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トランプ大統領が誕生した
1 正しいルールに則り票を獲得し彼は誕生した。 早速彼は全土を13に分け他1をジョーカー州と名付た。 彼の行う悪名高いヘイトスピーチも功を奏した。 私たちは偉大なり。 2 彼はジョーカー州に気に入らないものたちをおしこんだ。 そしてカジノ特区と称し遊んで暮らせる移住先にと空間を作り上げた。 犯罪者も非犯罪者もニグロもジャップも赤んぼも共産野郎もおしこんだ。 皆は反発したが直に沈静した。 囲われたひよこたち。 3 やがてジョーカー州の外にいるものたちが騒ぎ始めた。 我々は沈黙のひつじではないとプラカードを手に行進を始めた。 ─暮らしたい!─ 日々増してくる人々の数に眉を歪め彼は手を打つべく考えた。 4 ジョーカー州の周囲に高電圧のフェンスを張り巡らせることにした。 胸中に少々の呵責を感じはしたが吹けば飛ぶよなチェスの駒。 早々に命を下しホワイトハウスで一人くつろいだ。 すべては我が手中にあり。 5 拷問が好きで嫌いで好きな彼は一人の白んぼを吊し上げた。 白髪混じりの金色にきらめく自身の髪をめくりあげ紙を見せた。 イスラミックステイトのドンの顔が描かれていた。 円みを持つ蒼の描線。 波打ち際で踊るダンサーのようだ。 6 ─唾を吐きかけろ、─ 紙を見せながら白んぼの耳元で囁いた彼だが、 首を振る白んぼから頭頂へめがけ唾を吐きかけられると、 ガハハハハハハーッ! SPや秘書や側近たちへ肌を紅潮させ大笑してみせた。 透き通る紺碧の眼に地獄の使者が舞う。 ─オレをナメるなよ─ 7 会談が迫る彼は背広からワルサーを取り出し突きつけた。 睨みつけたが唾を吐きかけない様子に業を煮やし、 白んぼに掛けられた荒縄を力いっぱい引き上げた。 絶叫が木霊して世界をつんざいた。 ─アラー!─ 8 転がり落ちた白んぼの頭と一緒にスマートフォンで自撮りを済ませると、 血飛沫に染まる顔をドンの顔で拭いめくりあげた髪の裏に納め、 遺体の処理をするよう側近たちに指示を出して、 コツコツと冷たい足音を甲高く響かせ拷問室を後にした。 9 じんじんと夏の光が体中にみなぎる。 ほくそ笑みながら意気揚々とリムジンカーに乗り込み、 自慢のペンタゴンに到着したが、 待っていたのはジョーカー州に雪崩れ込んできた、 移住を希望するものたちによるデモの様子だった。 ドローンで撮影された映像をiPadで確認する。 10 公約を思い出していた。 メキシコとの国境を封鎖し中国や日本のやり方を槍玉に上げ、 当選の暁には勝手にはさせないと明言していた。 すっかりめずらしい玉虫を飼う私にアメリカ中が支持を表した。 時代が呼んでいるぞ。 焦るな。 11 結局オバマも崇高なスピーチからかけ離れた世界にしたではないか。 ─好戦的。─ たとえ取り巻きの白んぼ連中による結果だとしても、 決断を下したのは奴だ。 所詮は黒んぼとの末裔。 奴の剥がれた仮面の内を伝うのは何なのか。 12 ジョーカー州の街中で少数の人々が労働への権利と恢復を訴え始めた。 カジノ天国に飽いたのだ。 予測済みであった彼は忠誠を誓うことを条件に解放を約束した。 誓わないものたちへ電圧を上げた。 天国地獄がめまぐるしく入れ替わる。 トランプ大統領が誕生した。
トランプ大統領が誕生した ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 985.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-06-24
コメント日時 2018-06-27
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
シニカルを狙ったんだろうなって箇所が飽和していて読みづらいなというのがまずの感想。 んで、この詩ではトランプ大統領が書かれているよねと。 ヒットラーに並んで今日ではトランプは創作者殺しだと私は思っている。 およそこの二者というのは良いようには書かれない。それはもう悪の象徴としてのパブリックドメインだ。いつの時代もピエロが愚者の象徴で寅さんが風来坊の象徴のように、ヒットラーやトランプはいつも悪の象徴として描かれる。 しかしピエロや寅さんと違うのは、ヒットラーやトランプが使われる時は往々にしてその使用者の個人的な感情、その殆どは否定的なもの、が強く絡んでくるからだ。 結果ヒットラーやトランプを創作物で使ってしまうとその創作物の制作意図に意識的無意識的に限らずそれらへの否定・皮肉・中傷などがくっついてしまう。 はじめからヒットラーを否定する為にそれを作ったなら勝手にやってりゃいいけど、もしそうでない場合は損害だ。表現のために使ったものに表現自体が呑み込まれてしまう。 この詩についてもそう。湯煙氏がトランプに対しどう思っているかなんて私が知るところではないが、しかしそれでもこの作者はアンチトランプなのかなって見えてきてしまうし、一度そう思うとそちらに着眼がいってしまう。反トランプの人は喜ぶし、迎トランプの人は怒る。それは創作物や作者が望む反応ではないだろう。 今の人類にヒットラーやトランプは早すぎる。ヒットラーを使って自然の美しさを表現したりトランプを使って高校生の淡い恋愛を表現できる人物が現れるまで使用を禁止されるべきだ。 『詩と思想』2018年5月号に掲載された深沢レナ氏の「ヒトラーの抜け殻」という詩に対しても同じようなことを私は言及しているので一読を。 https://twitter.com/yoinoyoi/status/994488874901487618
0渡辺八畳@祝儀敷さん。 興味深い御指摘、批評をありがとうございます。 早すぎるとのことですが、そうですね。実際トランプが当選する半年ほど前の作品となりますから。とそうした意味ではもちろんないと思いますが。やはり現実は・・・よりも・・・と、そんな感じがあり戯作以前のものとなったかと、そんな感じがします。構造もわかりにくい、読みづらいと、まずいものであることがわかりました。創作者殺し。ですね。なかなか難しいです。ヒトラーについても過去に創作したこともありましたが。 「ヒトラーの抜け殻」は知りませんが、教えて下さりありがとうございます。
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