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日常の隙間で
膝を抱える事も出来なくなったと気付いた時に、脳が一瞬止まった。 自分が老いの範疇に入ったと自覚して、変わらないつもりの人生を生きて来て無理矢理知らされる。 人間はいつか死ぬし、消えるし、忘れられるし、それでも幾分は残って現世に記憶と歴史の塵としてゆっくりと空気に溶けて行くのだろうが、私はそれすらも恐ろしくなる。 身体が固くなって、僅かにも関節が縮まって、巡り巡る情報の波の端っこすらも掴めなくなって、これがいつまで続くのだろうと贅沢な悩みを齧ったりする。 誰だって降り掛かる浅い不安に、私は一生の半ばでようやくその苦味が滲んでしまう。 幼いとされても現実逃避だと笑われても別段構わないが、どうか孤独にはしてくれまいか。 どんな命でも傍に入れば温かいのに、傲慢は私は沢山欲しがるのだ。 まだまだ老いていくのに、もっと失ってもっと既知になってもっと追い詰められていくのに。 深くなれば深くなる程に欲が増えていく。 肥えた身体を挟む猫二匹を命の手綱にしながら、こんな意味の無い言葉を何の下書きも無く綴って。 それは、存外心の救いになるのだ。 不思議な事に、万が一、この文字列を目にして心が動いてしまった人間がいるのならば。 貴方は心を確かに持っている凄い存在なのだと言う小さな利点を、忘れないで欲しい。
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日常の隙間で ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 337.1
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-01-19
コメント日時 2025-01-21
項目 | 全期間(2025/01/23現在) |
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叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
良い随筆。老いと欲と存在の価値。受容が成長なのか、人生は。
0瞬間、ある時に立ち止まり、周囲を見渡すと、次の瞬間。かつての子どもだった頃に、一生という言葉のおおきさを思い描いていた頃から、次に周囲を見渡せば、もう見える景色は変わっていて、戻らない時間を、人は常に、潜在的に、内包しているのかもしれません。 だから、次の瞬間に辺りを見回して、視界に映る風景は、もう今現在のなかに、再び次の瞬間が内包されている事に。今もまた、次の瞬間であることに気づかざるをえないのかもしれません。
0老齢になるほど深くなっていく精神、それにともなって増加していく欲、という着目点に、 美しい詩性を見ました。二匹の猫に見守られ、孤独を嘆く姿は、何となく、勇姿と呼びたい ような気がしました。より深い人間性を、探求されて欲しいと思いました。
0歳をとることは楽しいことばかりではない。 身体的には思うようにならないことが多くなり周りに当たり散らす自分にも不快心がある。 恐らくは最後の最後まで他人目線で生きてきた人間だけが勝つのだと思うのです。 他人にどれだけのものを与えることが出来るか? 自分が身体的苦痛に苛まれていたとしてもそれが第一に考えられる人は、幸せになれると思います。 末尾の二行に読者への思いやりと、私の考える他人目線があった気がします。
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