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蝉の死骸
蝉の死骸を、なんとなく拾った 階段の上で太陽に腹を見せていた 右の前足がかけていた 足を動かした 胴体の可動域確認をした 胴と尻の間から垣間見える 複雑な構造に惹かれた 口吻を、生殖器を 初めてまじかで見た見た じっとみて 動かして じっと見た 黒と緑の背中の模様 金混じりの薄い羽を電灯に透かした 黒豆のような目に 歪んだ光 元生命の、一つの物体 それを、小物入れに入れた それから毎日それを弄くった ある深夜 明日絵に書いてみようと思った ある夕方 煮沸消毒してみようと思った ある昼間 分解して中を見てみようと思った 結局しばらく弄くって 元の箱の中に戻した これにとって 本当の元の場所は 土の上か、あの錆びた階段か ある深夜に ふと気づいた 臭い 今まで気にも留めなかった、臭気 小箱の中で 生きていたものの匂いをしていた 死んでからも 生き物の匂いをしていた 明日、彼の絵を描いて 土の上に捨てよう
蝉の死骸 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1201.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-09-02
コメント日時 2018-09-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
なんだか、じん、としますね。匂いで、生きていると気づくことってなかなかないので、とても新鮮です。死について、生について、蝉の抜け殻を通して気づいたり、知ったり。すごくシンプルだし、身近なんだけど、なんだかじん、とする。日常の自分にすっ、と当てはまるような自然な詩、だと思いました。
0いやー、良いですねぇ。蝉の死骸が地面に転がっていることは儘あり、僕も何かを「感じる」のですが、それを拾って観察していくという行動に移し、諸々の考察、感慨へと移す描写。素晴らしいです。最後まで飽きさせずに読ませて、更に最終連の「彼の絵を描いて 土の上に捨てよう」が、筆者の「致しかたないし、ある意味当たり前だが、悼む気持ちがある」との心情が出ていて、心に空白と強い余韻を残していただけました。
0最終連がいいし、ここを書くための詩なのだろう そこに行きつくまでに脱落者を出さないようにするのがこの詩における課題だろう
0なつめさん コメントありがとうございます。 自分は夏の終わりになるとセンチメンタルになりがちで、もしそういうものが伝わって、じん、という印象を抱いてくださったのなら嬉しいです。
0stereotype2085さん コメントありがとうございます。 蝉が階段とかで死んでいると、もう夏も終わりだという感じがして、夏の死のようにも感じられます。ですので、「当たり前だけど悼む気持ちはある」というのはまさにその通りで、一つの季節の終わりは当たり前で、特別悲しいことではないんだけれど、寂しかったり悼みたくなる気持ちがあります。
0渡辺八畳さん コメントありがとうございます。 この死は実体験そのままを、出来る限り詩にしようとしたものですのでどこかを特別言いたいということはないのですが、そのように受け取られるのかと感慨深く思っています。 脱落者を出さないというのは確かに大切だと思いました。事象を説明するような詩や、これはそれほどではありませんが結構な長さを持った詩こそ、言葉に気を使い、飽きさせないようにしなくてはと思っているのですが、なかなか難しいです。アドバイスありがとうございます。
0仲程さん。 コメントありがとうございます。 ちゃんと閉じ込められていましたか。それなら良かったです
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