●コップに入れた吉田くんを●空気が乾燥した日に●風通しのよい部屋に二日のあいだ放置しておくと●蒸発して半分になっていた●これは●吉田くんが●常温でも空気中に蒸発する性質があるからである●コップを冷やすと●空気中の吉田くんたちが●コップの外側に凝集する●ビーカーに入れて熱すると●水に溶けていた吉田くんが小さな泡となって出てくる●水を沸騰させると●吉田くんたちが激しく出てくる●常温では液体の吉田くんは●-60℃で固体の吉田くんとなり●120℃で気体の吉田くんとなる●暑い日に●地面に吉田くんをまくと●吉田くんが蒸発して涼しくなる●これを打ち吉田くんという●運動すると体温が上がり●皮膚から吉田くんが噴き出てきて体温が下がる●激しく運動すると●皮膚から吉田くんたちがたくさん噴き出てくる●日知庵で飲んでいると●手元近くにあった●おしぼり置きの横を●吉田くんが走る姿が目に入った●ぼくは●おしぼりをそっと持ち上げて●思い切り振り下ろした●カウンターにぎゅっと押し付けたあと●おしぼりを開くと●手足がバラバラになって顔と身体もつぶれた吉田くんがいた●吉田くんが仕事中に脱皮して●部長にひどく叱られた●吉田くんと竹内くんを比べると●吉田くんより竹内くんの方が温まりやすい●したがって●夜になって涼しくなると●竹内くんが吉田くんのところにやってくる●これが●竹内くんが吉田くんのところに夜になるとやってくる理由である●生きている吉田くんを投げて●上向きに倒れるか●うつ伏せに倒れるか●その確率は2分の1ずつである●いま●吉田くんを5回投げるとき●吉田くんが3回うつ伏せに倒れる確率を求めなさい●ただし●打ち所が悪くて●途中で吉田くんが死ぬ場合は考えない●数学の時間にふと窓の外を見ると●吉田くんたちの群れが移動しているところだった●同じ大きさで同じ服装をした同じ顔の吉田くんたちが手をつなぎながら歩いていた●吉田くんたちの群れは無限につづいているように見えた●窓に垂直に差し込んでくる太陽光線が目にまぶしかった●吉田くんは身長173センチ●体重81キロの中学3年生の男子である●いま●横15メートル●縦30メートル●深さ2メートルのプールに●吉田くんをぎっしり詰めるとしたら●いったい何人の吉田くんを詰めることができるか●計算して求めよ●ただし●小数第二位以下を切り捨てよ●吉田くんを買う●吉田くんを捨てる●吉田くんを考える●吉田くんで考える●吉田くんを整える●吉田くんをつくる●吉田くんを壊す●吉田くんを拾う●吉田くんを2倍に引き延ばす●吉田くんを5等分する●知ってる吉田くんを想像する●知らない吉田くんを想像する●吉田くんを取り除く●吉田くんを洗う●吉田くんを加熱する●竹内さんが●きのう学校の帰りに●吉田くんを埋めたと言う●あそこを掘ったら●吉田くんがいるわよ●じゃあ●いま教室にいる吉田くんはニセモノなのかい●竹内さんは自分の顔をわたしの顔に近づけて言った●ホンモノでもニセモノでもいいのよ●毎日●埋めてやってるのよ●吉田くんが生まれた瞬間から●吉田くんが71歳の誕生日に病院で息を引き取るまで撮影した録画がある●その録画を連続再生しているときに●ランダムに静止させるとすると●吉田くんが小学校六年生の6月3日に●学校の帰り道で●うんこを垂れた場面が●画面に映る確率を求めよ●吉田くんは手のひらの幅が8センチ●足の大きさが27センチの中学3年生の男子である●いま●横15メートル●縦30メートル●深さ2メートルのプールに吉田くんの手足をぎっしり詰めるとしたら●いったい何人分の吉田くんの手足を詰めることができるか●計算して求めよ●小数第二位以下を切り捨てよ●吉田くんと竹内くんとでは●どちらがはやく蒸発しますか●口をあけている吉田くんと●口をあけていない吉田くんとでは●どちらの方がはやく蒸発しますか●空気中の吉田くんが集まって上昇して塊となったものを何と呼びますか●地面近くの吉田くんが冷やされて固まったものが竹内くんです●地面近くの空気が冷やされて塊となって空中に浮いたものが吉田くんです