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【4月選評】うそのはなしを推します
作品名:うそのはなし 作者名:はさみ http://breview.main.jp/keijiban/?id=1643 ワンポイントキュレーションという制度を知ったので はさみさんの「うそのはなし」をワンポイントで推します。 1.まずタイトルがかわいい。 ひらがなのタイトルってめっちゃかわいくないですか? 嘘の話だと何かかたいところを「うそのはなし」 マイルドに軽ーくウソダヨーって感じ。 目的をもって吐かれた嘘というよりはちょっとした作り話のような。 もう一つ、このタイトルかわいいだけじゃないんです。 まず最初に嘘と明示しておくことで、あっ嘘なんやーって読み手が一歩引いた感じになる←これ! ここがこの作品をさらに活かしているんですよ。 2.距離の取り方がいい。 この作品中盤辺りで電車の中での男女の会話シーンが出てくるんですね。 人が何かしらの出来事について語ったり思い出したりするときって、基本的に時系列に沿ってるじゃないですか。 この会話シーンでは三連に渡って同じ会話の流れを描写しているんですけど、 次の連に移るたび、ちょうど巻き戻しをかけたように少し前の会話が現れるんです。 敢えてこういう不自然な出し方してくるのが本当作り物感マシマシであーっうそのはなしやーって感じなんですよね。 ここの会話が「男女」による会話とされているのもポイントです。 語り手はあくまでも男と女が会話しているシーンを語っている、というスタンスを取っています。 読んでいるといや普通にこの男って語り手やろ、と思うわけですが、この場面は敢えて一歩引いた立場から描写されているんです。 こういったいくつかの不自然さを醸し出すことで、語り手とその語る内容との間に適度な距離を生み出し、 その上でうそのはなしというタイトルでひょいっと逃げてしまうかのようなこのずるさ! つかみ所の無さ! とどめに冒頭のでもやっぱきれいだよねを後半で回収! くっそ! やられた! 3.最終連のどうしようもなさ。 これどうやってオチつけんねんとか思いながら読み進めていくと、 僕は会議室の無機質な明かりが 集合したみたいな地上の星を想像して 無機質な明かりですよ。 会議室の明かりだって誰かのために点けられたものなのに。 もう完全に諦めの境地入っちゃってますよ。 それでも自分の部屋の電気を点けることはできてるんですよこれーーーーー完全敗北じゃないですかーーーーーーー パッと見さらっと読みやすそうな文体で何気なく読み進めていくと、 気がつけば何だか宙ぶらりんにされたような感じになっていて、 捉え方によっていかようにも変わってしまう事象を捉え所のないままに語りつつ、 それでも何となくこれでは上手くいかないんだろうなという、最後にこのやるせなさ・もどかしさ・手の届かない歯がゆさを残して終わっていく。 この後味がまた格別なんですよ。 というわけで、 以上三点を持ちまして今月は「うそのはなし」を推します。好き。
【4月選評】うそのはなしを推します ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 761.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2018-05-15
コメント日時 2018-05-15