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トランク
不定形な旅人が行先の在りかを探し出せずにいた 京成線上野行きの車窓からゆるやかに流れる漆黒の朝顔 乗客の顔はどれも虚無を描いている 下車したのは知っているようで知らない町 時の概念を失ったモノクロームの路地 それからそれへと砂地を踏む足取り 心底うんざりさせられるトランクを引き摺り立ち惑う ムグラを成す不安と焦り 行き交う通行人はまばら うつむき加減の顔に虚無を描いて歩く どことも知らぬ単線のレール上 一両編成の車両に揺られていることに旅人は気づく 時間と空間の狭間から 滔々と漆黒の朝顔が辺りを包んでいく 果てるところか、駅舎すら無い終着駅 仄明かり灯す街灯ひとつきり 引き返せない所迄来たのだと荒蕪の地が語る 旅人は途方に暮れながら 車両に見捨てた物を思い出す 忘恩、失望、暗愚の亡骸を詰めた くたびれたトランクをひとつ 旅人はそれでも身軽さに笑みをこぼす
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トランク ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 211.8
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-01-20
コメント日時 2025-01-21
項目 | 全期間(2025/01/23現在) |
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叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
詩全体が物語を呼び込むように読み手をいざないます。けれどこの詩自体が旅人の心情を現した姿でもあります。読み進めるうちにトランクの中身であったそれが、読み手を詩のうちがわからではなく、旅人自体の心情へと、すりかわることになり、まさに迷い込むような仕掛けがある。面白く読みました 詩のなかにあるムグラや荒蕪の地は、ビジュアル的にも読み手が思い浮かべることが容易であり、かつその場に旅人が立つその場としての、旅人の心を映し語るという役割があり、それらを汲み取れるかどうかでだいぶ、この詩の深さが変わるように思いました。これは勝手な解釈かもしれませんが上手いなと思いましたね。一票
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