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手渡せなかった手紙と、送れなかった手紙と
序. 幼い自分の雰囲気をよく理解していて、誰に対してもへりくだるような女(ひと)だった。誰とでも仲良くする器用さは持ち合わせてなくて、頻繁にそのきらびやかな愛想笑いを距離を保つために振り撒いていた。玄関口で靴を仕舞う折の研ぎ澄まされたように孤独な横顔を、忘れることができない。 まさか彼女は僕が彼女に、1つの理想の生き方を見ては崇めていることなど知らなかっただろうと思うと、なんだか不思議だ。職場を去って半年になる今、哀しいかな、彼女の中で僕という存在は消えかかっているだろう。しかし僕の中で彼女という存在は、孤独を感じている今さらに大きくなっている。燃え揺らめく、焔のごとく。 言い忘れてたけれど、生きてきた38年近くの中でも彼女は飛び抜けて可愛いかった。あの鳥肌が立ってしまうような、健気で澄んだ美のトーン。転居した、遥か遠いこの街の空に、探って。彼女のようにありたいから、僕は詩を書き続けているのかもしれない。 ☆ 1. 君と夜空を見上げたりするのは、それは素敵なことだとは思う。でも叶うことなら、僕は君とモスで一緒にハンバーガーを食べたいんだ。 サイゼでもドトールでもなくモスってところ、君は分かってくれるかな?ちなみにマクドじゃなくモスなのは、モスのがだいぶ落ち着いてると思うから。じゃあなんでレストランや喫茶じゃなくてモスなのかというと、それはモスがあくまでファストフードのお店だからなんだ。 ファストフード店って、どうしてだか分かんないけど、なんだか気分を上げてくれるところ、あると思わないかい?アゲアゲ、みたいなさ(笑)サイゼもドトールも、やっぱりちょっと落ち着きすぎてる。 僕は君とざっくばらんに語り合いたいんだ。いつもどこか物憂げで儚げで、そんな雰囲気を纏ってる君だからこそ、その亜麻色の瞳が溌剌と煌めくところを想うだけでもう、この胸は悦びと、そして誇らしさで一杯になる。だってそれは、奥ゆかしい君という女(ひと)を快活にさせる力が、この僕にあるという証明になるから(笑) 重い話でゴメンなんだけど、君を見てるとなんだか泣きたくなることがある。誰にでも愛想良くしてるけれど、そのじつ、本当に友達と呼べる人は誰一人いないってこと、僕は知ってるんだ。 それなのにいつも君はなにか、大切な何かを胸にしかと秘めたような眼差しで、澄みながらも深みのあるような眼差しで、そうして作業をしているよね。そんな気高さだとか、自分をしっかり持ってる感じだとかに、僕は猛烈に惹かれてる。でもときどき思うんだー本当はちょっぴり、無理してるんじゃないの?ってさ… なんてね。ゴメン、つい自分の世界に入り込んじゃった(汗)でもそれこそ、不満の1つや2つあるだろうしさ、ほんとう今度、是非一緒にモスに行こう!そうしてこの世界のやなこと全部、空の果てまで笑い飛ばしてしまおうぜ! あっ、もちろん、君の素敵な趣味の話も大歓迎だよ。未来の大詩人さん☆♪ ☆ 2. アラサーなのにあどけなかった君は、でも性格はしっかりしていたから、結局のところ本質的にはあどけなくもなんともなく、ただこちら側がその声色に、少女の幻想を被せていただけなのかもしれない。 そこら辺の大人より、むしろ逆に澄ましているようだった君。冷たいとまでは言わないけれど、最低限の愛想しか振りまいてくれなかったのは辛かったな。でもそれだからこそ逆に、僕の君への幻想は膨らんでいったのかもしれない。 そんな君の声色がいつもよりちょっと親しげだったりしようものなら、その夜はもう大変だ。能面のような君の顔は天真爛漫な少女のそれのようになり、幼く未熟な話を君は矢継ぎ早に話し始める。話し方は利発で明朗で、繊細ですらある。でもやはり根本の内容の部分でそれは決定的に幼くて。 そんな君は僕に同意を求めてくる。潤んだ瞳で子犬のように見上げながら。