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【選評】ゼンメツ選、2018年7月分
だいたいのみなさま、はじめまして。7月から読んでます。僕の好みの傾向としては、一見ふつーの詩に隠された行間みたいのが好きです。そして同じくらい「何もない」ような作品が大好きです。何もないということとは、一体なんなのだろう。およそすべての作品に「何か」があります。それじゃあどう読めばいいのだろう。どう良いとするのだろう。読み通して、考えた上で「こいつきっと言いたいこと何もねーー」って思える作品、好きです。何も「込めて」いなくても、何も「篭って」いないように見える作品はなかなかつくれるもんじゃないです。「なんもないのに文体だけはちょー魅力」わりと最高の褒め言葉のひとつです。さて、では明らかに「何か」があるそんな作品についてはどうでしょう。「書き込み量」「読解しやすさ」それも勿論ですが、「ステキな誤読のさせやすさ」これもいいですよね。誤読とはいえ全てが偶然生まれるわけではなく、意図して、計算して、そういう余地を作り出している。そんな作品も有りますし、当然にアリです。有名な落ちパズルゲー『ぷよぷよ』に『のほほ』というカエルのキャラがおりまして。こいつのAIの戦略が、なんも考えずとにかく早く早く天井まで届くほど高く積み上げて、さいごに下をちょいと消すと、その塔が崩れ、偶然大連鎖。手の遅いプレイヤーはそれでもう負け。ズルいです。こんなヤローのどこがのほほなんでしょう。しかしルール上オッケーです。はい、ゲームに興味のないひとにはなにがなにやらサッパリですね。けっきょくまとめると、うまーく誤読を誘う作品は、それだけ脳に対するソッコー性と攻撃力を持っているってことです。一つの綻びから、全てが繋がると錯覚するほどの詩語の密度、多様性、なんどもいいます。ズルじゃないです。悔しかったら計算して計算して計算して、それより強い作品を作るしかないのです。なので僕が誤読したことで、じゃ、選評に入ります。あ、もういっこ。「すげー書き込んでるのに気付いてもらえなかったぞ!!」という声のために、別のところでも同じこと言ったけど。想像できる余地と想像したくなる余地はベツモノです。後者を作るほうがはるかに難しいのです。こんなに沢山の詩があって、ぜんぶがぜんぶ深く読んでもらえるわけがないのですね。読んでもらえたららっきーです。僕もげろげろ吐きながらそのへん苦心しているタイプなので、一緒にがんばりましょう。 【大賞】 ・田中恭平「徒然草」 https://www.breview.org/keijiban/index.php?id=2011 ぶっちゃけ長い、長すぎる。そしてその内容は俺また俺、一歩足を進めるたびに俺、そして扉を開くとこんにちは俺。きっと辟易する人は、もうこれだけで受け付けないんじゃないかな。そういう方々から見たら箸にも棒にもかからないと思います。さて、僕がつけたレス。『「自分だけでは鎮めることのできない自分」を作品として切り売りすることで、読み手に詩情を思わせ、その結果として自身の魂を救っている。そんな儀式のような作風にも思えるほどだ。』ふーーん。なんかよくわかんないですね。これはもういいです。では、果たしてこの作品は、詩に入り込めなきゃツマラナイものなのだろうか? いやそれは違います。この作品は単に色々な意味で「読まれ」ないだけなんです。だってこれちょっとしたレトリック集ですよ。恐ろしい小技の連続です。でも計算して置き場所を決めているわけではなく、即興で、流れるように、それを産みだしている地の筆力。嫉妬しませんか? 入り込んで読んで、それでもなんもわからないひとは鳥頭です。短い短い三行前の話くらい覚えといてください。この作品の中にはダサい男のいけてるフレーズが、いくつもいくつもいくつもいくつも、3000文字の途中にただ吐き捨てられております。そのゴミの山の中心に話者が、しっかりと生きております。こいつが普段何をしているか、何を考えているか、なんて妄想してしまいそうです。愛してしまいそうです。7月に生まれた作品群のなか、この吐き捨てた3000文字が、また別の他者が綴るそれぞれに埋もれ、ただ沈んでいく。その技巧と反比例するかのようにとても不器用な詩です。しかし、黙って底へ底へと沈みながらなお、ダントツで彼が『生きて』いました。 【優秀】 優秀は「詩人」本人の強度、それとキャッチーさ重視、可読性、みたいなものを考えて選んでみました。最初に「読解」がどうとか言ってたクセになんてやつでしょうね。許してください。