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電球の海
電球の中に海がある 夢を薄めたかそけき海が あなたは波打ち際に横たわっている あなたにきょうだいはいない いたかも知れぬが思い出せない 忘却の風が吹いて人生の幾ばくかをさらってしまったから それにもはやどうでもよかった 青空は仮面を脱いで病んだ素顔を晒していた 銀色の時はメッキがはがれて鈍色(にびいろ)に変わっていた 粒子状の海猫はケラケラ笑って飛び去った うつろの顎(あぎと)が開いてうつつを丸呑みにした かりぬいの名前を解(ほど)く妊娠の爪にささくれが視(み)えた 幻影(まぼろし)と化した引き波からまだ見ぬ恋人の甘い香(かざ)がした ( 孤独に磨かれた狂想 ナイフに映った朝(あした)の切っ先 分母のない感傷の2乗 ユレテ レテユ テユレ レユテ ユテレ テレユ ) 電球の中に海がある 嘘を溶かしたゆかしき海が あなたは波打ち際に立ち尽くしている あなたにりょうしんはいない
電球の海 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1122.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-02-27
コメント日時 2018-03-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
とてもいい詩なのに上がっていない。括弧がよく活きていてカッコいい。
0兄弟や、両親のことを忘却してしまうのは、アルツハイマーだろうか。私の親族にもいるので、なんとなく近い状況が理解できる。連が下るにつれて、進行していく忘却が括弧によって表現されていて、独特な感性でとても良かった。
0追伸 もしそちらがよろしければ、チャかシズムに寄稿しませんか。お返事お待ちしております。
0そうですね、全体にカステーラのような感じ。でもカタカナの部分が大変印象的でした。朗読に適する詩ではないでしょうか。
0kaz.様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 私の祖母は、孫を忘れ、娘を忘れ、夫を忘れ、自分の名前を忘れ、食べることを忘れ、話すことを忘れました。祖母の見舞いに行く車中で「阿呆になる病気ってな・・・」と祖父が呟いたのが印象に残っています。 この詩はアルツハイマーだけでなく、誰もが経験する「忘れる」という現象を題材にしました。私が書くとどうしても空想的になってしまうのですが。 括弧の最後「分母のない感傷の2乗」から「ユレテ」の3字の順列組み合わせは、記憶を失ってもせつなさは残るということを表現したかったのだと思います。 チャかシズムへの寄稿のお誘いありがとうございます。貴誌のレベルを落としてしまうのでは、と心配ですが、前向きに考えたいです。
0エイクピア様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 尾形亀之助に似ていると言われたことがあります。自分ではあまりピンとこないのですが。 音読することを意識して言葉を組み立てたので、「朗読に適するのでは」という評価は素直に嬉しいです。
0電球の中に海がある、という立ち上がりはとてもいいですね。 ただ、歌うように言い直す二行目で、「かそけき」という・・・装飾的な詩語に流れてしまうところが、もったいないような気もします。 最後のリフレインのところも、ゆかしき、というあまやかな詩情を醸し出すような詩語に流れてしまっている。 2どめのいい直しであり、軽めの強調であって、サンドイッチのように「甘さ」で中身(あなた、の見聞きし、感じているであろう世界の追体験)を挟んでいるのだ、という見方もできますが・・・ 二行目の装飾性を見直してみる、あるいは、二行目の冒頭に半かっこをおいて印象を「こだま」的なものに弱める、そんな工夫をしてみても良いかもしれないと思いました。
0仲程様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 そうですね。電球という屋内ならどこにでもありそうなものを意図的に使ったので、そういう感じかたをしていただいのかなと思います。(ありがたいことです) たしかにやさしくはないですね。 屈折しているので。
0まりも様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 たしかに「かそけき」「ゆかしき」は現代詩らしくないかもです。 最後、「ゆかしき海」として、横たわっているから「立ち尽くしている」に変えたのは、「恋人の甘い香(かざ)」を追いかけて入水することを暗示したかったのです。(入水を明確にするために言葉を費やすと主題があやふやになり、グダグダになると判断しました) 入水のニュアンスが伝わらないのなら、いっそあきらめて削ってしまい、ご指摘の2行目から「架空の海」とか「虚構の海」とか(「虚数の海」はちょっとやりすぎかな?あまりいいの浮かびませんが)などに変えてソリッドにした方が良いですね。指摘されてやっと気づきました。 推敲の余地のある状態で投稿しているので、こういう批評は非常にありがたい。 より良い詩を書けるようご指導いただければ幸いです。
0いかいか様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 言葉の配列でこのように作り変えることが出来るということでしょうか? 味わい深く面白かったです。
0こんにちは わたしも 兄弟がいないです。わたしの場合は居たんですが、いまは 居ないです。この詩が相手としている方と 同じだなあと 思いました。ですから、わたし自身の持っている喪失感のままに素直に、詩と対話させていただきました。自分の根幹を伴にした人の存在が あやふやなのは しんどいことです。 兄弟が居なくなるのは 運ですが、両親は 年上ですから ふつうに考えたら りょうしんって いなくなるもんです。 ところが 年を重ねると、おさなごのようになり、その居なくて当然の両親を さがすようになる。居ないものは居ないのですが、でも さがすようになる。私の親世代の人々も みな老人になってきたので、私にとっても ふしぎな思考の人々と なってきてます。 やさしみを持てるかどうかが、今の私の課題です。こんな私には、【かそけき海】とか、【銀】から【鈍色】への色調の変化とかが、 こころに 沁みました。 やさしい彩の ゆたかな和の言葉。そこが、私にとっては ここちよかったです。 いつくしみを感じました。裸電球の灯火みたいに ほの明るく 私の心をゆらしてくれる詩だと感じました。 どうやら 痴呆症と対峙されて感じたことを詩にしておられるようですね。痴呆症にとどまらず、わすれるということを描くことに成功しておられると 私は思います。良い詩を拝読できました。ありがとうございます。
0つけくわえです。入水することの暗示の件は、よく わかりませんでした。
0ありがとうございます。詳しいお話は、メールにて。 waxing.and.wanding@hotmail.co.jp まで連絡お願いします。
0るるりら様 拙作を読んでいただきありがとうございます。 私はやまとことば、古い言葉が好きです。なので「先端」と書かずに「切っ先」と表現します。(猫もねこまと書きたいほどです 笑) この作品にはたくさんの和の言葉が出てきます。それは恣意的なものなので、ここちよさ、いつくしみを感じていただけたというのは本当に嬉しいです。 「かそけき」「ゆかしき」はふさわしくないのでは、という評をもらい、たしかに甘いかなと思いましたが、感じ方は人それぞれで、正解はないのかもしれません。(詩作全体で言えば人の数だけ正解があるのかな?) 入水はアクションを描写しないと伝わらないと分かりました。 ただ、それは主題ではないし、言葉を費やすと散漫な印象になって、ラストの「あなたにりょうしんはいない」でスパッと終わる余韻が損なわれる気がします。 嬉しい感想ありがとうございました。 追伸 私には兄がひとりいるのですが、フランスに留学に行ったきり音信不通です。 日に日に兄のことを思うことがすくなくなり、それが「きょうだいはいない」という一文を書かせたのかもしれません。
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