僕は「大丈夫」と言うだけ。「大丈夫、大丈夫だから」と。でもその言葉をこそ求めてた君は、愛らしい華奢な腕を絡めてきて、やはり潤んだ瞳で見上げながら言うのだー「ありがとね」 君から離れ(彼女は前の職場で同僚だった)、酔いから覚めつつある今は、現実のどこにもいない女性とイチャついて何が楽しかったんだろうと、不思議にすら思う。だけど胸の中ふとした折に、君に見つめられると気づけば僕は、そこからデレデレになっていく想像ーもとい、妄想ーを、相も変わらず始めてしまっている。 あまりにも妄想を繰り返し続けてきたせいでもう、君の視線を浮かべるなり自動的にデレデレが始まるようになってしまっているのだ…と、そうシステマティックに考えることで、なんとか"君"の圏内から脱出しようと奮闘しているところさ(苦笑) 最後に一言伝えたいのだけど、僕は何気にクールな君も大好きだった。本当の話なんだ。信じるか否かは、もちろん君の自由だけれど。 水鏡のように澄んだ君が、ほんとうの君が、なんだかいまつとに懐かしくて、愛おしいんだ。
手渡せなかった手紙と、送れなかった手紙と ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 495.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2024-09-01
コメント日時 2024-09-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
2.の、"(彼女は前の職場で同僚だった)"は不要でした(汗)急いで投稿しすぎました…お恥ずかしい(苦笑)
0この作品は**上位10%**に位置すると評価します。 ### **評価と分析** **1. 詩の構造と技法** この作品は、**恋愛の感情と内面の葛藤を描いたエッセイ風の詩**です。序章から始まり、2つのセクションで構成されており、それぞれが異なるトーンと視点で語られています。 - **序章の効果**:序章は、語り手が女性に対して感じている強い感情と、その女性の存在が彼にとってどれほど特別であるかを示しています。これは詩全体の基調を設定し、読者に対して語り手の内面を理解させる効果を持っています。 - **日常的な会話のトーン**:1つ目のセクションでは、語り手が女性と一緒にファストフード店でのんびりと話したいという願望を語る、カジュアルで会話的なトーンが使われています。これにより、詩は親しみやすく、読者が共感しやすい雰囲気を持っています。 - **幻想と現実の交錯**:2つ目のセクションでは、語り手の妄想が現実と混ざり合い、彼の内面の葛藤と執着がより明確に描かれています。語り手が女性に対して持つ幻想が徐々に現実と分離し、彼の心の混乱と切実な感情を浮き彫りにしています。 **2. 詩のテーマと意味内容** この作品のテーマは、**恋愛の幻想と現実の狭間で揺れる感情**です。語り手は、女性に対して強い執着心を抱いており、その感情が彼の日常生活や内面の世界にどのように影響を与えているかを描いています。 - **恋愛と理想化**:語り手は女性に対して理想的なイメージを抱き、そのイメージを自分の現実からの逃避として使っているように見えます。彼女の「孤独な横顔」や「澄みながらも深みのある眼差し」といった描写は、彼女の存在が彼の精神的な理想を象徴していることを示しています。 - **内面の葛藤と幻想の描写**:2つ目のセクションでは、語り手の妄想が現実と交錯し、彼の感情の混乱が描かれています。彼は彼女に対する感情を抑えようとしつつも、その感情に引きずられてしまうという矛盾を感じています。この葛藤が、詩全体の緊張感を生み出しています。 - **孤独と自己反省**:語り手は、自分が「現実のどこにもいない女性」との幻想に浸っていることを理解しながらも、その幻想から抜け出すことができないでいます。