●一人の吉田くんのあいだに吉田くんを入れることできないが●二人の吉田くんのあいだに一人の吉田くんを入れると三人の吉田くんになる●三人の吉田くんのあいだに二人の吉田くんを入れると五人の吉田くんになる●五人の吉田くんのあいだに四人の吉田くんを入れると九人の吉田くんになる●111110人の吉田くんになるのは●何人の吉田くんのあいだに何人の吉田くんを入れたときか求めよ●吉田くんはつぎの日に竹内くんと山田くんになる確率が●それぞれ2分の1です●竹内くんになった吉田くんは●竹内くんのままでは山田くんになれませんが●吉田くんに戻ると山田くんになれます●吉田くんから竹内くんになった吉田くんが吉田くんに戻る確率と竹内くんのままでいる確率は●それぞれ2分の1ずつです●ところで●いったん吉田くんが山田くんになった吉田くんが●吉田くんに戻る確率と竹内くんになる確率と山田くんのままでいる確率は●それぞれ3分の1ずつです●いま●吉田くんである吉田くんが●10日後に佐藤くんである確率を求めなさい●初夏になると●吉田くんは●気温が高まった昼ごろに開きますが●気温が低くなる夕方になると閉じてしまいます●初夏になると●吉田くんは一本の蔓の手でほかの木に巻きついてずんずん背を伸ばしていきます●夏の終わりごろになると●らせん状になった吉田くんが●スプリングのようにピョンピョン道を跳ねていく姿が見られます●吉田くんは、子どものときは竹内くんを食べますが●成人すると山田くんを食べます●吉田くんは全体としては吉田くんなのだけれど●部分的には竹内くんであったり山田くんであったりする●吉田くんは部分的には鉄であったり水であったり空気であったりするのだけれど●ときには全体が鉄になったり水になったり空気になったりもする●吉田くんを50センチメートル以上150センチメートル以下の距離から見ると竹内くんに見えますが●50センチメートル以内で見ると山田くんに見えます●150センチメートルを超える距離から吉田くんを見ると吉田くんの姿は見えません●吉田くんは5回脱皮して竹内くんに変わり●その後●さなぎを破って出てくると●山田くんになります●吉田くんに竹内くん注射をすると●その竹内くんの半分が吉田くんになりますが●残りの半分の量の竹内くんは竹内くんのままです●いま純粋な吉田くんに3パーセントの竹内くん注射をするとき●50パーセント以上竹内くんになるには●何回●竹内くん注射をしなければなりませんか●1秒間に1人の吉田くんを吸い込むことのできる掃除機がある●いま天井に1000人以上の吉田くんがぎっしり詰まっている●すべての吉田くんを掃除機が吸い込んでしまうまでに何秒かかるか計算せよ●ただし●掃除機の性能は1秒ごとに2パーセントずつ劣化するものとする●いま吉田くん濃度が10パーセントの女の子たち35人と●吉田くん濃度が25パーセントの男の子が20人います●全員を合わせて一人の吉田くんにすると●吉田くんの男の子濃度は何パーセントですか●計算して求めなさい●夏になると●よく吉田くんたちにたかっている竹内くんたちの姿を目にします●竹内くんたちは●道に落ちてる干からびかけた吉田くんたちや●木にぶら下がって腐りかけた吉田くんたちにむらがっています●竹内くんって呼ぶと●いっせいに竹内くんたちが驚いて飛んでいきます●吉田くんの影には空気が入っていて●踏むと胸がきゅんとなる●吉田くんの空気には題名があって●その題名を指でなぞると●ペケ●ペケペケペケ●どんな形の吉田くんも吉田くんである●ひし形の吉田くんも吉田くんである●円柱の吉田くんも吉田くんである●正十二面体の一つの面の吉田くんも吉田くんである●正四面体の頂点の一つの吉田くんも吉田くんである●進化途中の吉田くん●まだ両生類なんや●ぎゃははは●それ●おもろいわ●吉田くんを竹内くんに翻訳して●その竹内くんの翻訳を山田くんに翻訳すると●吉田くんになってるのって●どうよ●目がすわってる●すわってないし●まっすぐ帰ったやろか●そんなわけないやん●やっぱり●行くんちゃうの●行