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Here comes the spring
はじめに この作品は、紅月さんの作品の返詩として書いたものです。 http://adzwsa.blog.fc2.com/blog-entry-31.html 上記のサイトの企画に参加させていただきました。 ****************** Here comes the spring http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=328445 ******************* 【Here】 猿猴橋のたもとで、河童が死んだ。嘴の黄色い河猿だった。朝靄が立ち込めて 桜は感覚器をあらゆる方向に のばして花霞の間を、まるで水の中の風景のように時間軸を狂わせていた。幼いころから当たり前のように河童は微笑みながら思惟し、わたしの頭に 皿の代わりに百科事典をのせて歩くことで 均衡の美の先の夢想をさせた。 河童の関心事は もっぱらヒトとはなにであるかであるからうつくしく歩く。 河童の言葉は いつもどこか艶めいて 飛沫でも宿っているかのようだった。 頬がほのかにまだあかい河童。 彼にとってヒトの暮らしがどのようなモノか。 わたしの祖母に大切に育てられた幼いころの河童は伝説になるほどの 愛らしさ。青春時代は大勢の雌のヒトにモテモテだった。 それだけに憎まれもした。子をなしたがヒトのような育て方が分からず 姪だということになっている私に、ヒトとは何であるかを問うのであった。百科事典は皿として以外には読む楽しみも、あると教えた。 かれの教えは 川のように流れとおい海の見渡せた。 【comes 】 彼が問いつづけていたヒトとはなにであるか。恋のつややかさと幽玄についての 果てしない憧憬のまなざしが瞼の間から ほんのわずかの隙間で醤油のように 見つめていた 彼の皮膚は すっかり骨と皮のようになりおだやかな顔をして 逢いたいヒトのことを上手に生き難いヒトのことを待っていた。 故郷の来現。 【the】 やがて、彼は呼吸をやめた。 旅支度に白い足袋をはくと、みずかきで泳いだ日が 蘇ってきた。胸のところに冥銭を渡されて 彼は棺は灰色の霞の中を流れてゆく 【spring】 満開の桜は今が盛り。 葉桜になるころに、わたしは「きざくらあぽん」と 歌いだすだろう。 いのちが どれだけ流れただろう 無数にながれた。祖母が幼い我が子を何人水子として供養してきたのか不明としたくなった頃に 河童は祖母の我が子としてやってきた やがて 祖母は私の母をみごもり、いずれ わたしが生まれた。 わたしは河童を忘れない。 ヒトとはなにかを問いつづけた河童。 ヒトの描く妖艶な河童の絵が とおくで ゆれて 河童のひきだしからも 春が とびだしてくる ******************** 【Here】みな底の母子像 『ピエタ』より http://bungoku.jp/monthly/?name=%8dg%8c%8e ******************** 「どうか、すこしあまがみさせてください」 かつてのやわらかな はだのあなたは もはや形骸化された象徴のピエタ みな底に沈んでいる 波の縞模様があなたの頬に落ち しだれ傾いた腕は重く 波はあなたを ゆるがすことはできず ゆれるのは 母の体にもある 海藻だけ 母は あなたを抱いています 母は まぶたをとじ さえずりのような あなたの笑いを 探しています。そうです。さがしているのです。 元居た場所を わすれてよいですよ 忘れることで おもいだされてゆく 時間のながれが海流によって おしもどされてゆく ************** 【comes 】授かる 『Leafeon』より http://mb2.jp/_prs/6657.html ************** どれだけの月日がめぐったのか はるかな年月は永久に近い つかの間に おやすみの挨拶ともに 桜さくらと さかしまに上空におちる 蝋のあかりすら はなびらのように さくら 川は 朝もやの中の花曇り ふたりは むつまじいおしどり ひらいてみせておやりになって おんなのアリアで るつぼと過失のうずまきから つむがれた とおい きれはしが おとこを 彩色し さいしょくは おとこをおとこにして おとこの鮮やかな赤い羽が、もやそうとするのは おんな おんながつむいだおとこと おとこがむついだおんなが 萌える さくらに かくされながら 止まるように流れてゆき 冥銭すら ちらときらめき ゆるされるあいだの むつぎごと かわはじかんにとじこめられてぬまになり ふたりのうえた たねが ねむりながら また ひらく ****** 【the】花 『akatsuki』より http://critormenta.blog.fc2.com/blog-entry-12.html ******** 喉の奥の胸腺が 鰓だったころのなごりであるように ヒトは、水から 這い上がってやってきた 必要なのは、 超える勇気 ほら ルック アット ミィ 見てごらん セカイは、 どれだけのルクスでできているのかしれない 過去は暗い底なし沼 沼のほとりに這い上がれば どうだ! 一斉に翻っている 闇雲に過剰を太鼓を連打するかのように おさなごのこころのままに 自身のオールを漕いで漕いで漕ぎつかれたその先に 絶叫のように咲いていたのは 何の花だろう。the フラワーず。 沈みつつある舟の上でまるで踊るかのような動きしながら見た たましいの陶酔がほどけて咲く無数の花びら みんなさかしまに天に落ちようとし 【spring】【spring】 【spring】 【spring】 【spring】 【spring】【spring】 嗚呼、満月が あかく燃える
Here comes the spring ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1011.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-04-11
コメント日時 2017-04-26
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