彼の孤独と自己反省が、詩の中で繰り返し強調されています。 **3. 言葉の選び方と表現** 詩の言葉遣いは、**内省的で繊細**です。特に語り手の内面の声を直接的に表現することで、読者に深い感情的な共鳴を与えることができます。 - **繊細で個人的な語り**:詩の中で使用される語彙は、語り手の感情を直接的に表現するために選ばれています。「僕の君への幻想は膨らんでいった」や「愛らしい華奢な腕を絡めてきて」など、感情が込められた描写が多く、読者に語り手の感情を伝える効果があります。 - **視覚的で情緒的な描写**:「玄関口で靴を仕舞う折の研ぎ澄まされたように孤独な横顔」や「水鏡のように澄んだ君が」などの表現は、視覚的で情緒的なイメージを読者に提供し、詩全体に深みを与えています。 - **親しみやすい言葉遣い**:詩の語り口調はカジュアルでありながらも、深い感情が込められています。これは、語り手の率直な感情と内省的な思考をバランスよく表現するための効果的な手法です。 **4. 改善点** - **語り手の自己反省の深堀り**:詩の中で語り手は自分の感情について深く考えているが、もう少し具体的な反省や内面的な対話があると、さらに読者に共感されやすくなるかもしれません。 - **女性のキャラクターの掘り下げ**:詩の中で語り手が女性に対して抱いている幻想やイメージは描かれていますが、女性自身の性格や感情の描写がやや足りないかもしれません。彼女の視点や感情も加えることで、詩全体のバランスが取れるでしょう。 **5. 詩の意図と解釈** この詩は、**内面的な葛藤と未解決の感情を抱える語り手の心の旅**を描いた作品です。読者に対して、恋愛における幻想と現実の相克について深く考える機会を提供しています。詩の中で、語り手は自分の感情を正直に表現し、自己の葛藤と向き合っています。 ### **結論** この作品は、恋愛の幻想と現実の間で揺れる感情を繊細に描いた、印象的な詩です。語り手の内省的な声とその感情の描写が、詩全体に強い感情的なインパクトを与えています。語り手の感情の深堀りと、女性のキャラクターの掘り下げによって、さらに深みのある作品になる可能性がありますが、現状でも上位10%に位置する優れた作品と評価されます。
1命短し恋せよおとめ、じゃないですが、 人を誠実に愛すると生き甲斐があるものですよね。
1そう言っていただき、うれしいです☆ おちょくっているような、小馬鹿にしてさえいるようなところもあり、不快感もたれる方もいるかと思うのですが、ちょっぴり軽薄な(?)、そんな気持ちをも含めて女(ひと)と向き合うーそんな気持ちを手紙調にしたものです。おどけたトーンのさなかに(こそ)浮かび上がる、誠実さ。感じ取っていただき、幸いです☆♪
1今朝じっくり読み直していたら、1と2が矛盾していることに、遅ればせながら気づきました(汗) "誰にでも愛想よくしてるけれど"と"最低限の愛想しか振り撒いてくれなかったのは辛かったな"は、明らかに矛盾している(笑) 実際のところは、男性には最低限の愛想しか振り撒かず、多くの女性には愛想が良い女(ひと)で、もしかしたらそんな感じなのかな?と補完しつつお読みくださった方は、それなりの統一感を抱いてくださったかと思うのですが、もしわけがわからないと言われても、文句は言えないなあと。 「それなりに」と書きましたが、もともと「詩人たちの小部屋」に投稿していた3つの小品を、繋げれるんじゃ!?と1つにしたもので、ほとんどその閃きに酔うままに投稿してしまっただけあり、統一感という意味では一段も二段も落ちる作品になってしまった気がします。 でもテーマや情感は、それこそ終生のテーマにしたいくらい好きなので、似たようなものにまた挑戦したいと思っています☆♪
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