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幼児にたいする誘拐と殺害とがわたしにかけられた容疑、星々をつなぎとめ星座をかたちづくる、それは崇高というのでないがときに信念と倫理とが発動され、瞬きは忙しく、瞼を微細な痛みにより貫かれる、愁いの夕空から蝙蝠たちを展開させるための試行が様々に召喚するようだ、尊厳とよばれるものをかけて被告席から歩きだし証言台に向かうとわたしは黒衣を纏う無表情のものたちを前にして死刑宣告を受ける、どのようにして逝くべきか、ことばを吐くのか聴きたいか、いったい誰が判断を下し線引きは行われているのか、誰が許可をするのか、金銭の取り引きによる和解などはあり得るのか、わたしは蝙蝠たちの飛翔に眼を凝らす、確実に侵食し追いつめるものたちの姿を探りたい、わたしは無実であり再審を請求する、黙秘ではなく潔白を証すために、厳格を珍重し求め非情なまでに他を排する、永い歴史の中で培った思想、王を定め位を定め、神へ奉納する国、川という川を越え下らねばならない、新月の夜に走り出す、走り出したどりつくのは漁を営む海辺の町、小島の片隅にあり年中温暖な気候を保つ、乾いた潮風が島内をめぐりながら日光を受け、翼を広げている、自然であることを謳歌している、まだ軽い痺れを残す身を浜辺に横たえてうつらうつらとする、そこに背広姿の屈強な中年男二人が近づき、ゆったり寝そべるわたしの両脇へと腕を差し込んで抱え起こそうとした、冷静に理由を話すよう乞うが男達は答えを返さずぐいぐいと引っ張っていくだけだ、そばに置いていた所々にじわと赤黒い斑点を滲ませた袖と襟元が弛んで垂れ下がるみすぼらしい上着に腕を伸ばしてつかみとり、わたしは何も言わずおとなしく連行されていった、表面全体がまだ淡く原色の鮮やかさをわずかにとどめるいろとりどりの金平糖が正午を過ぎたばかりの陽の中へこぼれおちていく、
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作品データ
P V 数 : 1144.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-03-25
コメント日時 2017-03-31
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
″Z3″-ブログかTwitterかなにか、なんとか賞に選ばれたとありました。ありがとうございました。また、天才詩人さんによるツイキャスも聴きました。こちらもありがとうございました。
0星座というのは神話に基づいて人間が作り上げた勝手なルールでしかなく、本来は生まれた星々が偶々そこにあるだけです。そうした人間が作り上げたルールである星座と同様に、「わたし」は容疑にかけられるわけです。容疑というのも、人間が人間に対して適応するルールのもとで生まれるものです。そうしたルールはおそらく誰かが生み出したものですが、長らく使われることによってルールがルールとして習慣化され、それが「いったい誰が判断を下し線引きは行われているのか」という表現が生まれたように思えます。 途中気になった表現が「ことばを吐くのか聴きたいか」という部分です。この表現は、わたしの迷いを表しているように思えますが、「わたしは無実であり最新を請求する」ということで、選択したのはことばを吐くことです。習慣化されたルールに抗うわたしの姿が見てとれます。 それでも、真正面から抗うのでなく、習慣化されたルールから逃げるように走り出し、海辺の町にたどりつき、自然であることを謳歌するのですが、終には「屈強な中年男二人」によって捕らわれてしまいます。彼らは習慣化されたルールの象徴のようであり、「わたしは何も言わずおとなしく連行されて」しまいます。結果的に、ことばを吐けなかったのです。 金平糖は冒頭の星々のイメージを思わせます。相手の要求を飲む(正しい表現かはさておき)という言葉があるように、金平糖を飲み込んだわたしは、わずかながらに原型をとどめている金平糖に原物としての希望を抱いているのか、それとも、もはや別物となりつつあることに受け入れの決意をしているのか、その答えはわたしのみ知り得るのでしょう。
0背広姿の屈強な男たちに両脇を抱えられて連行されるとか、身に覚えのない罪で法廷に引き出されるといったストーリーは、世代的にどうしてもイエスの「ロンリー・ハート」のプロモーション・ビデオを連想してしまう。 https://youtu.be/SVOuYquXuuc この映像の元ネタはカフカの「審判」だという説があって、私もそうだと思っている。ただ、この詩の場合は最後に語り手の上着の袖と襟元に、赤黒い斑点が滲んでいるという事実が明らかになる。それは殺害された幼児の血ではないのか。語り手は本当に無実だったのか。こぼれ落ちる色とりどりの金平糖は、幼児を誘拐する時に使われた小道具ではなかたのか。星々を人の希望する通りに結んだものが星座であるとするなら、語り手の有罪と無罪の主張もまた、それぞれの立場で勝手に組み合わされた「証拠」の産物なのかも知れない。そして、それは「真実」の追究に何ら役に立たないものなのだ。
