別枠表示
たとえばこんな朝の来ない街をみおろす悲しみの夜の果てに
その夜は山に登った。 みおろすと日の出のまだの夜の街に、 穏やかで幸せな眠りが訪れており、 すこしでも起きているそこここには、 ポツンポツンと電灯が灯っていた。 あのあたりに家族が眠り友だちかが眠り、 僕はすこし寒い山腹に立っていた。 ホモサピエンスがこの街を征服したのに、 街なかにひとは満ちたり群れたりせず、 恋愛とか家族にすがる家なかで眠る。 偶にバベルの塔みたいな建物の屋上が灯り、 動いている光はトラックのヘッドライトか、 巨大な蛇のジィーッと光るまなこなのか。 人口の三分の一が餓死した歴史を持つ世界、 その後立ち直ったなれの果てがこの街だと、 飢餓を克服した文明と進歩の時代を嘲笑う、 その巨大な蛇のまなこなのだろうか。 僕にはなにも関係なく流れてゆく時間だ。 そんな時間が過ぎてゆき、 この街の夜も明ける時間が近づいた。 そこに最悪の悲しみがある訳ではなく、 毎夜路上に転がっていた悲しみがあるだけ。 なにも特別で無い動き出した街のなかへ、 飲み込まれてゆきにゆくみんなも僕も。 不思議なことはなにも無い。 僕はなにをしに来たのかと、 僕はなにをして来たのかと、 指先が震えるほど巨大な問いを問う。 どこにゆけばよいのかわからない朝が、 きっともうすぐやって来る。 そのまえに、 スマホでこの街の夜景を撮ろう。 きっとこの目でみているほどの、 美しさはもちろん写らないことは、 残念ながら知ってはいるのだけれども。
たとえばこんな朝の来ない街をみおろす悲しみの夜の果てに ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 467.0
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2024-06-02
コメント日時 2024-06-08
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
哀しみにくれて感傷を抱いた男は優しくなれる。それはかけがえのない能力です。
0軽く調べると蛇は、他の爬虫類よりかは視力は劣っているそうですね。ただこの詩だと、世界を見透かすほどの力を持っている。歴史というとぐろを巻いた、時代を俯瞰する蛇なのかもしれない。 目を閉じれば「幸せな眠り」を享受できるこの街で、「僕」は日の出前に山から街を見下ろしている。蛇の視力を得られないまま、朝を迎えてしまう。最後、スマホという文明の利器に頼るのは情けなくもあるが、我々にはそれしか手段が無いのかもしれない。いや、そもそもなぜ、その夜景を撮る必要があったのか。世界が俯瞰され切られる現代に、その光景に誰も辿り着けない美があったのか、震えた指先で撮られた、ぼやけた視界にあえて逃げるという抵抗か。 感性を守る、息のつまる日々がこれからも続きそうだなと感じました。
0時間が止まっているような空間の中、話し手が目を凝らして思考を巡らせ何かを探し求めている感じがしました。夜の静止した感じがとてもよく表現されていると思いました。
0有難うございます。 蛇は、むかし蛇年の蠍座生まれのひとって、「蛇蝎の生まれです」って自己紹介できるなぁ、と気づいて以来の好き、です。あるいは、「蛇蝎のひとです」
0