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詩国お遍路(1/2)
【詩国TOKUSHIMA阿波発心道1-23】 1.霊山 醒めない瞳で、空の光を摘まんで剥がし 口に含めば、綿菓子よりも早く景色に溶ける我が身 冷や水を掛けると避役の様に姿を現し 目を回しながら、長い舌を伸ばす 2.極楽 田舎道を車輪の付いた湯船で何処に行く 此処には在らぬ遠い処へと走る、それは迷走で のぼせながら昇る、極めた者だけが辿り着く楽園 3.金泉 底が透き通って見える綺麗な泉 水鏡の私を引きずり出すと、金になるんだどさ 噂を聞いた社長の集団が泉に向かったが ずぶ濡れのそっくりな別人がやって来るだけだった 4.大日 見下ろす幾つかは、名前を授け招き入れようとする 昔、放たれた炎を連れ戻すとまるで蜘蛛の子みたいに散り散りに 煙草の先を灯してもらった後、歩きながらラーメン屋へと向かう 5.地蔵 待ち人は、この気持ちが変わらぬ様に自らに呪いを掛ける 心を固め、次に身体を固める事でこの地に留まる その時が来るまで、目を閉じ、合掌する 6.安楽 逆立ちをしている彼は今日、逝かねばならぬ 馬鹿になって、大馬鹿の代わりに射られるのだ 同時に大馬鹿が近々、誰かの代わりになる日が来る意味でもある こうやって繰り返す、身代わりの最果てには誰が居るのだろう 7.十楽 蛇口から捻り出される水の立国 ご機嫌に喉を鳴らす、私は笑みが零れ顔を無くす 欲の酷道を通り、色濃くなり 仄暗い口へとまた安らかに眠る 8.熊谷 人里から降りて来た熊は 私に落し物を届けに来たそうだ 帰り道、熊は寄り道をして賑やかな列に並んだ その晩、私のお家では食卓にお肉が並んだ 9.法輪 盗んだ私は世を駆けたが、必ず先は持ち主が待っていた この世は生と円に支配されているので、逃げられないそうだ 警察に逮捕された車内で、私は死に逃げるが輪廻が待っていた この世に連れ戻されて私は泣いた 10.切幡 あの娘は私達と同じ様に、感情があり考えて動くが もう死んでしまっているのだそうだ 機織りを鼻歌混じりに行う後ろ姿は、それを聞いてから 何処か悲しい気持ちにさせる小さな背中になった 11.藤井 老婆が土を掘る、そろそろ帰るのだそうだ 私は地べたに座り、開脚をしてみせたが もうそこには帰れないと言われた 12.焼山 その日の夜、彼の言う通り大きな灯りが揺れていた 下山してくる百鬼夜行を見た野次馬が、ひひんと悲鳴を上げる 彼は火中で胸を焦がしていた 13.大日 枕に詰め込まれた蕎麦の殻が 寝返りを打つ度に鳴る 夜に虫達は一斉に月光を目指す 私の心を同時に、黒い海へ持ち上げる 14.常楽 周りには蝶々を身に着けた人が沢山いて その多くは足に着け飛んでいた 私には皆の様に蝶々がいないと泣いているあの子に 体の中に飼っている蝶々の事を教えてあげた 15.国分 誰が決めたのだろう、境界線が幾つも敷かれている 今、私の目の前に広がる風景は 先が見えても行き止まりだそうだ 私はこの線がこれ以上、敷かれない様にと 16.観音 あなたを見下ろす、大きな母の顔は優しいが 影がその表情を恐ろしく見せるから 夜中にあなたは悪夢に魘されて 音の無い時間に運ばれる 17.井戸 覗きこんだ底に写る私の顔はハッキリとしていた だけど、知り合いは顔がぼやけて見えたそうだ そう遠くない未来、その人は病気で亡くなった 私は生前、その人の老後の顔が確かに浮かばなかった 18.恩山 お世話になった親を背負い 私は山頂へ裸足のまま目指す 親は置き去れと言うが 私は最期まで居ようと思う 19.立江 人殺しの女が建物に逃げ込もうとするが 神が髪でそうはさせまいと 扉に複雑に絡め身動きを抑えた 毟っている途中、村人達に槍で刺され息絶えた 20.鶴林 ある林の中から「けーん」と鳴き声が聞こえる 誰かが「これは、鶴の声だ」と言う そこの主は「声だけの生き物だ」と言う 21.太龍 暗く湿度の多い洞窟の奥へ進むと 絞られた光が穴から幾つか入り込む空間に 太く大きな龍が蜷局を巻いて眠っていた 身体には苔が生えており、私は逆鱗を盗む為に触れる 22.平等 巨大な天秤が目の前にあり 人や物が関係なく乗せられ、様々な題の元 平等にされていく、命を題に男と蠅は 寿命を分ける事になり、男は狂ったように泣いた 23.薬王 あなたが落とした不幸の銀貨を 知らない子供が拾った それはどんどん、持ち主を変えて行き 最後にあなたの元に辿り着く 【詩国KOUCHI土佐修行道24-39】 24.