不毛な冬をすごして
勝手に虚しさに溺れた
ねえ、泣かないでいてよ
水面、揺れた次におもっていた
次に笑っていて次に、
ゆるされていた
だから
とても、きれいで、痛かった
殺人めいたその手のひらのたどり着く場所が
1秒未満の、しゃくりあげる声だから
無価値に感じて生きていたある不毛な冬を、
越すことがもし、叶っていたとして
その先で
中身が零れていただろうな
ねえ、行かないでいてよ
水面、揺れる次をおもっていた
次に笑っていて次に、
ゆるされていたかったと
フィクションの世界で生きる僕は
海に浸かったシャツの裾が
息継ぎの前に涙を零したことを知らなくて
生きる僕だけが知っていたから
何も言わなかったんだろうな
傷つけたかったわけじゃない
救われないでいてくれるならそれで
生きたまま腐敗していくから、それまで
辛抱してと抱いた肩は冷たいままだった
ねえ、怒らないでいてよ
水面下、うねることより前に
響いていて、そのずっと前に
声をあげていた
僕の死を言い訳にして
自分を
苦しめて慰めて許されようと
そうすることが
死因に直結するある種の愛情であったから
笑っていてと願い続けてしまう行為は
だから
とても、無邪気で、残酷だった
髪をつまんで回転させて
少し目を伏せた春が
頬に口付けを落とす瞬間が
どうにも
待ち遠しかった
不毛な冬が終わる前に
ゆるされていたい
いま声が響けば
水面は弧をかくはずなので
揺れる視界は
太陽光すらもまげるから
幻想的だったんだろ
淡いときめき?
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