0◆なかたつさんありがとうございます。そうですね。原題は″Contemporary Melancholy Roman Polanskis Rosemarys Baby Lolita Poetry.- 疑惑。こんてんぽらりめらんこりろまんぽらんすきろずまりずべびたぽえとり″ で、五章の内の一つにと構想していたんですが、(他に蛙や悪魔や義母や宇宙など)残りの章はなかなか進まない ^^; ルール、法ですね。語り手は逸脱を企てますがとらわれてしまう。自覚がないために幻覚と現を彷徨するような感覚にあるのかなと。ことばを吐く聴きたいは様々にある言語表現全般といっていいかと思います。失語手前のような状態になるかもしれませんね。 海辺の町は最終の地ではなく逃亡の最中にといったものですが、現実の政治なり情勢なり、各媒体から入る情報により既視感が強いので表現としてぐうーっと落ちていると。そんな感じですね。 金平糖はお菓子である飴であり、連行されながらポケットからぱらぱら落ちていくのを見るんですが、語り手はそれがなんなのかよくわからないで終わってしまう、希望または決意にも届かないまま、とそんな感じですか。 ◆もとこさんありがとうございます。ロンリーハートはあのロンリーハートでしょうか?プログレから離れたPOPなヒットソングとして認知しますが ^^; そうですね。やったのは語り手のわたしであるかもしれません。自覚がないなかで御用となり処刑されると。そうした状態なり状況なりが継続されてしまう不条理、不安恐怖の感覚かもしれません。真実とは?と彷徨しながらたどりつく大団円の構想はないことはないのですが、正解か否かとはならないかなと。そんな感じです。
0読みずらいなというのが第一の感想。意図的であろうが。 そのなかであっても「星々をつなぎとめ星座をかたちづくる」だけは黒地の中の白点が如く凛と際立っている。それは実際の思考のように冗長に書かれた独白文が全体を占める中、ここだけが簡易にされど強固な映像を読者に与えてくれるからだ。天体や自然の描写はここ以外にもあるが、この一文に叶うものは無い。
0情景描写が緻密なので、前半と後半は時間が逆転しているのかと思ったのですが、作者のレスを見ると、審判中の逃亡?シーンであるような・・・。無実の嫌疑をかけられ、逃亡の果てに捉えられて、法廷に引き出される、その矛盾というのか困惑、というところが主題だと、通常なら思う、のですが・・・ 本人は、理不尽な冤罪に困惑している、というよりも、無実だ、と主張する行為に比重がかかっているようであり・・・その主張に疲れて逃亡したけれども、また捉えられた、という時系列とも読める。 私が連想したのは、聖書の幼児殺害のエピソードです。ヘロデが、イエスの出現を恐れて、同年代の幼児を全て殺させる、というもの。 命じたけれども、自分は手を下していない。そのヘロデ王を審判の場に立たせたら・・・そんな景を考えました。
0◆祝儀敷さんありがとうございます。句読点の打ち方によるものになるでしょうか? 焦燥や切迫といいますか、そうした気分にじわじわ支配されている感じにしてみたということもあるんですが。 星々をつなぎとめ云々ですが ″黒先白死″ という哀しくも気高さを放つ、盤上での決戦決着をレスから想記したりしました。バランスという点で浮いているやあざとさということでもあるんでしょうね。表現はまずいといいますか、わかりやすくなりすぎたのかもしれませんが。 内省にそうした視覚印象、大局を意識に置きつつ詠み進み、また対局を振り返れば光一点、無のなかの有といいますか、傷なりを残すなら強烈な光や猫だましみたく唐突に一瞬目眩ましをくらわせる箇所になっているようで、個人的に興味深い感想を頂きました。
0まりもさんありがとうございます。冒頭から続く独白部と逃亡を企て云々と、当初は時制を前/後というより悪夢といいますかコールドケースといいますか、解決しそうにない迷宮入りを暗示する、そうした循環の作用が意識にあり、また、本文に蝙蝠とありますように翼を広げて闇を飛行している、そうした視覚効果により訴えることも面白いかと思いまっぷたつに連分けしていたんですが、それを繋げた次第です。 幼児はイコール神として例えられたりしますが、神への法への対抗なり否定や反逆の意識が働いて云々と。そうしたことになるでしょうか。対象への距離感からくる違和の表明でもあるのかもしれませんが。 既成の信仰の対象やヘロデの存在、行いなどのエピソードを引用、暗喩としてということはなかったんですが、aを肯定すべくbを生け贄として殺害し捧げる、儀式的行為振る舞いを想記したりもします。
0花緒さんありがとうございます。 Z3 ですね。良かったです。 幻覚、悪夢といいますか、脅迫観念のように際限なく追いつ追われつの状態化。うわごとのようなものでしょうか。宗教云々について直接特定してはいませんが、思想や作法、歴史、単一のイデオロギーに対して抗う、核といいますか、そうした意思は表明されていますね。 読みにくさは他の方からも指摘を受け、表現を失敗したかと。今更ながらですが甘さを感じます。
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