にリンクしたような感触に、なんだろう? 自分にもう少し詩を読む力があればと、また繰り返し読んでおります。
0最初から最後まで、言い放っている言葉の響きに唸らされました。奇妙で不気味な世界観に浸りながらも、首を求めてくる男と、「はいこれが今日のあなたの首」と選択して突き刺してやる私に、この二人の歪な間柄が溢れる様に連想され、現実にもあり得る人間関係の怖ささえ感じました…。ありがとうございます。
0怪談にありそうな感じという初読の印象。 だから下手すると既視感ばかりになってしまいそうだが、5連目のひな人形のエピソードがそこに加わることでこれを詩たらしめているなって思う。和的なホラーですね。
0これは悪夢めいていますね。一読しただけでは首のない男が何を表象しているのか分かりませんでしたが、最後に首の代わりになる人々が、極々近しい人物ばかりであるとの記述があり、首のない男の私怨、怨恨めいたもの、現世への恨み? がゆえの未練のようなものが見えてきました。筆者の熟達ぶりは言うまでもなく凄まじく、この奇妙な怪奇譚を「読ませる」大きな助けになっていると思います。
0二条千河さん 〈ぬめるので目が覚めた〉という書き出しが印象的、とのこと・・・ありがとうございます。実は、その後、改訂版?を書いたのですね。そこでは、〈血だまり〉を先に出している、のだけれど・・・皆さんへのご返信の後に、その「改訂版」を貼りますので、良かったら読み比べてみてください。 岩垣弥生さん 物語性を追いかけたものも、書いてみたいという思いがあります。短編より短くて、短編と同様の読み終え感があるものを書いてみたい、というような・・・ところで、「首を選ぶ」の方、ひな人形を出したので、そのままの延長でひな人形のカシラに読んでしまう、ようですね。浄瑠璃人形のカシラをイメージしていたので、改訂版では、そこを書き換えています。 帆場蔵人さん 女が男の首を断ち落し、新たに首を突きさして・・・という設定にしていたのですが、五連目の〈彼女は〉という、ひな人形が生きて笑っている、的挿入句があるために、かえってわかりにくくなっている、ようなので、挿入句的な別ストーリーを省いて、改訂版では彼女を消しました。 紺さん そうですね、いびつな人間関係、であると同時に・・・女性的なもの、がベースになっているのに、社会は男性的なもの、役割的なものしか受け入れないではないか、という苛立ちが、当時、あったようにも思います。詩は、マスキュリン、フェミニン、という(実際の性とは関わりなく)区分をするならば、本来、フェミニン(感性主体)なものであろう、という思いもあります。 渡辺八畳さん 物語性を追いかけていくと、どうしても既視感というのか、ありがちストーリーに寄って行ってしまいますね。独自のストーリーを作ろうとすると、突拍子が無さ過ぎて、読者が置いてけぼりになることもある。ひな人形がニッと笑うあたりは・・・戦火で命よりも大事な右腕を失った人形師のところに、その人形師が作った花簪をさした美少女(もちろん、焼けて無くなってしまった雛人形)が、あなたの右腕に成りに来ました、と尋ねて来る童話があって・・・子供のころ、なんともゾッとする魅力に惹かれた、ということがあり・・・その流れで、雛人形を入れてしまった(首を引っこ抜いたのは、実話)という安易さもありました。改訂版では、もう少し周辺の空間まで入れてみたのですが、どうでしょうね。 stereotype2085さん 悪夢設定が最初からわかる方がいいのか、いきなりホラー的な異界が始まって、後から、もしかしたらこれは「悪夢」なのか?とわかる、方がいいのか・・・夢の中で、自分はターバンを巻いたインドの男性で、テロだかゲリラ戦だかを戦っていて、誰かの首を搔き切った感触がなまなましく残っている状態で目覚めた、ということがありました。オカルト好きの人なら、それを前世、というのかもしれませんが、はてさて。 「そしてまた、夜になる」 目覚めると私は血だまりの中にいる 冷えていくぬめりを確かめながら うごめいている気配に耳を澄ます 青い光が差し入り天井にのびていく 黒い影がベッドのまわりをうろついている 分厚い本を抱えた 首の無い男 今日の首を 男に選んでやらねばならない 少年 青年 壮年 夫 父 息子 恋人 赤の他人(これから知ることになるはずの人) 男が首を差し出したとき私は誓ったのだ これから私が作るカシラは すべてあなたのものとなりましょう、と・・・ 壁面に無数のカシラが突き刺してある 昨夜の首を断ち落とした手で 白い面差しをひとつひとつあらためる カシラを選んで瞳を血で描きいれる ひざまづく男の白く丸い脊髄をめがけて 芯棒を深く突き通す 男の目に光が宿り 腕が私をしぼりあげる 私のからだからしたたりおちる塩水 扉の外には炎が燃え盛っている 男はまた今日も部屋を出ていく 真新しい首を振りたてながら
0読み始めた時「首のない男」は自分の首を見つけられないままこの詩は終わるのではないか…と 思っていました。でも「私」がそのことにどう関わるのかが分かりませんでした。それがまさかこのようなラストになろうとは…衝撃です。
0仮名吹さん 気づくのが遅れて失礼しました。 当初のものを掲示板に、改稿したものをコメント欄に貼っています(まだ、手直しするかもしれません。)人間に内在する、「慈しまねばいられない」情動と、「破壊し尽くさねばいられない」衝動、どちらも極端に触れると恐ろしいことになるように思いますが・・・双方に触れていけたら、という思いもあります。
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