春雷が轟く中で、
一際高い朽ち木に稲妻が落ちて燃え上がりし。
さうして世代は更新され行くのだらうが、
一度火の付いた朽ち木は最早炭になるまで燃え上がるなり。
雷雲が垂れ込めて一際冥い世界を
燃え上がりし朽ち木が闡明するや。
稲妻が轟音を立てて、
天空を翔るときと時を同じくして
それは正に燃える時間と言っていい事象で、
雷に打たれ燃え上がる朽ち木が
ちっとも此の世に未練などなく
潔く燃え行く姿は神神しささへ湛へ、
時間が燃え行くとは
沈黙の中で消ゆることではなく
闇を照らし、それ故一時の激烈な事象に苦悶しながらも
涼しい顔をして燃え尽き行くその様を
此の世に曝すことに違ひなし。
燃える朽ち木は何をも語らずとも
朽ち木が言はんとすることは伝播するなり。
――是非に及ばず。
すると焔が事象の顔貌となりてか、
時間が姿を現すや。
黒黒としたその姿は
漆黒の闇を纏った
焔の芯として屹立してゐる。
時間と時間が鬩ぎ合ってゐるのか、
至る所でバチバチと音を立て
時空を切り裂く。
大粒の雨粒が燃える時間に降り注ぐ度にじゅっと音を立て
焔の勢ひは増すばかりなり。
最早其処には
生きることに意味があるのか、などといった愚問は焼尽し、
あるのは燃える時間のみ。
存在に意味を見出す愚行は最早微塵もなく
燃え上がると言ふ事象のみを曝す朽ち木の
悍ましいまでの立ち姿が漆黒の闇を纏って
焔の芯にあるのみなり。
やがて斃れるであらうが、
それまでは燃える朽ち木は燃える時間と化して
此の世を闡明する。
その生命の最期の焔のみが此の世を照らしめては
存在の荒荒しさのみを曝す。
漆黒の闇を纏った燃える時間は
見るものを高揚させはするが、
然し乍ら、其処に哀しみは全くなく、
況してや此の世への未練も全くなしや。
死は潔いものであることを燃える時間が圧倒的な迫力で見せる。
生くる事の意味を問ふ馬鹿らしさに倦み疲れたものは
既に燃える時間に焼かれてゐるに違ひなし。
さうして森羅万象は生を閉ぢては、再び目覚めし時を待つ。
残るはその灰燼ばかりなりしや。
燃え残った時間は
熾火の如く再び死に行くものへと取り憑いて
憤怒の焔を燃え上がらせるのだ。
作品データ
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作成日時 2024-05-02
コメント日時 2024-05-02
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時21分14秒現在
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>憤怒の焔を燃え上がらせるのだ ラスト一文。想像するに炎=憤怒なのだろうか。私にはそこまで書き連ねたことに対してつながりが見えない。ことば的に難しく書かれているのが読み取りを妨げるとも言えるし、その分想像を振ることも可能だと思うが。私は憤怒というよりどこまでも無常を感じるばかりですね
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