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わたし いのち
こと こと ことりと 窓辺に羽虫の死骸が落ちていた。 小さく醜く 溝に溜まった水に 張り付いていて もう二度と 空を飛ばない。 身体の中の臓物が 失はれたように 醜く小さく潰れていた。 夏の 午後の陽光から 隠れた 影の差す 冷やかな窓辺。 暖かな部屋から それを見ていた。 こと こと 琴の 弦が鋭く切れて跳ねていた。 その先端から、痛ましい 音が 辺りに響いた。 血を孕んでいたら それは 静寂な間に朱紅を噴き出して。 だが 琴は木片で、 中が空洞に 思えた。 金鎚で割って、中を覗くために 小さな木片と 大きな木片に 分かれて しまって。 こと こと 鼓動が 声が聞こえず 静かな夜だった 青白い月の微弱な拍動、 心拍数が 重なって それに合わせて 黒い夜が揺れている。 何か次の予感に 触れて それを 怖れるかのように 雲の隙間に 月が揺れていた。 か細く 折れそうな月。 こと こと 言葉を 紡いでいるのは 私でしかない。 旅立った 今はもう、 子供のように泣きはしない。 こと こと ケトルが鳴っている。 こと こと 誰かの気配がする。 こと こと 小鳥のように 歌うことができたら どんなにか 素敵だったろう。 しかし 私は それで 歌う。
わたし いのち ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 998.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-03-02
コメント日時 2018-03-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ありがとうございます。感謝申し上げます。
0歌うような調子が印象に残りますね。 ことこと・・・風が窓枠をゆらす音なのかもしれませんか、そこに何かの訪れを聞くところから、詩が動き始める。 ことこと・・・頭韻が導く、小鳥、琴、鼓動、言葉。 実際に目撃する、羽虫の死骸、想像の中で「目撃」する、弦の切れた琴。いずれも、空虚であることに視点が注がれています。 題名のストレートさや、(特に琴の連の)たどたどしさが、初心の印象を与えるのですが・・・一般常識では鼓動を持たないはずの月に、いのちのかすかな拍動を感じ、その拍動が闇を揺らしている、暗夜に(か細いながらも)影響を与えている、というところに、強い詩情を感じました。 命が失われた後の空虚さを、羽虫の死骸に実感する繊細さ。 そこから、想像の中で切れた弦が、一瞬血を吹くような生々しさで声をあげ、語り手になにかをうったえかける、その余韻。 闇に押し潰されないように、かすかに拍動を重ねる、細い月。 それがいのちなのだと伝えたい、そのことを言葉にしたい、という想いが綴られた作品のように思いました。
0>まりもさん コメントありがとうございます。「歌うような調子」ということでは、この詩ではどちらかと言えば直接的な表現に寄っていて、それと文章の区切れ方とが重なって、歌うような調子を感じさせているのかもしれず、また、ことことという音のリズムがその調子に関係している可能性もあるかと思いました。 そして、その「ことこと」という言葉に関しては、その空虚であり、かつ誰かの気配としても存在している音のイメージが、また「空虚であることに視点が注がれてい」るという内容部分で連関してこの文章自体を導いているのかもしれないと考えました。その音から頭韻として動いていくということで始めたこの詩の内容は、またその音によって「何かの訪れを聞く」という方向へも導かれていて、このように頭韻によって詩自体が導かれるという点に関しては振り返ると興味深い点であるように感じています。 ただ、こうした内容について「いのち」という点で詩情を感じて頂けたという点に関しては大変嬉しく感じましたが、「題名のストレートさや、(特に琴の連の)たどたどしさが、初心の印象を与える」という点に関してはご指摘を受け止めなければないだろうと感じています。題名が単純だから悪いとはもちろん一概にはいえないかもしれませんが、この内容に関しては折角このように言葉を費やして語っているものを、題名において一つの短い語句でまとめて終わらせてしまっているという点で批判されるべきものであるだろうと思いました。また詩作の際には内容的な側面にばかり集中していて、言葉の流れという点についてはあまり考えることが出来ていなかったように感じます。この2点については必ずしもまだ具体的な解決案やイメージを思いついているというわけではないのですが、次回以降も少しずつ取り上げながら考えていきたいと思います。 丁寧に読んで頂き、ありがとうございました。
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