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入道雲
噛み締めた口の中は塩味。 喉元が詰まって息ができない。 涙が出ないようにもっと歯を食いしばる。 食いしばるほどに喉に詰まった水が飛び出しそうになる。 波際で見た海はキラキラ輝いていて 火照った身体をすぐにでも放り込みたかった。 子どもの頃はどんな大人になりたかったっけ。 波際でうずくまる大人になりたかったっけ。 このまま海の水に流されて 誰も知らない海の向こう側へ。 海は広いな、大きいな。 荒波に呑まれて、うまく泳げない。 見上げた空は青くて澄み渡っていて。 今すぐにでも空に飛び立ちたくて。 大人になっても手を伸ばす勇気がなくて また波に呑まれて流されてゆく。 空の入道雲たちは何を思うだろう。 波に呑まれてもがく私を見て、どう思うかな 彼らはきっと海の全てを知っている。 出来損ないでは溺れてしまうことを知っている。 だから空に漂うこと選んだんだ。 勇気を振り絞って、宙を舞ったんだ。 たとえ海に忘れられたとしても、空から見る景色はきっと綺麗だろうから。 彼らは後悔しているのかな? 海でなお、もがく私を羨ましく思うのかな? 波際にうずくまって海を眺める。 さんさんと照る太陽が、背中を焦がす。 早く飛び込まないと。 早く太陽から逃げないと。 でも、火傷に海水が触れるたび 意識が飛びそうになる。 これじゃあ、もう泳げない。 みっともなくもがくこともできない。 荒波に溺れる者たちは、みんな背中に火傷を負っている。 一度は陸に上がり、再び海に飛び込んだ証。 彼らも待っているんだろう。 海に溶けて、そしていつか空に昇ることを。 空に漂う大きな入道雲になることを。 波際にうずくまってその時を待つ。 太陽がこの身を焦しきるその時を。 空の入道雲たちは、塵になる私を見てどう思うかな。 私は彼らのようにはなれないけれど、一緒に空を漂ってくれるかな。
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入道雲 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 565.2
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-10-15
コメント日時 2024-10-20
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
既視感に手を引かれるようにして読んだのですが、普通に上手くて、良い作品だと思いました。一見ナルシシズムに囚われてしまいそうな作風でありながら、展開の面白さによって、それが上手く回避されていると思います。どうでもいい話なのですが昔、海という作品を書いたことがあって、そういうところにも既視感は潜んでいると思いました。
0n,#既視感 を感ずる。
0要約すれば、子供目線からみた大きな人間、はやく大人に成りたいわたし。あの立ち上がる入道雲のように~ってことでしょう。 お弟子さんが既視感を感じる。と評されているのは私も同じで、身体的な動きばかり追い続けて見た印象を思考的に抽象化して流している。なので印象としての余韻は少ない。入道雲。もう少し生活体験からの具体的な描写でもあればな、と思ってしまう。
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