最御崎 止まっていたとしても死に進むこの身は 動かさなければ勿体無いのだと 操られた様な人達が居る 犠牲にした分、確かな一つを得る為に 25.津照 荒れた海を航海する者達が 「眩しい女が、こちらに舵を切れ」と 海面に立って訴えていたと語る 26.金剛頂 金剛が至る所に住んでいる筋肉の町で あの子にお守りで柔軟剤を渡す 柔は剛を制す、これを悪い金剛に掛ければ 萎んだ風船の様に自力では動けなくなるのだ 27.神峯 鋭い峯に胡坐を掻いている神様が住んでおり とある登山家に「何故、お前は山を登るのだ」と尋ねる 暫く立ち止まり考え、彼は答えた 「胸に灯された物を吹き消す為に」と 28.大日 金魚鉢に沈んでいる硝子細工の青い石 粘度の高い外の空気に触れて こっそり含んでいた水を嘔吐する 29.国分 草が手となり足首を掴む 体勢を崩し転ぶと、外はもう夕暮れ 大きく伸びた影が家に吸い込まれていく 30.善楽 酒の入った湯船に浸かると 知らぬ間に眠ってしまっていたようだ 窓の小さな四角から逃げていく湯煙と 入り込む線路を走る電車の音 31.竹林 彼女が眠るのは何処だろう 兎に叱られてしまったのだ 今夜から二十年目の満月まで しっかりと育てないといけないのに 32.禅師峰 悟りを目指す過激派は 竹刀で叩かれず、刀で斬られる 雑念な人を間引いて導く野蛮な奴等 33.雪蹊 寒くなって来た、雪に紛れて飛ぶ 雪ん子の綿を集めていると 足先から水になっていく 34.種間 荒野に撒かれた種は いつの日か来る雨を待ち眠る 私達は顔を覗かせる日を願う 彼女は空に召し上がられる 35.清滝 答えが出るまで撃たれなければならない その滝に興味本位で入った青年は 生まれ落ちた理由を問いに出された 青年は滝壺に身を投げる事になった 36.青龍 子供だった龍が、川釣りをしていると帰って来た 当時は緑だった鱗も、大人になると青になるらしい 私は彼の背中に乗り、川を割りながら駆ける 飛沫で生まれる虹の輪を潜りながら 37.岩本 天井に張り詰められた絵画を見上げる 私はその中の彼女に恋をした しかし彼女はまだこの世に生まれ落ちず 私は空を見上げる事しか出来なかった 38.金剛福 釈迦の音楽祭、金剛の鳴らす太鼓に 仏様達は南無の姿勢で頭を激しく振る 迷い込んだ私達は、陰に隠れ怯えていた 39.延光 暗い所で待ちくたびれたでしょう でも、もう心配しなくても良い 延びて行く光へ歩いていけば大丈夫 あなたを導く為の光だもの
詩国お遍路(1/2) ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1178.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2018-01-16
コメント日時 2018-01-22
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
最初は全篇がかなり自由に着想された作品ではないかと思いましたが、ふと思い立って小題の一つ一つを寺の名として検索してみると、ときどき、各々の寺について伝えられている物語がある場合には、作者がさらなる改変や誇張を加えているらしいことがわかりました(わかりやすいのは井戸寺、立江寺、一宮寺のはなし)。とくに誇張されているところでは、ユーモアが発揮されていることもあれば、本来救いがあった話が全くむごいものに変えられていることもあり、その差を見ているとこの作者のいたずらごころが感じ取れてくるようです。それにしても、私は四国の霊所のいわれを生まれて初めて検索したのではないか。いずれにせよ、形式や文体も含めて、工夫の凝らされた労作だと思いました。
0仲程さん ネガティブな時に書いてるので、恐らく私は攻撃的な方だと思うんです。 だからむしろ、私が仲程さんの詩を読んで歩み寄った感じかも知れません。 この先も荒んでる物を書くこともありますが、こういう気持ちも合って書いてると覚えて頂けたら嬉しいです。 原口さん 本当は自由に書いていたんですけど、それじゃ何時もと変わらないと思い、意味を込めるにはと考えた結果、極力は言い伝えをベースに書く事を選びました。 言い伝えが壊れないように、または壊すならどうするか考えながら書いてみました。 また詩を書くことに改めて向き合う必要がある時、何か別の縛りで書いてみたいと思います。ご感想ありがとうございます。
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