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服喪
今、踏んだのは誰の骨 素足の土踏まずを押し返す感触が 滞った記憶を刺激する 角ばった先端は真新しい死 丸みを帯びた隆起は古びた死 いずれも平等に踏み越えて 葬列は立ち止まることがない 街が闇を纏うのは何のため 蝋燭の灯りはせいぜい手元にしか届かず 足下に転がる無数の骨片を 照らし出すことは難しい だからむしろ目を閉じて 皮膚感覚を信じるよりほかにないのだ 今、足裏に突き立ったのは誰を失う痛み 父母の、朋輩の、それとも貴方の 弔いは骨を拾うことで始まり 捨てることで終わる 幾千幾万のかかとに踏み砕かれた遺骨は いつか微細な砂になって 風に舞う日が来るだろう 未だ喪服を脱ぎかねている街に それは白く降り積もり 冷え切ったくるぶしを埋めるだろう 今、踏んだのは誰の骨 同胞の、愛し児の、それとも私の 堅く凝った塊は惜しまれた死 脆く崩れた残骸は悼むべき死 いずれも平等に踏み越えて 立ち止まらないものだけが 葬列を喪の明ける方角へ導ける 初出:「洪水」10号
服喪 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 914.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-03-11
コメント日時 2018-03-12
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
浜辺に 幾百年の時を経て 打ち寄せられた しろい かけらを 踏みながら 日のぬくみを受けて あたたかく 鋭く あしうらを刺し はなびらのように ほろほろと崩れていく 珊瑚たちの かけらを 踏みながら 今、わたしは「つつまれている」と そう、確かに 感じたのだった 沖から寄せて来る青い波の 縁取るように先取るように 無数の白い手がうねるように舞い 泡に砕けながら押し寄せて来る あそこで手招いているのは 千年前のわたし ここで手招いているのは 百年前のわたし わたしにつながるちちのははのあねのあにの 生きたあかし ちすじのひかり あふれかえる網の目の ほどかれてひといきに天空に投げられた 星をすなどる投網 束ねるひとは 海のむこうに輝いていて 指先にふるえる球をのせて やさしく 吹く こぼれおちるひかりの ふるえ 手招いている むすうの しろい ゆびさきの 泡となってくずれくだけ わたしに おしよせてくる つつみこむ あたたかい 痛みを踏む 海辺
0>まりもさん す、素敵な返詩をありがとうございます! 砕ける白い欠片を踏む足裏の感触、痛みと温みを残したまま、 あの荒涼とした街がこんなに優しげな浜辺に生まれ変わるとは。 思わず唸ってしまいました。 拙作のコメント欄の中に畳まれてしまっているなんて勿体ないと思います…。
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