でも時代を思うと、いまはこの要素がめちゃくちゃ大事で、きちんと評価されるべきなんじゃないかなと思っております。詩の世界を外に広げられる人が評価されたら、内側にいる人たちもいずれ評価されると思っております。ちなみに僕は、メタ要素型、イメージ描写型の書き手のみなさんにとっては、いい読み手ではない。と最初に断っておきます。そのへんは単に好みの問題です。 ・なつめ「愛されたい症候群」 貴音さんも書かれておられましたが、なつめさんはある意味でもっとも「外」に通用する書き手なのではないかなと。詩なんか興味なくても彼女の作品はとても面白く読めそうです。ちなみに僕が選んだこの作品は、なつめさんの作品のなかでもいわゆる「ライトポエム」と呼ばれるものに大分近いものだと思います。ところでみなさんはライトポエムってそもそもなに? って考えたことありますか? その説明の前にまず「現代詩」なんですけど、いまそう呼ばれているものは、他に内包仕切れなかった様々を内包する「ノンジャンル文学」だと僕は個人的に考えております。それを構成しているほとんどが「詩」ってだけです。ではそこに含まれる「ライトポエム」と揶揄されるものの話をしましょう。これはですね、いかにも「大衆」に届きやすそうなモチーフ、文体、語彙、メッセージを主にして構成された作品と、「単に拙いだけの作品」が見分けされることなくごっちゃにされている状態なのでは! と僕は見受けます。なつめさんの作品が誤解されやすいのは作品内に描かれた「詩情」つまりポエジーをキャッチ、共有するにあたって、「詩書きのメイン層と重なっていない」ただその一点です。ちなみに僕の考えるポエジーとは、簡単に言っちゃえば、なにかを受け取ったときに心に残響する、さまざまな「思い」ですね。悲しい、美しい、などは勿論として、言語化できないような複雑に絡み合うものも含めます。それではちょっと僕が即興で、みんなが共感しやすいもの、しにくいもの、の例を挙げてみましょう。 ふと、見上げると、 カエデの種が空を舞っていた。 わたしの部屋で、 光に透かされた小さな塵のようなそれ。 いま、 その中のひとつだけが、 目のまえで枝に引っかかり、 いつまでも、 土へ届くことがなかった。 「いわゆる詩」みたいなものが理解できるなら、これは解りやすいと思います。種に様々なものを重ねることができるのではないでしょうか。それでは共感しにくいやつのほうを。 スマホがメッセージを受信するたびに、 画面が薄く発光する。 なんども点いたり消えたりするソレが いまはとにかく鬱陶しくて。 なのに電源は切れなくて、 ストールでぐるぐる巻きにしてやった 間隔的に鳴るくぐもった電子音は、 だれか、わたし、 どっちからの救難信号なんだろう。 おもわず声に出した「うるさい。」は どこにも届くわけがなかった。 はい、でもこれはめちゃくちゃ説明部分を多くしてあるのでまだまだ解りやすいと思います。それではちょっとここから説明をしていた部分を外してみます。 スマホがなんども点いたり消えたりするから ぐるぐる巻きにしてやった 間隔的に鳴るくぐもった電子音は、 どっちからの救難信号なんだろう。 うるさい。 日常目にしているこれだけのものから、最初のものまで想像できるかどうかの差だと思います。普段こういったものに、先に書いた「楓の種」と同じようなポエジーを見つけているのかどうか、というだけのはなしです。選評にもどります。なつめさんの詩は、めちゃくちゃ書かれてるわけじゃないです。世代によってはどうしても共感が難しいのだと思います。多くのガチ詩人たちはおよそ「大衆性」と呼ばれるものを下に見過ぎております。高尚ってなんなんですかね。ビーレビがその世代の追い風となるような読み手で溢れていたなら、彼女を大賞と推薦するひとが何人も居たと思います。8月作品を含め、トータルで見ても文体は多様だしタイトル付けも上手。文章中のモチーフや語感が強すぎると思ったらファッションでいうところの「ドレスダウン」がまた絶妙で、漢字のバランスとか気になるところはありますが、だんだんとそれまでも作為的に見えてくるほど、これを「多感な時期」という本当につまらない一言で済ませちゃうほうがよほどつまらないです。つーか読めば読むほど「いまこんなことえらそーに書いてるけど、そもそもふつうに僕より上手くね?」なんて感じちゃいます。だからいつか「こういう雰囲気」のものを書かなくなったりしても、そのとき、作者の書く詩の魅力の絶対値が損なわれることはきっとありません。また別のどこかへ届きはじめるだけなんじゃないかな、と自信を持って保証できます。 ・地(