ってるな●ぼったくられるんちゃう●知らんわ●ううん●両生類の吉田くんが気になる●なんで●吉田くんなん●おれの名前にしてや●あかん●ぼくの同級生や●もうなんべんも死んでるけど●ぼくの詩に出てくる常連さんや●ピンク●ドイツ語のアルファベット●ぼくはゲーやな●エフのつぎ●ハーのまえや●いっひりーべでぃっひやな●なんじゃ●そりゃ●好きっちゅうことや●吉田くんカメラ●だれを撮っても吉田くんしか写らないカメラ●吉田くん絵具●なにをどう書いても吉田くんになってしまう絵具●吉田くん書店●吉田くんについて書かれた本しか売っていない書店●吉田くん消しゴム●ノートに書かれた吉田くんだけが消える消しゴム●ほかの字や絵は●いっさい消えない●夏前に畑に植えた吉田くんは秋口にもなると十分に育っているので収穫する頃合いだった●畑に出て●畑に突っ立ている吉田くんたちを大鎌でつぎつぎと刈って言った●突然の吉田くんたちだった●吉田くんたちがフロントガラスにへばりつく●目を見開いて●フロントガラスいっぱいにへばりつく吉田くんたち●ワイパーのスイッチを入れると●ワイパーの腕が吉田くんたちを●つぎつぎとはたき落としていった●大漁だった●網にかかったたくさんの吉田くんたち●吉田くんたちの群れがここらへんにいると言ってたキャプテンの感はあたっていた●チューイング吉田くん●吉田くんをくちゃくちゃ噛む●吉田くんは起きると●鳴っている目覚まし時計に手を伸ばした●腕がはずれた●肩につけ直すと仕事に出た●外に出ると●たくさんの腕や足が道に転がったままだった●みんな●くっつけ直す時間がなかったのだろう●地下鉄では●いくつもの手が吊革にぶら下がっていた●吉田くんの顔の上流では赤い色が硬い●黄緑色の虐殺●水に溶けない吉田くん●治癒のチュッ●薔薇の木の滑り台●言葉の強度の実験●白い赤●白くて黄色い赤●白くて黄色くて青い赤●白くて黄色くて青くて緑色の赤●硬くてやわらかい●やわらかくて硬い●硬くてやわらかくて硬い●チュ●平行で垂直な吉田くん●電車に乗ると●席があいてたので●吉田くんの膝のうえに腰かけた●吉田くんの膝は●いつものように●やわらかくてあたたかかった●電車がとまった●親子連れが乗り込んできた●小さな男の子が吉田くんの手をにぎった●このあたりの地層では●吉田くんがいちばんよい状態で発見されます●あ●そこ●褶曲しているところ●そこです●ちょうど●何人もの吉田くんが腕を曲げて●いい状態ですね●では●もうすこし移動してみましょう●そこにも吉田くんがいっぱい発見できると思いますよ●玄関で靴を履きかけていたわたしに妻が声をかけた●あなた●忘れ物よ●妻の手には●きれいに折りたたまれた吉田くんがいた●わたしは●吉田くんを鞄のなかにいれて家を出た●歩き出すと●吉田くんが鞄から頭を出そうとしたので●ぎゅっと奥に押し込んだ●きみ●どこの吉田くんなの●また●いやなこと訊かれちまったな●ぼく●吉田くん持ってないんだ●えっ●いまどき●吉田くん持ってないヤツなんているのか●あーあ●ぼくにも吉田くんがいたらなあ●いつでも吉田くんできるのに●はじめの吉田くんが頬に落ちると●つぎつぎと吉田くんが空から落ちてきた●手で吉田くんをはらうと●ビルの入口に走り込んだ●地面のうえに落ちるまえに車にはねられたり●屋根のうえで身体をバウンドさせたりする吉田くんもいる●はやく落ちるのやめてほしいなあ●ゲーゲー●吉田くんが吐き出した●食べ過ぎだよ●吉田くんが吐き出した消化途中の佐藤くんや山田さんの身体が●床のうえにべちゃっとへばりついた●吉田くんを加熱すると膨張します●強く加熱すると炭になり●はげしく加熱すると灰になります●蒸発皿のうえで1週間くらい置いておくと●蒸発していなくなります●吉田くんは細胞分裂で増えます●うえのほうの吉田くんほど新しいので●すこし触れるだけで●ぺらぺら吉田くんがはがれます●粘り気はありません●あちちっ●吉田くんを中心に太陽が回っています●あちちっ●吉田くんは真っ黒焦げです●さいしょの吉田くんが到着してしばらくすると●つぎの吉田くんが到着した●そうして●つぎつぎと大勢の吉田くんが到着した●いまから相が不安定になる●時間だ●たくさんの吉田くんがぐにゃんぐにゃんになって流れはじめた●この竹輪は●無数の吉田くんのひとりである●空気●温度●水のうち●ひとつでも条件が合わなければ●この竹輪は吉田くんには戻れない●まあ●戻れなくてもいいんだけどね●二酸化吉田くん●水につけて戻した吉田くんを●こちらに連れてきてください●ずるずると●吉田くんが引きずられてきた●ぼくは●どこにもできない●本調子ではない吉田くんの手がふるえている●ぼくは●どこにもできない●絵画的な偶然だ●絵画的な偶然が打ち寄せてきた●きょうのように寒い夜は●吉田くんが結露する●はい●と言うと●吉田くんが●吉田くん1と吉田くん2に分かれる●吉田くんは●ふつうは水に溶けない●はげしく撹拌すると●一部が水に溶ける●吉田くんを直列つなぎにするときと●並列つなぎにするときでは●吉田くんの体温が異なる●理想吉田くん●吉田くんの瞳がキラキラ輝いていた●貼りつけられた選挙ポスターは●やましさにあふれていた●精子状態の吉田くん●吉田くんを●そっとしずかに世界のうえに置く●タイムサービス●いまから30分間だけ●3割引きの吉田くん●丸くなった吉田くんを●削り器でガリガリガリガリッ●ほら●出して●注意された生徒が●手渡された紙っきれのうえに●吉田くんを吐き出した●もう何度も授業中に吉田くんを噛んじゃいけないって言ってるでしょ●端っこの席の生徒が●手のなかの吉田くんを机のなかに隠した●重くなる●吉田くんの足が床にめりこんだ●もっと重くなる●吉田くんがひざまずいた●もっと●もっと重くなる●吉田くんの身体が床のうえにへばりついた●もっと●もっと●もっと重くなる●吉田くんの身体が床のうえにべちゃっとつぶれた●さまざまなこと思い出す吉田くん●さまざまな吉田くんが思い出すさまざまなことを思い出す吉田くん●あしたから緑の吉田くん●右●左●斜め●横●縦●横●横●きのうまでオレンジ色の吉田くん●右●左●斜め●横●縦●横●横●吉田くんの秘密●秘密の吉田くん●ソバージュ状態の吉田くん●焼きソバ状態の吉田くん●さいしょに吉田くんが送られてきたときに●変だなとは思わなかったのですか●ええ●べつに変だとは思いませんでした●机のうえに重ねられた何人もの吉田くんを見て●刑事がため息をついた●いててっ●足の裏に突き刺さった吉田くん●春になると●吉田くんがとれる●とれたての吉田くんをラップしてチンして温める●散らかした吉田くんを片づける●窓枠のさんにくっついた吉田くんを拭き取る●テレビを見ながら晩ご飯を食べていた吉田くんは●突然●お箸を置いて●テーブルの縁をつかむと●ぶるぶるとふた震えしたあと●動かなくなった●見ていると●身体の表面全体が透明なプラスチックに包まれたような感じになった●しばらくすると●吉田くんは脱皮しはじめた●ことしも吉田くんは●ぼくの家にきて●卵を産みつけて帰って行った●吉田くんは●ぼくの部屋で●テーブルの上にのってズボンとパンツをおろすと●しゃがんで●卵を1個1個●ゆっくりと産み落としていった●テーブルの上に落ちた卵は●例年どおり●ことごとく吉田くんに育った●背の高い吉田くんと●背の高い吉田くんを交配させて●よりいっそう背の高い吉田くんをつくりだしていった●体重の軽い吉田くんと体重の軽い吉田くんを交配させていったら●しまいに体重がゼロの吉田くんができちゃった●きょう●学校から帰ると●吉田くんが玄関のところで倒れてぐったりしていた●玄関を出たところにあった吉田くんの巣を見上げた●きっと●巣からあやまって落ちたんだな●そう思って●吉田くんを抱え上げて●巣に戻してあげた●きょう●学校からの帰り道●坂の途中の竹藪のほうから悲鳴が聞こえたので●足をとめて●竹藪のほうに近づいて見てみたら●吉田くんが足をバタバタさせて●一匹の蛇に飲み込まれていくところだった●吉田くんの調理方法●吉田くんは筋肉質なので●といっても適度に脂肪はついてて●おいしくいただけるのですけれども●さらに肉を軟らかくするために●調理の前に●肉がやわらかくなるまで十分●木づちで叩いておきましょう●27人の吉田くんと54人の田中君と108人の森田さんがいます●吉田くんの濃度を求めなさい●吉田くん界●吉田くんがはたらく場●空間のこと●吉田くんの予知した出来事が一定の確率のもとで現実になる空間●吉田くんの密度が高いと●その値が上昇する●永久吉田くん●霊的状態が高いときにだけ吉田くんになる霊的吉田くんと違って●いついかなるときにでも●吉田くんのままである●ふつう●吉田くんでない者が吉田くんになるには●霊的状態が吉田くんである必要がある●特殊的吉田くんと●一般的吉田くんがいる●どちらも気むずかしいが●どちらかといえば●特殊的吉田くんのほうが理解しやすく●扱いやすい●ただし●時間と場合と出来事による●吉田くんに山田くんをくっつけようとすると●吸いつくようにくっつこうとするが●吉田くんに西村さんをくっつけようとすると●反発するように斥け合おうとする●中村くんに吉田くんをこすりつづけると●やがて中村くんも吉田くんになる●吉田くんをこすりつづけると●煙が出てきて●ぽっと火がついて●脱糞する●吉田くんのおもしろみが濃くなると●吉田くんの顔が笑いながら増えていく●吉田くんのおもしろみが薄くなると●吉田くんの顔がしょぼくれながら減っていく●壁一面の吉田くん●空一面の吉田くん●地面一面の吉田くん●コップ一個の吉田くん●丼一杯の吉田くん●サラダボール一杯の吉田くん●一枚の吉田くん●一刷毛の吉田くん●一粒の吉田くん●一振りの吉田くん●一滴の吉田くん●一個半の吉田くん●一羽の吉田くん●一本の吉田くん●一束の吉田くん●一抹の吉田くん●一様の吉田くん●一々の吉田くん●吉田くん●って呼んだら●仔犬のように走ってきて●両手をすこし開いて受けたら皮がジュルンッて剥けて●カパッて口をあけたら●吉田くんが口いっぱいに入ってきて●めっちゃ●おいしかったわ●吉田くんの刑罰史●という本を読んだ●おおむかしから●人間は吉田くんにひどいことをしてきたんやなって思った●生きたまま皮を剥いたり●刃物で切り刻んだり●火あぶりにしたり●シロップにつけて窒息させたり●ふううん●本を置いて●スーパーで買ってきた吉田くんに手を伸ばした●ここには狂った吉田くんがいるのです●医師がそう言って●机のうえのフルーツ籠のなかを指差した●腕を組んで●なにやらむつかしそうな顔をした●哲学を勉強してる大学院生の友だちが●ぼくに言った●吉田くんだけが吉田くんやあらへんで●ぼくも友だちの真似をして●腕を組んで言うたった●そやな●吉田くんだけが吉田くんやあらへんな●ぼくらは●長いこと●にらめっこしてた●夏休みの宿題に●吉田くんの解剖をした●吉田くんって言うたら●あかんで●恋人が●ぼくの耳元でささやいた●わかってるっちゅうねん●吉田くんって言うたらあかんで●恋人の耳元で●ぼくはささやいた●わかってるっちゅうねん●吉田くんって言うたら●あかんで●そう耳元でささやき合って興奮するふたりであった●あんた●あっちの吉田くん●こっちの吉田くんと●つぎつぎ手を出すのは勝手やけど●わたしら家族に迷惑だけはかけんといてな●そう言って妻は二回に上がって行った●なんでバレたんやろ●わいには●さっぱりわからんわ●お父さん●あなたの吉田くんを●ぼくにください●ぼくはそう言って●畳に額をこすりつけんばかりに頭を下げた●いや●うちの吉田くんは●あんたには上げられへん●加藤茶みたいなおもろい顔した親父がテーブルの上に胡坐をかいて坐っている吉田くんを自分のほうに引き寄せた●わだば吉田くんになる●っちゅうて●吉田くんになった吉田くんがいた●さいしょに吉田くんがいた●吉田くんは吉田くんであった●吉田くんの父は吉田くんであった●吉田くんの父の吉田くんの父も吉田くんであった●吉田くんの父の吉田くんの父の吉田くんも吉田くんであった●吉田くんの父の吉田くんの父の吉田くんの父の吉田くんも吉田くんであった●すべての吉田くんの父は吉田くんであった●違う吉田くん●同じ吉田くん●違う吉田くんのなかにも同じ吉田くんの部分があって●同じ吉田くんのなかにも違う部分がある●違う吉田くん●同じ吉田くん●同じ吉田くんの違う吉田くん●違う吉田くんの同じ吉田くん●違う吉田くんの同じ吉田くんの違う吉田くん●同じ吉田くんの違う吉田くんの同じ吉田くん●違う吉田くんの同じ吉田くんの違う吉田くんの同じ吉田くんは●同じ吉田くんの違う吉田くんの同じ吉田くんの違う吉田くんと違う吉田くんか●いまだに●ぼくは吉田くんが横にいないと眠れないのです●吉田くんの見える場所で●もし●突然●窓をあけて●吉田くんが入ってきたら●昼の吉田くんは●ぼくの吉田くん●夜の吉田くんも●ぼくの吉田くん●吉田くんの味のきゅうり●きゅうりの味の吉田くん●蛇は吉田くんのように地面をニョロニョロ這いすすむ●つぎの方程式を解け●(2×吉田くん-山田くん)(吉田くん+山田くん)=0●吉田くんは底面の半径がひとりの竹内くんで●高さがふたりの竹内くんである●山田くんは●半径がひとりの竹内くんである●吉田くんの体積および表面積は●山田くんの体積および表面積の何倍あるか計算せよ●教室に900人の吉田くんがいる●つねに一秒ごとに10人の吉田くんが出現するのだが●10分後に●1秒間に15人ずつ吉田くんが消滅するとき●さいしょの900人の吉田くんが全員消滅するのは●さいしょの時間から何秒後か計算せよ●吉田くん=山田くん+竹内くんであり●かつ●2人の吉田くん+3人の山田くん=7人の竹内くんであるとき●吉田くんと●山田くんは●それぞれ何人の竹内くんか求めなさい●吉田くん=山田くん×山田くん-4人の山田くん+3人の竹内くんであるとき●横軸に山田くん●縦軸に吉田くんをとって●山田くん吉田くん平面に●ふたりの関係をグラフにして示しなさい●尾も白い犬●地名℃●翼と糞が似ていることにはじめて気がついたー●ワッチョーネーム●マッチョよねー●マッチよねー●ズルむけ赤チンコ!
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 707.6
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 0
作成日時 2024-07-02
コメント日時 2024-07-03
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
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音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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閲覧指数:707.6
2024/11/21 23時24分05秒現在
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以前に投稿したものを投稿しちゃった。
0(´▽`*)
0僕は田中宏輔氏の「The Wasteless land.lllを持っているが、この●印が置かれた先生の形式詩は画面で一度に見たほうが心地よく合う気はする。何故ならば●不規則に置かれた素数の拡がり●宇宙空間とのつながりを感じるからである。
0お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0わらわら湧き出てきていろんなものに変化する吉田くん。 その上、竹内くん、山田くんまで出てきて、無限大にカオスな様態となる。 ただ、置き換えただけでこんなにも味のある文章となるのは発見だと思いました。
0お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
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