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終末メルヘン
幽霊が部屋の中にいるのではありません 部屋そのものが幽霊なのです 花束はまやかしですが青痣はほんものです ハロー ハロー 1週間の報告をします 日曜日の芯がむきだしになって雨に濡れていました 月曜日に鉛筆削りのモラルが低下しました 火曜日の模型ははんぶん化石になっていました 水曜日にオッドアイの猫が瞼のうらに住みつきました 木曜日のあたら夜を黒曜石のナイフで切り取りました 金曜日にやさしさの価値がまた暴落しました 土曜日のおくつきは哲学がからっぽになりました 報告おわり 近頃、こゝろに刺繍された水色の少女の声をよく聞きます 「人間は滑稽なほど自分か他人を傷つけていないと安心できない生き物だ」とか 「聖書は核兵器よりたくさんの人を殺した。もっとも書物に罪はなく、悪いのは人なのだが」とか 「神様は根なし草だからすべり台から頭だけ転げ落ちてくるだろう」とか わたしにはあんまりよく分からないけど、そういうものかなぁと思います ここのところキウイばかり食べているので頭の回転が鈍い 「悪いのはキウイではなく君の脳みそだ」とか言われそうですね 彼女の男の子みたいな喋りかたが、好き (5時のサイレンが鳴り響き、意味を喪失した時を飾る 命なきガラクタの鋭き影が伸び、こゝろを穿つ 温もりの記憶が容赦なく孤独の正体を暴く あゝ、わたしは黄昏が嫌いだ!) なぜならセカイはとっくに滅亡して、生き残ったのはもうわたしだけなのだから 海が死に山が死に街が死に数すくない生存者もあなたも死に、夢の残骸と化したこのセカイで、息をしているのはもうわたしだけなのだから ハロー ハロー 幽霊が部屋の中にいるのではありません 部屋そのものが幽霊なのです 花束はまやかしですが青痣はほんものです こんな、さびしくてくるしくてせつなくてどうしようもない時は唄をうたいます ガレキの山のいただきで、あなたが教えてくれた唄を、天に届くように、惑星(ほし)を揺らすくらい、大きな声でうたいます すると、、、視界が潤んで魔法がかかり 幻(まぼろし)サーカス開演します 黒い帽子の司会者 すらすら口上を述べて 出番を待つピエロは1斗缶に腰かけていて 芸をする動物たちは青い悲哀を背負っています 宙吊りのブランコに ぶら下がり手をのばすのは わたし (さかしま ブランコ 風と 混ざる くるめき) 乱舞する光 観客席の懐かしい人々 とわたしを照らして (音を奏でる 光 浴みたら そこが まほろば) そんなことでまだ幸せを感じることができる そんなことでまた微笑むことができる だからわたしは元気です こわれて、すりへって、つぎはぎだらけでも、このセカイで生をまっとうするのです 自分で選んだ孤独と思えば、恨み嘆くのはおかどちがいでしょう? ま、今日の晩御飯もキウイなんだけど、さ ハロー ハロー ハロー ハロー バイバイ バイバイ バイバイ マタ ネ
終末メルヘン ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1178.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-03-12
コメント日時 2018-03-19
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
こんばんは、岩垣弥生さん。コメントさせていただきます。 メルヘンというのは、うまい言葉があるものだと思いました。童話的が逆にパワーとして メッセージをより強く打ち出せる感じだと思います。 部屋が幽霊である、というのは、終末観のことを考えればいいのでしょうか。 一週間の出来事が、面白いものばかりでいいと思います。 上手く整合性のある世界を書いておられるようですが、その世界の内容こそが、 受け取り方、つまり想像性こそが、本当に詩には大切ですね。 バイバイ マタ ネ という終わり方は、礼儀正しく愛情あふれて、とてもいいと思います。
0黒髪様 拙作を読んでいただいたばかりか、嬉しい感想ありがとうございます。 「部屋が幽霊」というのは終末観と捉えてもらって正解です。本当は「亡霊」の方が伝わりやすいのではないか、と思いましたが、少女の口から出る言葉としては「幽霊」の方がらしいかなと考え、決断しました。 実は9割がた完成した時点で、まだタイトルがついてなかったのですが、少女の空想から「メルヘン」という言葉を使いたいなぁと思ってこの形になりました。 (今までで1番タイトルに悩んだ作品でした) 1週間の出来事は「ふざけすぎだ」という批判を覚悟していたので、楽しんでいただけて良かったです。 本当に感謝の一言です。 ありがとうございました。
0地獄のような、あらゆるものが崩壊し尽くされてしまった世界で、なおも人は、生き続けなくてはならない、としたら・・・現実を笑い、うそぶき、生きていることじたいをフィクションだと思い込むほか、なくなってしまうのかもしれません。 リフレインの入れ方、おしゃべり口調で綴る部分と、幻想の中の映像を繰り出していく部分、呼びかけ(働きかけという行為はそこにあるけれど、相手先に伝わっているのかどうか、ここではわからない、そんな、意味があるようなないような、不思議な音声)を入れていく部分、など・・・構成にメリハリがあって、楽しく読むことが出来ました。 深刻に、リアルに、重量級のメタファーで埋めるようにしながら、この作品に描かれた情景を描き出した、としたら・・・あまりにも空虚で悲惨で耐えられないような、重苦しいものになったかもしれませんね。
0まりも様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 セカイは何故滅んだのか、現在どういう状態なのか、少女はあとどのくらい生きられるのか、などの設定はあったのですが、過酷な描写、レトリックで書いてしまうと重く息苦しくなり、少女の空想もただただ痛々しいものになってしまいます。 「空気のような空想」を楽しんでいただければと思い投稿したので、そのように読んでいただき嬉しいです。 色々な批判を想定していたので、投稿するのにとても勇気のいる作品でした。
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