【選評】ゼンメツ選、2018年7月分 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1051.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2018-08-14
コメント日時 2018-08-16
ゼンメツ様 ああー、もう本当にどうしましょう、ゼンメツ様は私をどうしたいのでしょう、と思うぐらいの賞賛の嵐にあっぷあっぷしております。「愛されたい症候群」は結構思い入れがあって、本当に嬉しいです。技量も語彙力もない、ならばどうする、楽しんだほうがいいに決まってるだろ!みたいなノリで授業中に、はい、まぁ一番前で、ガリガリ書いてました笑笑タイトル付けは割と真剣に考えているので(もしかしたら本文よりも)、お褒めの言葉、本当に嬉しいです。タイトルは作品の顔みたいなものですし…。そもそも、全体的に褒めすぎですよ…。キャパオーバーですよ…。私だって、照れるんですからね…。ゼンメツ様は憧れの人なので、私が私の中でゼンメツ様を超えることなど、絶対にないです!!いえ、勿論ゼンメツ様に限ってではなく、ビーレビューに参加してる皆様、全員憧れなので!私は、まだまだです。もっと頑張るので生暖かーく見守っていただければ幸いです。本当にありがとうございました!m(*_ _)m
0ゼンメツさんへ 【優秀】枠に名前を挙げていただきありがとうございます。〈面白いからです。〉という最初の一言がとてもとてもうれしいです。 私は詩の中で跳んだり走ったり踊ったりしたいと思っていて、できることなら軽くかるくなりたい。現実の自分が運動音痴な分、詩では涼しい顔で軽やかに大技を決めてやりたいです。 どうやらゼンメツさんから見るとうまいことできているようなので安心しました。たのしんでもらえることが一番のよろこびです。 ありがとうございます。
0>なつめ さん なつめさんのこのコメントを読まなかったら僕は、こんなおこがましくもバベルの塔のようにそびえ立った地獄のテキストを投稿したことを後悔して後悔して、後悔し続ける界のはざまのこべやに融解するところでした。ちょー救われました。 >花緒 さん ギャーーー本当だすみません!! すげー言い訳していいですかお願いします僕これ丸一日、朝から夜まで書いて書き終わらず、さらに次の日まで掛かり、精神ぼろぼろのワンデイアキュビューしょぼしょぼだったせいです。ほんとごめんなさい。ケレケレの話は文極で読みました。あれからずっと、印象に残ってます。 >みな さん 投稿して気付きました。ほんと、長くてごめんなさい。大賞の「ぶっちゃけ長い、長すぎる」の一言がもはや滑稽です。
0>こうだたけみ さん ありがとうございます! とっても個人的な話になっちゃうんですけど、あとりえさんが好きだと仰っていた方々と、僕の好みはだいぶ被ってます。本当にみなさん素敵です。
0ゼンメツさん、阿ト理恵さんをご存知ですか! 私は阿トさんと一緒にゴルに参加していたから今があります。若干クセのある方ですけどとても大切な友人だと思っています。 じゃあさわ田マヨネさんもご存知ですか? 私、さわ田さんの書く詩や短歌が大好きなんです。アーライユーミー?(荒井由実)って書ける人になりたい。 は! 個人的な話を畳みかけてしまいました。失礼しました。
0>こうだたけみさん もちろんもちろん知っております。僕もさわ田さんの書く詩が大大大好きです。センスを引っこ抜いて貰ってしまいたいほどです。あとりえさんには僕もとってもお世話になりました。そしてちょっと悔やんでもいます。この名義ではないので本当ににんともかんともなんですけど。いつか、お礼を言えるくらいになれたらいいな、と思っております。あ、さらに個人的な話を被せてゴメンなさい!
0この選評はとても読み応えがありました。こんな読み方があったのかという新しい発見をもらえる上に文章としても非常に魅力的です。また、作品の内容だけでなく詩作における技術的な側面にも丁寧に触れているので非常に興味をそそられる上に、ゼンメツさんのポリシー的なものが明確に伝わってくる。アツいです。エモいです。
0ゼンメツさん、さわ田さんの作品もお好きですか! さわ田さんは作品のかわいさとご本人の見た目とのギャップにグッときます。 あわわ。別名義。もしかして、私はじめましてではないのかしら?? 阿トさんは、4月に百均さんの就職祝いをした時は元気そうでしたよ。詩とは違う遠い世界に行ってしまっているけれど。 個人的な話、とてもおもしろかったです。
0>地(
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