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治療塔惑星
宇宙は、紺碧の中にそっと沈む ACの静かなブースター音が響く中 暗転する黄道にそれは聳えていた 火を焚きたくなるような 白く煤けた、治療塔 夜の果てへの旅 僕は心の中で 少し微笑みながら名付けた 石垣が連なる中 橙色に染まる空の反対側の 夜が始まっていく世界に 歩みを始めていたんだから 槍ヶ岳の頂上の朝はいつものように静かだった。まるでこれからの銃声すらも吸い取らんとでもいわんばかりに。 僕はただ二人がゆっくりと決闘の準備を整えていくのを見届けながら、冬の中で済んでいった青空を眺めていた。 ACのスピードを上げながら 僕はあの塔の頂上を画面の中に捉えた だけど僕はいったい何をなそうというのか これまでの何の償いを求めている? 境の向こう側をくぐっていけば 星がただ瞬くだけの空が広がっていた このまま歩いていこう 夜の果てに 君がいたときの日々 あの街燈の下 ギー兄さんとバタイユは互いに向けて銃を構える。僕はその光景を見て、ただ息を呑んだ。世界がだんだんと音を失くしていく。 最初に引き金を引いたのは、バタイユだった。 「何が文化か! アルバート! 銃をとれ!」 一発がギー兄さんの頬をかすめ、二発はアルプスの彼方に消えた。 それから、ギー兄さんの放った弾丸の音が山脈に響いた……が、三発とも全て空の彼方に消えていった。つまるところ、弾丸を用いた決闘においては誰も斃れなかったのだ。 「……卑怯者」 バタイユはそれだけ言うと、断崖の向こうへと走り出し、そして落下していく。それから人の転げ落ちるような音がしばらく続き、また静寂を世界が取り戻す。 そのときだよ? 君の存在を僕が思い出したのは。 だから夜の果てへの旅を始めたんだ。 塔の上に着陸したとき 僕はゆっくりと泣き出した 旅の終わりを迎えたのだということを ようやく知ったから この塔が夜の果てだ ACから降りると 煌々と灯る街燈の下に 昔日の君が立っていた 君のいなくなった日々の中で 確かに僕の何かがゆっくりと消えていった ゆっくりと消えて、そして忘れたんだ そして思い出した後は ただただ夜の果てへと 君の残り日のための 夜の果てへと向かっていった 僕が旅立つ前、ギー兄さんは自分たちの始めた教会の樹をそっと燃やした。
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治療塔惑星 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 187.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2025-01-08
コメント日時 2025-01-08
項目 | 全期間(2025/01/12現在) |
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叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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- 作品に書かれた推薦文