ウィンター・ユース - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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ウィンター・ユース    

 冬の青空 解析度の高いスーパー裏の風景 僕はここでダウンしつつポットのホットコーヒーを飲んでいる ポケットは薬でいっぱい ぜんぶの薬を飲んでまっしろになってしまってもいいけど こんな青空にハレーションしてしまうのは出来過ぎている 白い指にできたアカギレの痛みに耐えている 僕は段々追い詰められて いい朝だ こんな朝は海面に激突したカモメのようになってしまう と思いつつ 転がっている野球ボールに信念を込めて ぎゅっと握ってみた 菜の花の季節まで生きていたい 葉の花の季節まで生きたらそれから先はそのとき考えよう 労働 休日の使い方まで管理されている 体が資本だから 企業側は探偵だって使って素行を調べる すべては妄想だ すべてはとおい峯雲の風景のきらきら 風景の残滓だ すべてが思い通りにならないことに諦めて 何かを成すために週六で時間をペイして 体は痛み 場所や地域に飽きて 食にも飽きて、それは贅沢なことに どこかにひょいといなくなりたくなる 草を抜いて遊んでいたら 煙草が最後の一本だ スマートフォンからはボブディランのシャドウキングダムが流れている 誰か 僕の名前を呼んでくれないかな 人は名前を呼ばれたとき 一つの幸福にあるんだ きみが早く買い物を終えてくれないかな きみが自由で羨ましいな 自由であるってことはいつか決断したんだろう 僕も物事を決断できる勇気が欲しい すべてが静止して、ぐだぐだしているのは僕だけだ ふうと煙を吐いて 腰の草を払った  男よ そんな悲観的になる必要はない 金で買えないものはぜんぶ持っている そう信じ込む 僕にはこの季節のうつくしさが分かる 右頬を差しだして報われないなら 左頬を差し向ければいいんだ 全くの感情平坦化 怒ることはほとんどない いい風が吹いている もう猫ごっこは終わり 腕の不自由になったきみの代わりに荷物を持ってやって 分け入った 分け入った 先にある自宅に帰る 小さなテーブルの上今日買った トマトとか 玉子とか チーズとか ウィンナーを並べて レシートをじっと見つめたあと 日常という狂いの中へまた帰ってゆく 僕は沢山の大切な言葉を読んできた 風呂に入っては反芻して唱えていた 風呂の窓の隙間から 夕陽が見えた ベランダに出て花火や流れ星を見たこともあった 去るべき場所できみの笑顔をいちばん多く見たかも知れない 毎晩 死ぬ練習としての睡眠をくりかえしながら すべてがカフェインにコントロールされていることを今更気づいた ワンネス 小さな悟りは別の悟りを連れてくる 最近まで僕は口で呼吸していた 呼吸は鼻でするものだって知らなかったんだ 座って考えないことも大切だけれど 立って考えることも、いいや立って動くことも もっと大切だ 体が油のようにドロリとしてしまうから    荷物を持って道祖神の前に着いたら缶チューハイを開けてそなえてやる 道祖神ってのはセクシャルな神様なんだよね 死と きみと 酒と 性と すべてが今宵の星空の下で同じ地平に佇むだろう やっぱり 今夜も僕は参ってしまっているだろう 荷物が重い 労働で酷使した体に痛むけれど 顔に出さない 僕ときみと 自動販売機の前 ラインナップを見ているけれど なぜそうしているのかわからない そして思うんだ なんとなく退屈だなって そして気晴らしの為に皮財布から180円を取り出して穴に投入する  


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作品データ

コメント数 : 3
P V 数 : 505.1
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 0

作成日時 2025-01-26
コメント日時 2025-02-01
項目全期間(2025/04/24現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
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叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合00
閲覧指数:505.1
2025/04/24 13時27分50秒現在
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    作品に書かれた推薦文

ウィンター・ユース コメントセクション

コメント数(3)
三明十種
作品へ
(2025-02-01)

(煙草止めてるのに)また煙草吸いたくなるよーな文章だねー吸わないけどねー労働!僕も大方そー思いますねー道祖神!僕も大方そー思いますねー

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秋乃 夕陽
秋乃 夕陽
三明十種さんへ
(2025-02-01)

日常のふとした情景、痛みや気付きがここに全部詰まっている。 それは共感され、反芻され、誰かの糧となる詩となると思います。

1
万太郎
万太郎
作品へ
(2025-02-04)

平たい内容です。平さをどこかで人は求めるのかも知れませんね。生活があって仕事がある。不安定な時代でも、健全に生きたいと願う人の心があれば大丈夫。そんな安心感を覚えさせてくれる文章です。

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投稿作品数: 1