B−REVIEW的には返詩カルチャーを応援しているので、投稿を嬉しく思いました。作品として纏まっているように感じますが、初見の読者に、返詩先の元の作も読ませたいのだとすると、もう少し作品のリーダビリティをあげて、読みやすい作にする必要があるようには感じます。 読みにくい作品になってしまったなあとは、アップしてしまったあとに 私も思いました。 ですが、B−REVIEWが返詩カルチャーを応援すると 書いてくださっていて、 とても安心しました。ありがとうございます。実際どきどきもんでした。
0【spring】 満月が あかく燃えてたのは 名前を教えてくれなかった残念な岸辺で 僕が夢を語っていたのに 突然降りだした鳥の群れに君はわらっていた ブルーブラックとイエローのバランスを土砂降りの鳥たちが切取って 春の気持ちを もういいよって セカイのことは もういいよって 教えてくれたね るるりらさん 投稿有難う御座います。これはるるりらさんの返詩への「共感詩」です。失礼しました。
0返詩、の場合、元詩を加味して考えるのか、どうなのか・・・そこが思案のしどころ、ですね。言葉そのものが、習い覚えるもの、ですし・・・語彙やフレーズなども、語例から覚えていくわけですから、あらゆるものが「返詩」である、とも(広くとらえれば)言えるわけですし・・・ なので、私は、返詩作品自体を独立した作品として、評価するスタンスで行きたいと思います。 「桜は感覚器をあらゆる方向に のばして花霞の間を、まるで水の中の風景のように時間軸を狂わせていた。」生き物のような桜の妖艶さ、時空を移動する際の鮮やかさが素晴らしい。「逢いたいヒトのことを上手に生き難いヒトのことを待っていた」自らを異質な存在としてとらえる他ない人の淋しさが、美しく現れている部分だと思いました。黄桜の河童の家族の絵を思い起こしつつ、「河童のひきだしからも 春が とびだしてくる 」こんな死者の追悼の仕方、思い出し方、素晴らしいと思いました。時間がないので、すみません、このあたりで。
0「みな底の母子像」は、水底なのか、皆底、なのか。そんなことを考えながら読みましたが、独立した作品としてみる時、河童の詩の具体性というのか、迫って来る力に比べると、雰囲気やムードに流れているのかな、という気がしました。表記への気遣いや、全体に流れる柔らかさが、絵を描いたり音楽を奏でたりする方向への意識に通じているようにも思います。 「授かる」これも、表記の工夫や音の響きに鋭敏な作品だと思いました。 「おんながつむいだおとこと /おとこがむついだおんなが 」こういう対句、どこか神話的なイメージも生まれますね。紡ぐ/睦む アマテラスは織物や生糸の神様でした、そういえば。 つむぐ、からの造語なのか、あるいはそうした言葉があるのでしたら不勉強で申し訳ないのですが、睦みごと、であって、むつぎごと、ではないのではないか?という気が、しないでもなく・・・。 「花」一行目の立ち上がりが素晴らしい。 「喉の奥の胸腺が 鰓だったころのなごりであるように」えらって、魚に思う、と書くのであったか、と思いながら、なぜか鯉/恋へと連想が進みます。 「漕いで漕いで」というあたりの語感からかもしれません。 胸腺、という術語が、新鮮でした。人類史のイメージと、羊水から空気中へとやってくる胎児、そして、過去の沼、から這い上がって来た、新生する人、のイメージ、が重なりました。
0三浦果実さん 共感詩、ありがとうございます。なんだか とっても うかばれました。 ほんとに もういいんだあと おもってしまいました。 とくに ≫突然降りだした鳥の群れに君はわらっていた ブルーブラックとイエローのバランスを土砂降りの鳥たちが切取って ↑ ここが、とても好きです。書かせていただいた甲斐がありました。ありがとうございます。
0まりもさんへ すごい桜を実際に見たので、その迫力が書きたかったので まりもさんに受け止めていただけて嬉しいです。ありがとうございます。 ↓ まりもさんの文≫ 「桜は感覚器をあらゆる方向に のばして花霞の間を、まるで水の中の風景のように時間軸を狂わせていた。」生き物のような桜の妖艶さ、時空を移動する際の鮮やかさが素晴らしい。「逢いたいヒトのことを上手に生き難いヒトのことを待っていた」自らを異質な存在としてとらえる他ない人の淋しさが、美しく現れている部分だと思いました。黄桜の河童の家族の絵を思い起こしつつ、「河童のひきだしからも 春が とびだしてくる 」こんな死者の追悼の仕方、思い出し方、素晴らしいと思いました。 ああ嬉しいです。 「みな底の母子像」は、水底なのか、皆底、なのか。とも書いてくださってますがそのとおりです。そんなことを考えていただきたかった。 「授かる」 まりもさんの文≫「おんながつむいだおとこと /おとこがむついだおんなが 」こういう対句、どこか神話的なイメージも生まれますね。紡ぐ/睦む アマテラスは織物や生糸の神様でした、そういえば。 つむぐ、からの造語なのか、あるいはそうした言葉があるのでしたら不勉強で申し訳ないのですが、睦みごと、であって、むつぎごと、ではないのではないか?という気が、しないでもなく・・・。 ↑【つむぐ】ですが漢字をあてるなら【紡ぐ】です。 それは、オシドリという鳥の色彩を意識しました。雄はとても艶やかな色彩を持っているが、雌は 茶系の地味な色なのですが、その色彩をメスが織ったものであるとしたのです。メスは茶系の地味な色なんすが 枯葉色なので よりいっそう燃やせそうだと おもいました。 メスがオスを 紡ぎ、オスはメスを 睦む。としたのです。 まりもさんの文 ≫胸腺、という術語が、新鮮でした。人類史のイメージと、羊水から空気中へとやってくる胎児、そして、過去の沼、から這い上がって来た、新生する人、のイメージ、が重なりました。 ↑紅月さんのピエタという作品の詩文に「ありつづけるあなたを世界樹たらしめるもの」という表現があったので、そこから私としては【胸腺】という語を選びました。胸腺は人類史というより生命史ですが、細部まで きちんとひろって読んでくださって 作者冥利につきます。ありがとうございました。
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